日曜版【猫の目博物誌 その57】キンカン
猫の目で見る博物誌――。
スーパーマーケットの売場に、
この季節に目立つもの。
それがキンカンです。
キンカンは、ミカン科キンカン属。
常緑低木樹。
「金柑」と書いたり、
「金橘」(キンキツ)と言ったり。
ミカンのようだが、
粒は小さい。
学名はFortunella。
英語ではKumquat、あるいはCumquat。
「柑橘類」と言われる。
この柑橘類に分類される属は6つ。
⑴ミカン属 Citrus
⑵キンカン属 Fortunella
⑶カラタチ属 Poncirus
⑷クリメニア属 Clymenia
⑸エレモシトラス属 Eremocitrus
⑹ミクロシトラス属 Microcitrus
一般には、ミカン属、キンカン属、カラタチ属。
売場にはたくさんの柑橘類があるが、
ほとんどはミカン属。
だからキンカンは、
なかなかの存在感がある。
中国の長江中流の地域が原産。
長江は下流部は揚子江。
だから英語のKumquatやCumquatは、
「金橘」の広東語の音である。
果実は果皮ごと食べる。
果皮だけ食べる場合もある。
果肉は酸味が強いが、
その酸味がいい。
ただし、最近、年明けに、
宮崎県から出荷されるキンカンは、
甘みが強くて、生で皮ごと食べられる。
宮崎県ブランドで完熟「たまたま」。
温室栽培で、形の良い実が厳選されている。
2月に出荷のピークを迎える。
1キロ当たり最高値で2万円の高値。
今が、旬だ。
しかし酸味が強い食物ほど、
砂糖漬けや蜂蜜漬けにすると旨味が出る。
加工用のキンカンも同じ。
冬の夜の金柑を煮る白砂糖
〈草間時彦〉
ドライフルーツも人気がある。
生産は宮崎県が全国の約68%を占める。
2014年で2498トン。
次が鹿児島県で 24%の871トン。
つづいて熊本県、佐賀県、和歌山県。
ミカンの生産量は80万トンになるが、
キンカンは3700トン。
スケールが全然違う。
それでもキンカンの存在感は重要。
柑橘類のマーケットニッチャーといったところ。
キンカン塗って
また塗って♬
㈱金冠堂のコマーシャルソング。
カンカン キンカン キンカンコン
カンカン 鍛冶屋のおじいさん
肩こり 腰の痛みには
キンカン塗って また塗って
元気に陽気に キンカンコン
ミカン キンカン サケノカン
ヨメゴモタセニャ ハタラカン
作曲は服部正、作詞は藤浦洸という、
豪華な顔触れ。
キンカンの果実は、
咳やのどの痛みに効果がある。
果皮にはヘスペリジンを含む。
ヘスペリジンはビタミンP と呼ばれ、
柑橘類に含まれるポリフェノールの一種。
金柑は咳の妙薬とて甘く
〈川端茅舎〉
しかし、こんな句もある。
金柑のどことなく気に障りけり
〈飯島晴子〉
金柑の食べ頃となる恵方かな
〈岸本尚毅〉
キンカンは小さい。
キンカンは酸っぱい。
最近は甘い。
ボクは苦手ですが、
おとうさんは好きなようです。
ちなみに11月23日が、
キンカンの日です。
(『猫の目博物誌』〈未刊〉より by yuuki)