ミラノ・イルセントロのイーペルと独ハイパーを比較する
体育の日がスポーツの日となる。
私など「体育」の方がいい気がするが、
スポーツ議員連盟など3議連が動いて、
2020年からスポーツの日にする。
私の場合、㈱商業界社長を辞めてから、
10月のこのころはずっと外国にいる。
体育でもスポーツでも、
どっちでもいいが、
体育には別の意味があると思う。
無責任な言い方で申し訳ないが、
そんなことを思っていたら、
同志社大学の横山勝彦教授。
スポーツ健康科学部。
「体育の日が祝日であることの意義が
より薄れてしまわないか」
「簡単に言えばスポーツの産業化」
横山教授の指摘だが、
それはそれで悪いわけではない。
しかし産業化の大義のもとで、
国民の「体育」が進まないのは困る。
これは「食育」も同じだ。
そして「食育」という言葉を使うと、
「体育」という言葉や概念の重要性も、
改めて認識される。
さて、イタリアのミラノにやってきて、
すぐに市内の店を巡った。
それらは明日、総まとめするとして、
ミラノ訪問の目的の一つが、
「イルセントロ」
世界最高水準のショッピングセンター。
夕方到着したら、
土曜日ということもあるが、
凄い混み方。
高速道路から車がずっとつながる。
モールの中に入っても、
信じられないほどの顧客数。
2016年4月にオープンすると、
その年のMAPEC賞で、
ショッピングセンター部門金賞。
アルファロメオの工場跡地を、
半分くらい活用して、
木造り・採光システムの商業集積が、
堂々、登場した。
モールにはファミリーを対象にした、
様々な仕掛けがある。
もちろん、テナント専門店は、
世界レベルのプレステージストア、
イタリアの高級専門店、
そしてミラノの地元専門店が、
ずらりと並ぶ。
その中で、北側の端に、
マグネットとして入ったのが、
プライマーク。
2層のプライマーク、
2層のH&MとZARAが核となる。
反対側の核がハイパーマーケット、
イーペル・ラ・グランデ。
その北側の核のプライマークが、
なんともすごい。
かわいい。
安い。
この人混み。
商品はデザイン性に優れ、
それでいて品質も確かで、
圧倒的に安い。
レジには長い行列。
この状態。
レジの行列の最後尾を示すために、
この丸い告知ボードを掲げて立っている。
まるでNYのトレーダー・ジョーだ。
プライマークは現在、
英国食品会社の子会社。
Associated British Foods(ABF)傘下。
アイルランド発のファストファッション。
ベビー・キッズ、レディス・メンズから、
ホームウェア、アクセサリー、
さらにHBCや菓子までそろう。
ヨーロッパやアメリカなど11カ国に、
320店舗以上を展開する。
世界的に注目されるアパレル小売業。
だから隣のスウェーデンのH&Mは、
惨憺たる状況。
スペインのZARAも、
プライマークとはテイストを変えて、
それを強調しているようだ。
モール1階にある子どもたちの遊び場は、
もうすごい人、人。
そして飲食や食品、ファストフードが、
モールの至る所にあって人気を博す。
2層のモールの南側へ、
円形のスロープを下っていく。
イーペル・ラ・グランデ。
凄い総合スーパー。
ヨーロッパでは「ハイパーマーケット」。
「Ipel」という言葉が、
イタリア語で「Hyper」
中2階のビールバーから、
1階の売場が見える。
レジもご覧のように混みあっている。
そして入り口にハンドスキャナー。
顧客が自分でスキャンすれば、
レジが素早く終わる。
5000坪くらいの1フロアに、
ハイパーマーケットのフルライン展開。
しかしモール側の前面の青果部門が、
圧倒的な市場の構成。
ウェグマンズの青果部門の3倍くらいか。
古い馬車を活用したプレゼンテーション。
単品量販が原則だ。
いいものが安い。
そして商品を回転させる。
鮮魚売場は氷を敷き詰めて、
高い位置に陳列ラインを設けている。
牛肉は枝肉から下ろす。
そしてこの圧倒的な品ぞろえ。
生ハムとチーズは対面売場。
スペインの食品店はほとんど、
生ハムがぶら下げられているが、
イーペルはそれをしのぐ。
チーズが圧巻。
モッツァレラチーズはインストア製造。
そして大きな塊を、
いつでも試食させてくれる。
寿司売場も自慢げに試食を出してくれる。}
冷凍食品はリーチインケースに、
ずらりとアソートする。
広い売場の真ん中に、
マグネットが必要になる。
それがこのBIOのショップ。
壁面に飲料がずらり。
イタリア国旗が、
三色のビンで表現されている。
どん詰まりには家電売場。
そしてアパレルもスペースをとる。
プライマークやZARAを見ていると、
この売場は必要ないと思う。
夜、8時くらいまで、
レジはこんな状態だ。
モール側のイートインコーナーでは、
ピザを食べながらワインを飲む顧客たち。
イーペルはこのイルセントロにおいて、
圧倒的な集客装置となっている。
それが巨大な食品製造小売型の、
ハイパーマーケットとして、
最高峰の地位を占めている。
日本のGMS、総合スーパーは閉塞状態だ。
このイーペルがその一つの方向性を示す。
詳細は月刊商人舎2017年7月号特集。
「内食・外食」主役のHuge SC Age
――イズミとイオンとイーペルと。
それは実はドイツにもあるし、
フランクフルトにある。
カウフランド。
リドルを展開するシュワルツが、
もう一つの主力フォーマットとして、
着実に進化させてきた。
そしてメトロの「リアル」との差を広げた。
1フロア3000坪のハイパーマーケット。
もちろん青果部門から始まる。
細長い売場だが、
細長いコの字型に、
レイアウトされて、
それを青果⇒HBC⇒ベーカリー
⇒精肉・デリカテッセン⇒乳製品
⇒冷凍食品とけん引していく。
対面の精肉・デリカテッセンの前に、
リーチインの広大な畜産売場。
真ん中のゾーンが非食品とシーゾナル。
アパレルはリドルと同じ平台に、
投げ売りのようにして販売する。
最後に巨大な冷凍食品売場。
チェックスタンドはモダンなスタイル。
シュワルツはドイツ第一の小売業だ。
難しいハイパーマーケット経営の、
問題解決を果たしている。
それは食品の巨大化と、
ローコスト・ロープライスである。
この点に関しては、
ボックスストアのリドルとの、
連関が生きている。
一方、スーパーマーケット第1のエデカ。
スチェックインセンター。
私も初めて訪れたが、
スーパーマーケット企業が、
ハイパーマーケットを、
これほどまでにうまく経営できるかと、
本当に驚いた。
レーベに比べて、
先鋭的で斬新な経営を志向する。
だからデザインやトレンドが、
アメリカ的である。
売場への入り口は赤い門。
まず青果部門は平台を多用して、
エデカのスーパーマーケット企業の、
強みを活かす。
エンドにクリスマスの販促。
鮮魚とチーズは、
島型の平ケースで圧倒する。
チーズ売場も圧倒的な品ぞろえ。
精肉は左側の長い壁面に、
対面形式でサービスする。
奥に酒とワイン売場。
赤い天井でショップ型に構成。
そのワイン売場にテーブルと椅子がある。
顧客が参集して楽しそうだ。
そう、「グロサラント」の全面展開。
出口のところにもイートインコーナー。
イータリーからイーペル、
そしてエデカスチェックインセンター。
さらにシュワルツのカウフランド。
この流れはハイパーマーケットでこそ、
主流となってくるに違いない。
今回、私はそれを確信した。
考えてみると、ウェグマンズも、
2000坪の超大型スーパーマーケットだ。
イーペル、カウフランド、
エデカスチェックインセンター。
その原点にウェグマンズがある。
(つづきます)
〈結城義晴〉