軽井沢で考察した「アマゾン一強の可能性」への反論
夏の熱湯甲子園が終わって、
やっと暑い夏が戻って来た。
いや、やってきた。
しかし神奈川県横須賀市の小学生は、
もう明日が始業式。
ところが横浜市は、
来週月曜日の28日から、
新学期が始まる。
商人舎編集スタッフの鈴木綾子。
横須賀在住で、
子どもたちの宿題のことを話題にする。
今日は横浜も暑い。
その暑い中を、浦和から、
二宮護さんがやって来てくれた。
私の大学時代の後輩で、
最も信頼する人間。
そして昔のバンド仲間。
誕生日も実は1年違いで、
まったく同じ9月2日生まれ。
大学を卒業してから、
日本実業出版(株)に入社し、
月刊「オールセールス」の編集をした。
その後、単行本やムックの編集長を歴任、
現在はフリーの編集者。
仕事を選びつつ、
本当に良いものをつくっている。
商人舎も来年2月で創立10周年。
腕利きの二宮さんに力を貸してもらって、
10周年記念の仕事をする。
ご期待いただきたい。
私は夕方16時32分の、
東京発はくたか571号で軽井沢へ。
申し訳ないようだが、
夏の終わりの休養を兼ねた、
ゴルフ。
軽井沢プリンスホテル。
コテージ。
そしてディナー。
夜の湖畔。
さて、日経新聞と特約のFT。
フィナンシャルタイムズ。
その21日の社説。
いつも刺激的な論点。
「アマゾン一強の可能性」
いきなり、すごいことを書く。
「アマゾンは従来の小売業の全てを
駆逐するだろう。
これは技術的、経済的な必然だ」
あ~あ。
「オンラインショッピングが
実店舗での買物に勝るものとなる中、
アマゾンはオンラインでは
規模が全てであることを
真っ先に認識した
――デジタル世界では
従来の「規模の経済」が
強力なネットワーク効果に
補完されるということを」
そして、さらに強みは、
「極めて低い資本コスト」
記者の印象。
一方、アマゾンの競合企業は、
まだこの点を認めようとはしない。
その筆頭はアルディ。
ドイツのハードディスカウンター。
先週、米国で、
「インスタカートとの提携」を発表。
インスタカートは、
ウーバーとエアビー&ビーの
両者のビジネスモデルを
食品宅配に応用したシリコンバレー企業。
「店舗から家庭への食品配達に
個人の車を手配している」
アルディの抵抗は無駄なのか。
「小売業の歴史は、
時代の波を先導する会社が
支配的な地位を確立する中で、
新しい業態が従来の業態から
成長と利益を吸い取る物語だ」
とても古いけれど、
マクネア教授の法則。
「百貨店という業態が米シアーズを、
世界最大の小売業者にした」
シアーズは、
ディスカウントデパートメントストア。
これは欧米の常識。
次に、
「大規模小売店という業態は、
米ウォルマートを
小売業の世界最大手にした」
さらに、
「ネット通販はアマゾンを
王者にしようとしているようだ」
そこで記者の判断。
「重要なのは、
支配的地位にある会社の
市場シェアを
誇張しないことだ」
そのとおり。
アマゾンは、
米国のeコマース小売市場の
約2割を握る。
しかしそのeコマースは、
「まだ米国の小売りの
約1割を占めるにすぎない」
「小資本のウーバー型ビジネスモデルが
低コストの配達につながり、
アルディはアマゾンより
優位に立てるのか」
つまりアルディ+インスタカートが、
アマゾンより勝るのか。
「そうなる理由は見いだしにくい」
理由の第1。
「アマゾンは、その気になれば
いつでも同じビジネスモデルを
採り入れることができる」
理由の第2。
そのモデルが、
どの分野でも意味を成すかは
全く定かでない」
「当のウーバーでさえ、
巨額の赤字を出している」
創業者トラビス・カラニックは更迭され、
ゼネラルエレクトリックを退任した、
前CEOジェフ・イメルトが、
次のトップ候補に挙がっている。
「歴史は、
小売業での支配は限定的で、
それも10年か20年しか
続かないことを示唆している」
この点には私、異論がある。
Wal-Martはすでに1990年から、
今日まで27年間、支配的だ。
「アマゾンのビジネスモデルは、
その常識を変えるかもしれない」
一強はという状況は、
どんなときにも考えにくい。
マーケットリーダーと、
マーケットチャレンジャー。
それらによる「複占」。
小売業に限らず、
ビジネス世界の鉄則だ。
そしてこれは、
マーケットシェアの視点からの見方だ。
いま、マインドシェアの世界観が、
コンテスト型競争時代を切り開く。
そしてこのマインドシェアの代表企業が、
ホールフーズマーケットである。
そのホールフーズを、
アマゾンが手中に収めたことが、
アマゾンをどう変えるか。
その意味でならば、アマゾンが、
マクネアの小売の輪論を、
超えるかもしれないと見ることはできる。
〈結城義晴〉