日曜版【猫の目博物誌 その59】煎り大豆
猫の目で見る博物誌――。
昨日は節分、今日は立春。
節分には豆撒きをします。
今は恵方巻が主役ですが、
煎り大豆も節分の主役のひとつです。
大豆はマメ科の一年草。
学名はGlycine max。
英語ではsoy、あるいはsoy bean。
だから醤油はsoy sauce。
煎り大豆はroasted soybeans。
完熟した大豆の種子からは、
油脂が搾り取られる。
これを「搾油」という。
搾油したあとの絞り粕は、
飼料となる。
未成熟の種子が「枝豆」。
大豆は農作物として、
世界中で栽培、生産されているし、
歴史的にも極めて古くからの例がある。
日本では縄文時代の出土例があるし、
最古の歴史書『古事記』にも記録がある。
植物として、
肉に匹敵するタンパク質を含有する。
だからドイツでも日本でも、
「畑の肉」と呼ばれる。
両性花で自家受粉する。
自家採種もしやすい。
つまり遺伝性の「強い植物」と考えられる。
しかし、連作障害が起こりやすい。
だから一年生草本の大豆は、
今年、生産したら、
来年は違う作物を作付けして、
連作を避ける。
連作する場合には、
畑の消毒をしたり、土壌改善をする。
連作に向かない性質が、
国内栽培規模拡大の壁となっている。
大豆は遺伝子組換え品種の割合が高い。
2014年のISAAA調査では、
世界の作付面積の約82%が、
遺伝子組み換えである。
2016年の都道府県別の作付面積は、
1位北海道、2位宮城県、3位秋田県。
以下4位福岡県、5位佐賀県。
さらに6位滋賀県、7位山形県、
8位新潟県、9位青森県、10位富山県。
北の北海道・東北と九州。
2016年の大豆の自給率は7%。
ただし、搾油される油糧用を除いて、
食品用に限定すると25%に上がる。
2016年の輸入国は、
アメリカの224万トンが圧倒的。
ブラジル52万トン、カナダ34万トン。
中国は意外に少なくて3万トン。
国内の需要量は約338万トンで、
国産大豆は約24万トン。
品種別に作付面積のベスト5は、
フクユタカ、ユキホマレ、エンレイ、
以下、リュウホウ、タチナガハ。
これらの品種は豆腐、煮豆用。
納豆用の品種は、
北海道のユキシズカ、スズマル、
関東の「納豆小粒」。
国産大豆の用途は、
豆腐が56%、納豆が17%、
煮豆惣菜が9%、味噌醤油が8%。
煎り大豆は、
節分用と限定されているためもあって、
製造量は多くはない。
煎り大豆の成分は、
100グラム当たりで、
エネルギーが426キロカロリー、
タンパク質38.3%、炭水化物34.1%、
脂質19.3%、塩分0.07%。
大豆を煎って作るから、
製法はシンプル。
季節の変わり目には邪気が生じる。
邪気は「鬼」と考えられている。
その鬼を追い払うため、
悪霊払いとして豆撒きが行われた。
豆撒きをした後、
数え年の数だけ食べて、
一年の無病息災を願う。
豆撒きしあとの静かな夜なりけり
村山故郷の字余りの句。
豆撒の猫疾駆して終りけり
〈加藤秋邨〉
鬼は外、福は内。
豆撒きのときは、ボクは疾駆する?
でも豆撒きが終わると立春です。
春がもうそこまで、
やってきています。
(『猫の目博物誌』〈未刊〉より by yuuki)