「大きな町には小さな店を」と名古屋・丸榮百貨店の閉店
日は短くなって、木の影は長い。
商人舎裏の遊歩道。
月刊商人舎12月号の巻頭メッセージ。
[Message of December]
大きな町には小さな店を。
大きな町には小さな店を、
小さな町には大きな店を。
フランスの学者ルネ・ユーリックの原理。
大きな町にはセブン-イレブン。
小さな町にはウォルマート。
イオンの岡田卓也は言い換えた。
アメリカも日本も中国も、
世界中が都市集中化現象をきたす。
人々が都心を目掛けて集まり、生きる。
必然的にそこには、
小型小売店舗が開発され、
Small Store Ageがやってくる。
日本におけるその主役は、
長らくコンビニエンスストアだった。
圧倒的なコンビニ型消費が生まれた。
しかし、このところ、
コンビニの成長にブレーキがかかる。
業態飽和なのか、eコマースの影響か。
ユーリックは、こうも言う。
「まず25%の顧客を獲得せよ。
つぎに40%の顧客をつかめ」
25%の顧客によって信頼が生まれ、
40%の支持によって経営は安定する。
小売店舗競争は本来、寡占を競うものだ。
1967年は「大きいことはいいことだ」。
それが2017年の現在はThink Small。
小さく考え、小さく実行せよ。
世界最大のウォルマートは、
創業者の「Think Small」から始まった。
サム・ウォルトンは小さな競争を重視した。
それが小売業の本質だからである。
ゆえに大きな町には小さな店を。
小さな町には大きな店を。〈結城義晴〉
ユーリックには、
フランスのカルフールが影響を受けた。
1963年ごろから、
この考え方に則って、
巨大なハイパーマーケットを、
パリの郊外の小さな町に、
次々につくっていった。
1988年、それをアメリカで真似たのが、
ウォルマートスーパーセンター。
やはり小さな町に大きな店をつくった。
ウォルマートのサム・ウォルトンは、
「Think Small!」を訴え続けた。
「小さく考えよ」
巨大な店舗をつくって、
それを最強のフォーマットにする。
しかし考え方は「Think Small!」
1981年3月、岩手県北上市の近隣に、
江釣子ショッピングセンターが開設。
人口8000人の村だった。
核店舗は当時のジャスコ。
まさに小さな村には大きな店をだった。
しかし一方、大きな町には、
セブン-イレブンを初めとするコンビニが、
これまたスピードを上げて、
次々にオープンしていった。
ルネ・ユーリックに注目したのは、
故川崎進一先生だ。
東洋大学名誉教授で、
商業界のRMS初代校長。
「生きよ、学べ」(商業界刊)は、
川崎先生が亡くなられたときに、
遺稿集として編纂した。
さて、また老舗百貨店が閉鎖する。
名古屋の株式会社丸榮。
濱島吉充社長。
日経新聞がスクープし、
朝日、毎日などが追随した。
しかし丸榮からのニュースリリースは、
「弊社に関する
今回報道されている内容については、
弊社が発表したものではありません。
現時点で機関決定されている事項は
ございません」
それでも事実だろう。
1615年、十一屋呉服店として創業し、
402年の歴史を誇る。
1943年、株式会社丸榮設立。
1949年、名古屋と大阪で株式上場。
1961年、東京証券取引所に上場。
1973年、別館のマルエイスカイルが完成、
百貨店面積は4万9574㎡となって、
最大規模の松坂屋5万0521㎡に次ぐ、
2番手百貨店となった。
以降、名古屋では「4M」と言われる。
松坂屋、名古屋三越、名鉄百貨店と丸榮。
しかし、バブル崩壊とともに業績は悪化。
今年2月期決算では8億円の純損失を計上、
7月に上場廃止し、
親会社の(株)興和の子会社となっていた。
さらに来年6月に閉店し、
名古屋市の3万3003㎡の店舗は解体され、
2020年に新しい施設として蘇る。
しかしもう、百貨店としては、
再生されない。
この名古屋市の真ん中の丸榮は、
大きな町の大きな店だった。
〈結城義晴〉
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