日曜版【猫の目博物誌 その55】トナカイ
猫の目で見る博物誌――。
今日はクリスマスイブ。
サンタクロースのソリを引っ張るのが、
トナカイです。
トナカイはシカ科(Cervidae)、
トナカイ属(Rangifer)。
学名: Rangifer tarandus。
(CNNニュースより)
日本名でトナカイ。
アイヌ語の「トゥナカイ」(tunakay)が由来。
「馴鹿」(じゅんろく)は中国語で、
「人に馴れた鹿」。
つまり「家畜的な鹿」の意味。
英語はReindeer。
同じく英語のCaribouは、
アラスカエスキモーの言葉。
トナカイの自然分布は北極圏周辺。
アメリカのアラスカ州、カナダ、
デンマークのグリーンランド、
ノルウェー、フィンランド、ロシア。
体長は1.2~2.2m。
肩高は90~150cm。
体重は60kgから、
大きなものは300kgになる。
シカ科で唯一、雌雄ともに角がある。
これが鹿とトナカイの大きな違い。
鹿は雄にしか角が生えない。
トナカイは雌雄に角があるが、
雄の角の方が雌よりも大きい。
雄は春に角が生えて、
秋から冬にかけて抜け落ちる。
雌は冬に角が生えて、
春から夏にかけて角が抜け落ちる。
だからクリスマスのトナカイは、
雄だと考えられる。
足は速い。
時速80キロで走る。
体毛は厚い。
毛の内部に空洞がある。
保温性に優れている。
寒冷気候から身を守るためだ。
蹄は大きくて、接地面が広い。
これによって体重が分散され、
雪の上でも沈むことなく歩ける。
鼻の色は黒を基調に、
白い毛が混じる場合もある。
だから歌のような、
「真っ赤なお鼻のトナカイさん」はいない。
ツンドラ地帯に生息するが、
群れをつくって、大規模な移動を行う。
基本は草食性だが、
草食性の強い雑食性である。
夏は草や葉を食べるが、
ときに虫などの小動物を食す。
冬は角や蹄で雪を掻き分けて、
雪の下の苔などを食べる。
4月から6月にかけて、
雌は1回に1匹の子どもを産む。
人間と同じ。
人間が最も古く家畜化した動物のひとつ。
だから中国語で「馴鹿」という。
乳用・食肉用・毛皮用として活用されるし、
ソリを引く使役や荷役にも利用される。
何よりも雪の上でも走れるので、
そりを引くのに適している。
だからサンタクロースのソリを引く役目ができて、
それがトナカイの代名詞のようになった。
そのサンタクロースのトナカイ。
1823年にアメリカの新聞に詩が発表された。
タイトルは『サンタクロースがきた』
この詩の中で8頭のトナカイとなって、
それぞれに名前が付けられた。
ダッシャー(Dasher)
ダンサー(Dancer)
プランサー(Prancer)
ヴィクセン(Vixen)
コメット(Comet)
キューピッド(Cupid)
ドナー(Donner)
ブリッツェン(Blitzen)
レイモンド・ブリッグズの絵本、
「さむがりやのサンタ」。
「やれやれまたクリスマスか! 」
サンタクロースのおじいさんが、
面倒くさそうに目を覚ます。
そしてトナカイに餌をやる。
支度して出かけるのは、
街の子どもたちのところ。
雪をついて、
雨を縫って。
煙突に文句をいいながら、
プレゼントを届ける。
そして夜明けとともに、
うちに帰っていく。
南の島に憧れながら、
クリスマスイブの1日の仕事を終えると、
風呂にはいり、ビールを一杯飲んで、
ごちそうを楽しむ。
人間味あふれるサンタクロースの1日。
その続編は、
「サンタのなつやすみ」
いずれもトナカイ抜きには語れない。
サンタさんとトナカイ。
いい関係ですね。
ボクとおとうさんは、
もう一緒にいることはできないけれど。
(『猫の目博物誌』〈未刊〉より by yuuki)