日曜版【猫の目博物誌 その67】ガクアジサイ
猫の目で見る博物誌――。
久しぶりです。
季節は梅雨。
梅雨の花はアジサイ。
学名Hydrangea macrophylla。
アジサイ科アジサイ属。
しかし、同じ株から咲いているのに、
花によって色が異なる。
場所によって、
赤い花が多かったり、
青い花が多かったり。
時間の経過によっても、
花の色が変わる。
「アジサイの色変わり」。
その原因は色素と土壌にある。
〈詳細は2016年06月12日(日曜日)
【日曜版・猫の目博物誌 その6】アジサイに〉
アジサイの咲き始めは薄い黄緑色。
それから色が変わる。
酸性土壌で青いアジサイ、
中性・アルカリ性土壌で赤いアジサイ。
さらに同じ株のアジサイでも、
色は変わる。
それは同じ株にも多数の根があって、
根の場所によって、
土中から吸収する成分が異なるから。
さらに盛りが過ぎると褪色して、
色調もくすんでくる。
それは花の中の酸性の程度が、
強くなってきたから。
アジサイの群生は美しい。
しかし日本産のアジサイは、
「ガクアジサイ」である。
学名はHydrangea macrophylla f.normalis。
英語ではlacecap hydragea。
日本の本州以南の海岸沿いに、
ガクアジサイが自生していた。
房総半島や三浦半島、伊豆半島、
さらに伊豆諸島、足摺岬、
南硫黄島、北硫黄島など。
半島や島の海岸のそばに自生したから、
「ハマアジサイ」の名称もある。
高さは2mほど。
大きなものは4mにも成長する。
花序は真ん中に多数の「両性花」があって、
それを中心に「装飾花」が周りを縁取る。
「花序」とは花の配列状態のこと。
中心に小さな蕾のような花びらが集まる。
これが雄しべと雌しべをもつ両性花。
その外側には「ガク」が、
大きな花びらのように付いている。
これが「装飾花」で、
ガクは種子をつけない。
ガクは葉が変化した花を守る部分で、
花の色と同調している。
だからガクは葉と同じ模様を持つ。
ホンアジサイは、
このガクの装飾花が、
本命の花のように見える。
ガクアジサイの名称の「ガク」は、
この花の配列が、
「額縁」に似ていることに由来する。
葉は厚くて、大きい。
葉の表面は濃緑色で光沢がある。
蕾はまだ開いていない花のことだが、
それが成長して中心の両性花となる。
横から見たガクアジサイ。
両性花が上に、
装飾花が下に。
それが群生している。
赤紫のガクアジサイ。
むしろガクアジサイのほうが、
本来のアジサイだ。
ガクアジサイは俳句の世界では、
「額の花」と表現される。
才能に適不適あり額の花
〈1999年、「いろり」より桑垣信子〉
アジサイは色変わりする不思議な花です。
けれどガクアジサイは、
本物の姿を見せてくれる。
ボクはガクアジサイのほうが、
好きなんです。
(『猫の目博物誌』〈未刊〉より by yuuki)