イータリー&ル・ディストリクトとウォルマート&アルディの対極
ワンワールドトレードセンター。
2001年9月11日。
同時多発テロが起こった。
その旧貿易センタービルの跡に、
二つの鎮魂のプール。
亡くなった人たちの中で、
今日が誕生日の人に、
花が手向けられる。
白いバラの花。
オキュラスのモニュメント。
内側は真っ白な空間と商業集積。
ニュージャージーにつながる駅。
ワンワールドトレードセンター駅。
万代ドライデイリー会、
全員で哀悼の意を胸に、写真。
このエリアのウェストフィールド3階に、
イータリーがある。
イータリーは2007年に、
イタリア・トリノに出現した。
ニューヨークには2010年に1号店出店。
この2号店は2016年にオープンした。
食べる、買う、学ぶ。
食堂であり、市場であり、学校である。
私は「学校である」というところが、
大好きだ。
そんな新しいものを、
オスカー・ファリネッティは目指した。
イタリアの家電王だったが、
そのユニユーロという会社を売却して、
イータリーをつくった。
だからイータリーの店は、
イタリア市場のようだ。
それでいて食や飲料を楽しむ食堂。
店内ツアーをやってもらった。
ベンジャミンさん。
あちこちの部門に試食を用意してくれて、
自慢のアイテム群を食べさせてくれた。
加工肉とチーズの売場。
そしてグロサリー。
モッツァレラチーズは店内製造する。
このスペシャリストの腕前。
つくったモッツァレラチーズは、
小売りするし、ピザに使うし、
レストランではパスタやサラダに使う。
だから製造小売業としての強みが出るし、
製造⇒販売の調整が効く。
ピザは2基の窯を持っていて、
焼きたてを提供する。
パスタの調理場。
一方、小売市場は、
青果、鮮魚、精肉、ベーカリー、
そしてデザートまで。
シーフードはイタリア料理に欠かせない。
ジェラートも試食させてもらった。
レストランには小型三輪があって、
雰囲気をつくる。
イータリーは体験しなければわからない。
土曜日の朝早く訪れて、説明を聞き、
昼頃食事をした。
食べる、買う、学ぶ。
このエクスペリエンスが大事だ。
もう一つこのエリアの大事な店。
ブルックフィールドプレースにある。
ショッピングセンターの屋根は素通し。
そしてワンワールドトレードセンターが見える。
2階は「ハドソンイーツ」、
フードコート。
ニューヨークのホットなレストランが、
ファストフード形式で出店。
この寿司屋は絶品。
そしてイータリー化現象は、
ル・ディストリクトに現れる。
イータリーのフランス版で、
小売店とレストランが融合している。
青果部門は、
フランスの香り漂う市場。
そして売場の各所にイートインコーナー。
こちらは肉売場とレストランの融合。
イータリーが南欧の陽気な雰囲気なら、
こちらは間接照明を使って、
シックな空間を演出する。
テイクアウトのカフェ・コーナー。
近隣のオフィスで働く人たちや、
観光客がやってくる。
パティスリーとコーヒー。
椅子とテーブルが増やされた。
休日の午前中には観光客が多い。
チョコレートなどの菓子は、
専門店形式。
このショップもリニューアルされた。
観光地でもあるから、
土産需要にも対応する。
マンハッタンを離れて、
ニュージャージー州へ。
ウォルマート・スーパーセンター。
ウォルマートは、
マンハッタンには出店できない。
青果部門のこの販売量。
よく売れている店だ。
バナナも投げ入れ陳列で、
凄い単品量販。
調理用バナナ1本20セント。
完熟バナナは1ポンド58セント。
ロールバックはこの時期だけ、
「ライト・アップ・クリスマス」と、
ネーミングを変更している。
エンドのTOPボードは、
両サイドを向いている。
リーチインの卵の売場。
よく売れて欠品だらけだ。
牛乳は1ガロン3.19ドル。
クリスマス商材を集めたゴンドラアイル。
主通路では、目玉商品の
65インチテレビをプロモーション。
529ドルと、安い。
ウォルマートは主通路に、
島型に商品を置いてプロモーションする。
これを「アクションアレイ」と呼ぶ。
現在はクリスマス商材が、
全面展開されている。
売場の一角では、
クリスマスのプロモーション。
右サイドの入り口には、
「ライトアップクリスマス」のパネル。
レジ前でラッピング商材を販売。
売場はクリスマス販促全開だ。
そして店舗の右サイドには、
クリスマスショップができている。
レジ前のこの混雑。
みな、大量に商品を購入している。
このニューヨーク大都市圏では、
4%台のシェアしか、
もっていないウォルマート。
店が少ないからこそ大繁盛店となる。
アルディは、
最新の新型店舗を訪れた。
入口からはワンウェイで、
飛び切りの特売品売場。
ウィンコフーズのザ・ウォールのようだ。
そして青果部門とベーカリー部門が、
登場する。
アルディの生鮮が前面に出てきて、
よりスーパーマーケットらしくなった。
ホウレンソウなど超お買い得。
オーガニックも強化して、
品質も高く、しかし安い。
オーガニック・バナナは、
1ポンド59セント。
これはウェグマンズと同じ値段。
奥に「Fresh」と書かれた生鮮売場。
生鮮の品揃えも充実してきた。
ポークチョップは実にいい品質だ。
牛乳は1ガロン3.29ドル。
冷凍食品は、
蓋つきの冷蔵ケースで売る。
この店は珍しく長い行列。
アルディのレジチェッカーは、
座って処理する。
しかしレジ処理スピードは速い。
次から次へとお客が入っていく。
新店で、レイアウトも変えた。
それに反応する顧客。
期待は大きい。
イータリーとル・ディストリクト。
ウォルマートとアルディ。
どちらも世界レベルで、
どちらも驚くほどの繁盛。
一方は最先端のトレンドを表現する。
一方はベーシックな低価格を実現させる。
それがアメリカやニューヨークを、
実によく表している。
対極を持つ。
対極を表現する。
40年近く前に、
マガジンハウスの甘粕章さんに、
対談してもらった。
「両極をもっていなければ魅力がない」
いまでも印象に残っている。
しかしそれが商売の極意だ。
コストコは、
ダイヤモンドとトイレットペーパーを
一つ屋根の下に持つ店。
極意を知る企業だ。
そしてそれは、
都市機能の豊かさでもある。
〈結城義晴〉