シアトル3日目のマーケットニッチャーズの存在意義
リ・エンジニアリング
鈴木哲男著『流通RE戦略』
EC時代の店舗と売場を科学する
書籍価格 1,800円(本体)+税
ISBNコード ISBN978-4-9910649-0-6
四六判 261ページ
おかげさまで、
注文殺到。
ご注文は商人舎へ。
FAXでのご注文はコチラ☞。
Emailでのご注文はinfo@shoninsha.co.jp。
Amazonでも購入できます。
書店には出していません。
悪しからず。
さて、シアトル3日目。
スーパーマーケット勉強会。
快調に学習予定を進め、
成果を上げています。
今回は最新のレジレス機能の本質を探究し、
同時に自主独立小売業の生き方を追求する。
西友の実質的な創業者は、
故上野光平先生だ。
西友支配人、副社長など歴任のあと、
流通産業研究所理事長兼所長。
流通業界きっての理論派といわれた。
その上野先生が言い続けたのが、
「独立自営商人であれ」
サラリーマンに対しても、
独立自営商人の志を持てと言った。
独立自営とは、
英語でいえばインディペンデント。
その考え方と生き残り方を学ぶ。
こんなことを書くとまた、
この考え方を真似て、
それを自分が考え出した概念のように、
吹聴する向きが出てくるが、
その時には上野光平先生の考え方であると、
必ず断っていただきたい。
それが人間としての常識であるし、
著作権法に則ったやり方だ。
今日は朝から店舗視察。
まずはメトロポリタンマーケット。
シアトルの都市型スーパーマーケット。
24時間営業が基本。
エスカレーターを上ると、
シアトルのローカルドラッグストア。
バーテルドラッグ。
メトロポリタンに合わせるかのように、
非常にハイセンスのドラッグストア。
68店を展開している。
1階のメトロポリタンの一丁目一番地。
そして惣菜コーナーがある。
正面にカフェ。
生鮮食品までは買わなくとも、
サンドイッチとコーヒーを買って、
この店のイートインコーナーで食べる。
クッキーも売り物。
左手がデリカテッセン売場。
対面のプリペアードフード。
サービスデリという。
その奥がリカー売場。
そして青果部門に入ってきて、
ここにもう一度、一丁目一番地。
落ち着いていて高級感が漂う。
それは基本に忠実だから実現できる。
壁面の葉物売場も美しい。
1品目ずつの陳列が丁寧であることが、
全体の美しさの条件である。
POPは黒地に白文字。
カットフルーツとカット野菜、
そしてジュースの売場。
シーフードからミートへの対面売場。
シーフード対面売場は、
サーモンがフューチャーされている。
今日は店全体でオレンジ色を強調。
グロサリーの前進立体陳列。
店舗右翼の乳製品売場。
ブレッドとベーカリー。
ブレッドが流通パン、
ベーカリーはインストア製造品。
バルクフードも必須の売場だ。
都市型のメトロポリタン。
納得のインディペンデントだ。
そして郊外のインディペンデント。
ニューシーズンズマーケット。
一丁目一番地は、
デコポンとミカン。
デコポンは「スモウシトラス」。
右手に花売場。
青果部門全体は狭い。
おそらく構成比は業界平均の12%くらい。
壁面のペインティングが楽しい。
狭いけれどきちんと管理している。
円形のドラムを配置して、
独特の売り場づくりをする。
青果部門は、
スーパーマーケットの命だ。
商品力はなくとも、
管理水準を上げれば、
見やすく買いやすい売場が生まれる。
それも独自の強みにすることができる。
青果に続いて酒売場。
ローカル(地産地消)を謳っている。
その奥がチーズ売場。
ワインとチーズは必須の取り合わせ。
奥壁面沿いが乳製品のリーチインケース。
そして精肉からシーフードの対面へ。
この辺りも商品力が足りなくても、
メリハリの利いた売場づくりをすれば、
わかりやすい店となって、
それが特徴となる。
そして左翼はデリカテッセン売場。
真ん中のセルフデリと壁面のサービスデリ。
この左翼と入口のイートインが、
ニューシーズンズの特徴だ。
居心地のいい店、フレンドリーな店。
だからデリとイートインに関して、
快適な環境づくりをする。
チェックスタンドも実にフレンドリーだ。
火曜日は退役軍人の日、
水曜日はシニア(65歳以上)デー。
どちらも10%引きしてくれる。
店頭に掲げられた文章。
「この町で最もフレンドリーな店」
「フレンドリー」を貫徹すれば、
独立自営小売業の強みになる。
しかしニューシーズンズから100mの地点に、
トレーダー・ジョー。
入口の花売場。
カラフルで美しくて、安い。
こちらは美しいというより、
楽しさを前面に出した店。
エンドに青果部門のアボカド。
バナナがトップに来るプロデュース部門。
グロサリーと冷凍食品の店だったが、
最近は青果も充実している。
壁面にはこのエリアのイラストが描かれる。
そしてデモンストレーションコーナー。
必ずいつも新製品を試食させる。
自慢の冷凍食品コーナー。
乳製品売場の冷蔵ケースの上に、
この地域の名物の架け橋の模型。
巨大なロブスターが引っかかっている。
酒売場は25%の構成比。
1本2ドル49セントのチャールズショー。
世界で一番売れているワインだ。
こちらは「クルー・ピックス」
店員をクルーと呼ぶが、
そのクルーが選んだワイン。
マーティンさんの商品。
アリッサさんがピックしたアイテム。
レジはいつもフレンドリー。
レジ前エンドはいずれも迫力満点。
最後にクローガー傘下のQFC。
クォリティ・フード・センター。
クローガーの高級スーパーマーケット。
もともとシアトルのローカルチェーンだった。
それがフレッドマイヤーに買収され、
そのフレッドマイヤーが1999年に、
クローガーと経営統合して、
全米ナンバー1スーパーマーケットとなった。
だからQFCも今や全米一の小売業だ。
花売場は圧倒的な品揃え。
そして青果部門も量と種類で圧倒する。
美しい。
オーガニックは今や、
ホールフーズに肩を並べる。
ニューヨークの「マレー」を買収して、
独自のショップ展開。
コーナーデリは対面の惣菜売場。
その中でボアーズヘッドが超目玉。
ホットフードの対面コーナーが続く。
奥に回り込んで、
シーフードの対面コーナー。
その前面に寿司のコーナー。
重要なコーナーには屋根を設けて、
ショップ形式を強調する。
さらに「シェフズ・エクスプレス」
ミートのプリペードフード。
対面ミートコーナーが最後に控える。
そのあとにワイン売り場があって、
いちばん奥にワインセラー。
アップグレード店舗には、
ワインセラーは必須の設備だ。
エンドには次々に、
「シンプル・トゥルース」のアイテムが出てくる。
クローガーの都市型高級タイプは、
高級なだけではない。
コモディティは、
徹底的に安売りする。
子供を預かる機能も設けている。
クォリティ・ファン・センター。
そしてこの店には、
「スキャン・バッグ・ゴー」が設置されていた。
このハンディスキャナーを持って、
売場を回り、
買物した商品のバーコードを、
自分でスキャンする。
そしてセルフレジで会計すると、
一瞬で終わる。
レジレス店舗とまではいかないが、
レジ待ち時間はなくなる。
クローガーのQFC。
実にいい店だ。
インディペンデントの2店、
そしてトレーダー・ジョー。
さらにQFC。
素晴らしい店ばかりだった。
昨日のセントラルマーケットと、
PCCコミュニティマーケット。
シアトルは独立自営小売業がいい。
巨大チェーンのクローガー、
アルバートソン&セーフウェイ、
そしてコストコ。
マーケットリーダーと、
マーケットチャレンジャー、
マーケットフォロワー。
そこにマーケットニッチャーズ。
シアトル市民は幸せだ。
マーケットニッチャーがいるから、
豊かなで個性的な生活を送ることができるのだ。
(つづきます)
〈結城義晴〉