「消える車内販売」とカリスマ販売員・茂木久美子の「4つの秘訣」
日本を代表する名城の一つ。
彦根城。
天守閣が国宝指定されている。
それは日本に五城。
姫路城、松江城、松本城、犬山城。
そして彦根城。
この彦根城は、
滋賀県民の誇り。
その滋賀県民は、
4大新聞の讀賣、朝日の次に、
地方紙の京都新聞を読む。
かつては滋賀新聞などもあったが、
休刊・廃刊している。
だから京都新聞には、
「滋賀ニュース」のカテゴリーがある。
こうして見ると新聞の世界も、
ナショナルチェーンが複占し、
リージョナルチェーンが残っている。
あくまでも新聞の世界だが、
ローカルチェーンは消えた。
その京都新聞巻頭コラム「梵語」。
今日のタイトルは、
「消える車内販売」
「新幹線や特急の車内販売は、
スーパーで買うより割高だ。
だから、価格以上の
プラスアルファを提供したい」
山形新幹線の「カリスマ販売員」。
茂木久美子さん。
その著書に記されている。
「コーヒーを買ってもらったら
“入れたてですよ”と一言を添える」
「ありがとうございますの後に
“また来ますね”と言う」
「ちょっとした言葉遣いで、
乗客に声をかけてもらえる頻度は
大きく変わる」
私も2009年5月7日、
このブログで書いている。
「JRカリスマ車内販売員」
茂木久美子さんの4つの秘訣
第一に、
商機を増やす。
当時の話だが、
山形・東京の片道で通常は3、4往復。
茂木さんは片道3時間で7往復。
現代風に言い換えると、
「オムニチャネル化」である。
第二、
スピードアップ。
顧客1人あたりの時間を最小限にする。
スピードアップのための秘訣。
お釣りを素早く渡す。
右ポケットには100円玉と500円玉。
左のポケットには10円玉と50円玉。
顧客の手の動きをみて、
どんなお金を出すかを読み取って、
「間髪入れず釣りを渡す」。
現在はスイカなどで払ってしまう。
さらにキャッシュレス化が進めば、
これらは必要がなくなるが。
それでもスピードアップは鉄則だ。
第三は、
マーケティング。
1回目に車両を1往復した時点で、
客層を見極める。
そして売り込み商品を決める。
「今日は年配客やグループ客が多い。
年配のお客様には、
幕の内弁当が人気なのです」
「乗客の顔やしぐさを記憶して
タイミングよく声をかける」
「車内のようすが把握できるよう
ワゴンを後ろ向きに引く」
茂木さんはマーケティングして、
今日の客層と売れ筋を把握する。
そして第四に、
ホスピタリティ。
「お砂糖とミルク、いんだっけか」
コーヒーを買ってくれた年配の顧客には、
山形弁。
顧客に応じて、
自然に言葉も使い分ける。
その茂木さんも、
販売員として壁にぶつかった。
そのときの上司の言葉。
「買ってあげたいと
思われる人になればいい」
自分にしかできないホスピタリティ。
これこそ販売員としての、
ポジショニングである。
今日の梵語のコラムは、
JRダイヤ改正を話題にする。
新幹線や在来線特急の多くで、
車内販売が大幅に縮小される。
理由は第1に利用者減少、
第2に販売員の人手不足。
茂木さんは現在、
年間200回を超える講演をこなす、
コンサルタント。
その茂木さんの言葉。
「乗車率が低くても
お客さんにじっくり対応すれば
“売上げはさほど下がらない”」
コラムの結論。
「利益を出すのが難しい時代、
コスト削減は大切だ。
だが、現場の工夫や乗客の期待まで
削ることになっては得策とはいえまい」
「車内販売に限らないが」
同感だ。
客数減、人手不足。
だからコスト削減。
しかし、
現場の工夫と顧客の期待まで、
削ってはいけない。
客数が少なくても、
お客さんにじっくり対応すれば
“売上げはさほど下がらない”
彦根からの帰り道で、
改めてそんなことを思った。
考え終わって、
疲れきって、
ずっと寝ていた。
だから車内販売には、
まったく気づかなかった。
〈結城義晴〉