120年ぶりの「民法改正」と商売と仕事の「補償・保証・保障」
東京・横浜・千葉など、
今年最後の桜。
日光に照らされて美しい。
この木は満開。
しかし強風に、見事、散った。
今年もありがとう。
そんな心持ちだ。
夕方、新横浜から、
東海道新幹線。
小田原の手前から、
夕陽に照らされた富士。
そして三島のあたりで、
また富士の頂が現れる。
左から夕日が白い富士を染めていく。
やはり全体像がいい。
もっと離れて、見る。
平野との間に、かすかに雲がある。
再び頂上付近。
言葉がない。
ただ、無心で眺める。
富士川を過ぎると、
富士の山ともお別れ。
今日もありがとう。
さて、民法が変わる。
120年ぶりの抜本改正。
現行法は1896年(明治29年)の制定。
その後、ほとんど変更されてこなかった。
民法の第1編は総則、
第2編が物権法、
第3編が債権法。
第4編が親族法、
第5編が相続法。
1・2・3編を財産法または契約法と呼び、
4・5編は家族法または身分法と呼ばれる。
つまり日本の民法は大きく、
財産法と家族法に、
分かれている。
今回の改正はこの財産法の中の、
第3編の債権法。
お金のやり取りを伴う契約のルールを、
抜本的に見直す改正法案が、
衆議院法務委員会で可決された。
消費者保護を重視しており、
今国会で成立する見通し。
債権法はこれまでずっと、
契約で問題などが生じた際に、
裁判所が示した裁判例が、
「事実上のルール」となって、
運用されてきた。
しかし、インターネット取引なども、
飛躍的に拡大されて、
消費者保護を求める声が高まった。
そこで法務大臣の諮問機関が、
2013年2月26日に、
「民法改正に関する中間試案」を決定した。
「法制審議会」という。
そして13年の4月16日から6月17日まで、
パブリックコメントの手続きを実施した。
その後、一昨年の2015年、
「改正案の要綱案」が答申され、
改正案は通常国会に提出され、
継続審議になっていた。
それが今国会で成立する。
約200項目が見直され、
公布から3年以内に施行される。
この改正案は、
消費者保護を重視している。
生活に直結する点も多いし、
商売や経営にも関連してくる。
朝日新聞が比較的丁寧だ。
例えば、お金の支払いを
請求できる時効の期間。
「請求権があると知ったときから5年」
「知らなかったときは、
請求できるようになってから10年」
これまではばらばらだった。
飲食料のつけ払いや宿泊料は1年、
弁護士の報酬は2年、
医師の診療報酬は3年、
個人同士のお金の貸し借りは10年.
それが5年に統一される。
「法定利率」は、現行の年5%から、
年3%に引き下げられる。
さらに市場の金利に合わせて、
3年ごとに見直す変動制になる。
法定利率は、利息について、
当事者同士の取り決めがないときに、
適用される利率だ。
消費者が商品を買った後に、
欠陥が見つかった場合の補償。
これまでは、売り手に対して、
二つの方法しかなかった。
①契約解除を求めるか
②損害の賠償を求めるか
しかし改正法では、
修理や交換の負担も請求できる。
つまり改正案は、
買い手の選択肢を、
広げている。
もちろん商売上は、
法定以上の補償を、
顧客に対して約束しておくことがいい。
私の主張する、
ダブルギャランティだ。
改正民法はその方向に決められる。
「連帯保証人」の規定も変更される。
中小企業が借り入れをするときに、
役員ら以外で連帯保証人になる人は、
公証人と会って、
保証の意思を確認してもらう。
詳しい事情を知らないままに、
多額の借金を負ってしまうケースを、
防ぐためだ。
保険やネット通販の「約款」は、
現行法に規定がなかった。
有効とされる条件、
売り手が変更できる条件が、
条文に明記される。
消費者が著しく不利益になる項目、
さらに無断変更は無効となる。
賃貸住宅の敷金に関しても改正される。
借家を明け渡したあと、原則として、
借り手に返還されると明記された。
年月の経過で生じた自然な劣化は、
貸主側が負担して修繕する規定も新設。
認知症などで判断能力がない状態で、
結ばれた契約は無効とする項目も新設。
消費者問題の専門家も、
消費者の利益になると評価している。
ただし、改正内容の周知徹底は必須だ。
小売業、卸売業、製造業も、
サービス業も、
民法改正に関連する項目は、
徹底しておきたい。
同時に、この改正を機に、
一歩進んだ補償制度を、
考えるべきだろう。
私は補償、保証、保障と、
三つのことばを使い分ける。
補償は「償うこと」
「損害補償」「災害補償」「遺族補償」など、
損失や損害を補い償うことだ。
保証は「責任」をもって、
「請け負うこと」
「身元保証」「品質保証」「保証期間」、
「債務保証」「連帯保証」などなど。
そして保障は、
「保護し防御すること」
「社会保障」「安全保障」「人権保障」など。
保護して損害を与えないこと。
その体制をつくること。
例えば商売上は、
品質やサービスを補償するのは、
当たり前だ。
今回の改正民法でも、
様々な規定が定められ、
厳しくなった。
しかし品質やサービスを、
責任をもって請負い、
それを保護し、防御する。
つまり保証し、保障する。
民法改正を機に、
補償と保証・保障の体制を、
改めたい。
顧客のために、
消費者のために。
店のために、
会社のために。
〈結城義晴〉