[日曜漫歩]天才藤井聡太の快勝譜
神は1日目に、昼と夜をつくった。
2日目には、天をつくった。
3日目に海と地をつくり、植物を茂らせた。
4日目には太陽と月と星をつくった。
5日目には魚と鳥をつくった。
6日目には動物をつくり、
自分に似せて男と女を創造した。
そして7日目に神は、休んだ。
それが日曜日。
そして日曜日といえば、
将棋NHK杯トーナメント。
9月最初の日曜漫歩は、テレビ漫歩。
藤井聡太四段が2回戦第5局で戦う。
だから超異例の生放送。
相手は、森内俊之九段。
森内は第18代永世名人の資格を持つ。
羽生善治と同じ年で、
子どもの頃から羽生のライバル。
46歳。
中学3年生の藤井は、
「森内先生」と呼んで、
尊敬している。
NHK杯が、LIVE放送となるのは、
本当に特別なこと。
振り駒の結果、森内が先手。
第1手は、7六歩。
8四歩、6八銀と進んで、
藤井は3四歩。
森内が得意の矢倉模様に誘導。
解説は佐藤康光九段。
日本将棋連盟の会長。
今日はこれも異例の二人解説者。
もう一人は中村太地六段。
早稲田大学卒のイケメン棋士。
司会は藤田綾女流二段。
藤井は淡々、堂々。
とても中学生とは思えない。
矢倉模様の左金美濃囲いから、
後手番の藤井が仕掛けた。
6五歩、この一手。
森内九段、顔に手を当てて考える。
藤井は扇子をパチパチ。
そして表情を崩さず熟考。
佐藤康光と中村太地の解説も、
佳境に入ってくる。
佐藤の一言一言を、
真剣なまなざしで聴く中村。
中村にとっても、
実にいい勉強の場なのだ。
頭に手をやって、困った感じの森内。
そして両者、持ち時間がなくなる。
あとは30秒将棋。
棋譜読み上げは、
人気の飯野愛女流一級。
最後の詰めに入って、
藤井は冷静。
そして一気に寄せに入る。
飛車と角をすべて、敵に渡して、
その代わりに桂馬を4枚手中にして、
94手目、7七桂。
この手を見て、森内九段、投了。
藤井聡太四段の勝利が決まった。
快勝譜だ。
解説の佐藤康光九段も感心しきり。
将棋連盟会長としても、
ちょっとうれしそうだ。
その後、初手から、ゆっくりと感想戦。
佐藤康光、中村太地、そして森内俊之が、
中学生の藤井聡太に質問して、
それに藤井が的確に答える。
森内は名人位を8期務めて、
引退後は第十八世名人となる。
佐藤も名人経験者。
それらのトップ棋士が、
藤井の頭の中を垣間見ようとする。
それが生放送の感想戦だ。
最後は全員が礼に終わる。
今日の日曜漫歩は、
テレビの将棋対局観戦。
礼に始まり、礼に終わって、満足。
天才の中の天才を、
ライブ放送で見ることができた。
神はきっと、
人間の中に、意図的に、
天才をつくったに違いない。
〈結城義晴〉