「入管法」改定案強行可決の「議論無視」と「小売業軽視」
衆議院法務委員会。
「入管法」改定案を強行可決。
朝日新聞は11月23日(金)の社説で書いた。
「国会の自殺行為ではないか」
毎日新聞の今日の社説も、
「立法府軽んじる法案形式」と批判した。
朝日社説。
「出入国管理法改正案の衆院通過に向けて、
自公両党が突き進んでいる」
22日(木)には野党欠席のまま議事を強行。
野党もだらしないことこの上ないが。
朝日新聞も毎日新聞も、
その他の新聞ももちろん、
外国人労働者の受け入れ拡大に、
反対しているわけではない。
従来の政策が大きく転換される。
だから、「さまざまな観点から議論を重ね、
疑問や懸念を消していかなければ、
将来に大きな禍根を残す」
その通りだ。
「外国人をどんな業種に、
どれほどの規模で受け入れるのか」
毎日新聞社説。
「入管法改正案では、
“省令で定める”との規定が
30カ所以上に及ぶ」
「新設される在留資格の要件については、
特定技能1号は”相当程度の知識
または経験を必要とする技能”
2号は”熟練した技能”と
おおざっぱに規定してあるだけだ」
「1号の在留期間は最大5年とし、
2号は長期更新が可能」との政府説明。
しかし、法案に規定はない。
「どのような産業分野を人手不足と判断し、
どのような技能を持った外国人労働者を
受け入れるのか。
その判断や運用の”基本方針”は
後から閣議決定するとされている」
政府が示した受け入れ見込み人数は、
「5年間で14業種、約34万人」
その14業種は、
特定技能1号が9業種。
介護
ビルクリーニング
農業
漁業
飲食料品製造業
外食業
素形材産業
産業機械製造業
電気・電子情報関連産業
2号が5業種。
宿泊業
建設業
自動車整備業
造船・舶用工業
航空業
岡田卓也さんが憤っていた。
イオン名誉会長相談役。
「小売業が退けられている。
いまだに士農工商の序列がある」
私も政治家や官僚に、
小売業軽視があると思う。
そして行政運用は恣意(しい)的に揺れ動く。
「今回の法案は肝になる部分が省令任せで、
政府にフリーハンドを与えるに等しい」
平成26年の全産業従事者数は5743万人。
製造業が919万人で、
小売業卸売業は1203万人。
宿泊飲食業は549万人。
商業は最も従事者の多い産業なのだ。
その小売業でも、
人材と人手が足りないという現実は、
最も深刻な問題だ。
毎日社説はたとえる。
「レストランが客にメニューを見せずに
注文を決めろというようなものではないか」
月刊商人舎2017年1月号特集は、
“Declaration of Organics”in Japan
日本オーガニック元年を宣言する!!
その巻頭提言のタイトル。
「日本オーガニック元年宣言」私的起草文
この中で、米国オーガニック法制定の、
プロセスを紹介した。
アメリカでは1990年に、
「オーガニック食品生産法」制定。
1992年、全国オーガニック基準委員会の、
委員が指名された。
1997年12月、「オーガニック基準案」公示。
最終的に28万件ものコメントが寄せられ、
基準案に大幅な修正が加えられた。
その後も1998年、1999年と議論は重ねられ、
2000年12月20日、農務省の最終規則発表。
これが「ナショナルオーガニックプログラム」
翌2001年4月に、
このプログラムの最終規則発行、
2002年10月21日、完全履行。
「時間をかけて、紆余曲折を経て」、
米国オーガニックプログラムは、
全面的に施行されることになる。
重要な点が3つある。
第1は、公明正大に
プログラム制定が展開された点である。
第2は、民間組織連合の骨身を惜しまぬ
ボランタリーな活動である。
そして第3に、その公明性と、
最終的に民間の声を丁寧に聞き入れ、
修正した農務省の姿勢である。
私はこれを、
「行政のマーケティング」と位置付けた。
その結果こそが、
その後の米国市場における、
オーガニックの躍進である。
日本の外国人労働者の受け入れ拡大は、
間違いなく日本の将来を決める。
現在の入管法改定には、
それほど時間はかけられないが、
議論は必須だ。
悪いけれど、
米国におけるオーガニックの比ではない。
こんな無議論の国会、
しかも民間の声を無視した可決。
軽減税率の弥縫策連発といい、
「入管法」改定案可決といい、
小売業無視は甚だしい。
そのことを強く意識し、
直ちに産業としての意思を
表明すべきときだ。
さて、きょうは朝から東京渋谷。
(株)リテイルサイエンスへ。
大久保恒夫さんを訪問。
昨年、セブン&アイ・ホールディングスと、
セブン&アイ・フードシステムを退任し、
現在、リテイルサイエンス社長として、
まったく休みなしの八面六臂の活躍。
ゴルフの約束をしたら、
来年3月になってしまった。
新しいプロジェクトも、
次々に打ち立て、
画期的な提案もする。
「大久保恒夫健在なり」を示す。
そのうえ、2019年初には、
単行本を刊行予定。
そのゲラも送ってもらって目を通したが、
素晴らしい出来栄えだ。
その大久保さんと、
月刊商人舎12月号のための対談。
いい内容でした。
ありがとうございます。
ご期待ください。
帰りに執筆の梅澤聡さんとランチ。
渋谷STREAM前。
大久保さんも頑張っている。
私ももっともっと励まねばならない。
そう思った。
いい秋の日だったが、
世の中の小売業軽視とは、
闘わねばならないと決意した。
〈結城義晴〉