ドイツの小型ディスカウンター三兄弟/アルディ・リドル・ネットー
ドイツには付加価値税がある。
日本の消費税。
その付加価値税の税率は、
2パターンに分かれる。
第1は標準税率。
ほとんどの商品やサービスには19%かかる。
日本の感覚からすると、
かなり高い気分になる。
ただし様々な公共サービスがあって、
そちらはきちんと対応される。
だから国民に不満は少ない。
第2は軽減税率。
食料品や書籍などが該当して、
税率は7%。
食料品の中でも、
酒類や飲食店での食事、つまり外食には、
標準税率が適用される。
ただし、飲食店で、
テイクアウトをした場合は、
軽減税率になる。
小売店の店頭では内税で総額表示される。
レシートには本体価格と税金が、
きちんと表示されている。
日本では来年10月に、
消費税が8%から10%に増税される。
それに伴って軽減税率を導入することが、
半ば決定している。
小売業界などはこぞって反対しているが、
政府の方針は決定の方向にある。
昨日の日経新聞。
財務省の新しい指示らしきものが、
発表されたと報じている。
店内に休憩所を持つ店舗。
スーパーマーケットやコンビニなどは、
店内で販売した飲食料品に関して、
原則的に軽減税率の対象となるが、
ただし、それを店内で食べると、
外食との境目が分かりにくくなる。
だから休憩所に「飲食禁止」と明示し、
顧客が店内で食べないようにする。
「飲食禁止」の表示があれば、
軽減税率の対象とする。
「イートイン」や「グロサラント」などは、
標準税率である。
休憩所を休憩所として利用すれば、
すぐに食べられるおにぎりや惣菜、
サンドイッチやコーヒーなども、
軽減税率になるらしいが、
それを店内で食べた場合には、
標準税率にする。
また財務省は、変なことを言い出した。
いや、もともと変なことを言ってるから、
変な条件を加えた。
ドイツは標準税率が19%で、
軽減税率が7%。
両者の開きが大きいから、
消費者もかなり意識するだろう。
しかし日本は2%の違いに過ぎない。
市場はどう動くか。
余計な条件や線引きが出てくるとき、
社会は間違いなく、
悪い方向に向かっている。
ドイツは消費税19%、
そして軽減税率7%。
総額表示だが、
それでもアルディやリドルは、
驚くほど安く感じさせる。
そのアルディ。
1000㎡型の小型ディスカウンター。
ボックスストアと呼ばれたりする
店内は簡素だが、
最近のアルディは、
クレンリネスが行き届いている。。
入り口を入ると、グロサリーから始まる。
それがアルディの特徴。
それも段ボールカット 陳列。
飛び切り安いグロサリーの、
エンドの連続から入ると考えるといい。
お買い得のチョコレートは、
アメリカのアルディでも販売されている。
ゴディバの工場で製造されている、
と言われる。
そしてこの自動パン売場。
ボタンを押すと好きなパンが、
落ちてくる。
パンの自動販売機には、
スポットライトが当てられている。
「冷たいです!」
焼きたてではない。
冷蔵ケースなどは平ケースで、
きちんと蓋がある。
省エネ効果を高めるためだ。
生鮮食品の鮮度も高い。
回転がいいからだ。
そのエンドのプロモーション。
そしてオーガニック売場。
こちらでは「Bio」という。
グロサリーにも、
Bio商品がずいぶん多くなった。
アパレルや雑貨は、
平台に投げ込み陳列。
意外に売れている。
トイレットペーパーはすごい売れ行き。
段ボールカット陳列をする。
ほとんど9割以上がPBなので、
その段ボールの色を指定して、
陳列した後の売場をカラフルにする。
チェッカーは座って対応する。
アルディにしてはとても混んでいて、
2台のレジが開けられている。
陳列補充に1人、レジに2人。
この時間帯は3人でオペレーションして、
客数もそれなりにある。
それがアルディの効率を生み出す。
こちらのアルディは、
フリースタンディング。
レイアウトや品ぞろえは、
完全標準化が貫かれる。
パンの自販機もある。
そして青果部門にはBio。
精肉もとてもいい商品だ。
量を売ることを命題としてきたアルディ、
量が質に転換した。
エデカと一緒に入居したビルイン型のアルディ。
最新の都心型ショッピング施設。
Bioのエンド。
グロサリーディスカウントの特徴を、
前面に出すのがアルディ。
フランクフルトの街中に、
日本のセブン-イレブンのごとく、
密集した店舗配置をする。
恐ろしいほどだ。
一方のリドル。
ドイツ最大の小売業は、
シュワルツグループ。
そのシュワルツの主力フォーマットが、
小型ハードディスカウンターのリドル。
独走していたアルディを猛追。
アルディがグロサリーから始めるなら、
リドルは生鮮食品から入る。
それがアルディとの差別化戦略。
先行された企業が、
マーケットリーダーを追いかける。
だから差別化戦略となる。
パンはアルディの自動販売機に対して、
顧客が選んで商品をとるスタイル。
しかもシースルーになって、
バックヤードが見える。
衛生的な閉鎖型什器。
大皿にパンが並ぶ。
それを火かき棒のような道具で、
右の取り出し口に分ける。
ポークチャップもご覧の品質。
アルディに負けていない。
サーモンもきちんと鮮度管理されている。
1000㎡の小型店だが、
主通路はしっかりと取られ、
見やすい、歩きやすい、仕事しやすい。
冷蔵商品は平ケースで、
リドルでも蓋つき。
省エネには国を挙げて取り組む。
ローコスト・ロープライスだが、
店内はクレンリネスが行き届く。
グロサリーは段ボール陳列。
これもアルディと同じ。
平台でアパレルや雑貨を販売する。
こんな投げ込み陳列で、売場も乱れる。
しかしそれを直したりしない。
紳士パジャマが8ユーロ99。
顧客は結構、買っている。
売れるから売る。
だから売り場が乱れているとは、
批判できない。
ワインの品ぞろえも、
1000㎡としては豊富だ。
そして日常生活にはこれで充分。
トイレットペーパーなどは、
単品大量販売。
レジはこのグレーの縞模様。
やはり座って対応。
アルディがまるで、
日本のセブン-イレブンのように展開すれば、
そのアルディに接近戦を挑むのがリドルだ。
この1年で米国東海岸に、
リドルが100店ほどの急速出店をした。
さてそちらはいかがだろう。
私はアルディがあるから、
リドルが生きると思う。
イギリスでもこの2社が進出して、
テスコ、セインズベリー、アズダが、
苦戦を重ねる。
ウォルマートすら、
アズダを救えないほどだった。
アメリカにもいよいよ、
そのリドルが進出する。
私は、成功の可能性は半々だと見ている。
失敗とは撤退のことだから、
撤退しないかぎり、
失敗とは言えないけれど。
そしてネットー。
アルディ、リドルに次ぐ、
三番手の小型ディスカウンター。
スーパーマーケットのエデカが運営している。
入り口右手にパン屋が併設されている。
白い店内でこざっぱりしている。
対面販売でパンを提供し、
イートインできるようになっている。
軽減税率で販売されている。
「飲食禁止」の表示はない。
そしてネットーは、
青果部門から入る。
エデカはボランタリーチェーンだが、
ドイツ最大のスーパーマーケット。
だからこの店は完全なミニスーパーだ。
青果部門の奥にベーカリー部門。
こちらもシースルーになっていて、
見やすいし、選びやすい。
やはり火かき棒のような道具で、
手前に好みのパンを引き寄せる。
アルディ、リドル、ネットー、
パンの売り方も三者三様。
パンから冷凍食品とグロサリーへ。
「to go」の売場は、
テイクアウト商品だ。
グロサリーは、
ハードディスカウンターというより、
スーパーマーケット。
Bio商品はどんどん広がる。
冷凍冷蔵ケースは、
ネットーでも平ケースで蓋つき。
精肉はリーチインケースで、
見通しが良いタイプを採用。
そしてワインはこの力の入れよう。
レジも1人が1台開けて対応している。
レジの上の丸いケースは、
タバコ販売の什器。
このネットーの50m先に、
アルディの店が出ている。
勝負ははっきりしている。
アルディの完勝。
エデカは優れたスーパーマーケット企業だ。
しかしネットーは、アルディ、リドルに、
遠く及ばない。
アルディは「これだけ」の、
専業ボックスストアチェーンだ。
リドルはボックスストアと、
ハイパーマーケット「カーフランド」の企業。
少しだけスーパーマーケットも有する。
ネットーを展開する主体は、
ドイツ一番のスーパーマーケット・エデカ。
だからネットーはアルディ&リドル対策の店だ。
しかし、この違いが出ている。
専心・専念せよ。
Commit to your business!
サム・ウォルトンの声が聞こえた。
しかしディスカウンター三兄弟、
軽減税率は最大限活かすが、
総額表示の内税の割高感を、
全然感じさせない。
日本のコスモス薬品は、
消費増税後も総額表示を貫くが、
割高感を感じさせないほど安いから、
伸びている。
アルディ、リドルと同じだ。
(つづきます)
〈結城義晴〉