[随想]平成最後の桜に思う――「閉める店残るお店も閉める店」
あっという間に桜は散る。
雑誌づくりなどしているうちに。
その意味で万葉の時代から、
桜のスピード感は、
現代的かもしれない。
横浜商人舎オフィスのそばの新田間川。
桜の名所の一つだったが、
横浜駅に近いこともあって、
ずいぶん切り取られた。
その新田間川そばのファミリーマート。
閉鎖してしまった。
商人舎から一番近くて、
重宝していたのに。
閉店といえば、ダイエー横浜駅西口店。
2月11日をもって完全閉店した。
1968年、サンコー横浜西口店として開業。
神奈川県のスーパーマーケット。
マルエツに吸収合併されて、
ダイエーグループとなった。
そんなこともあって、
72年4月に総合スーパーとして新装開店。
ダイエー横浜ショッパーズプラザ。
私はこのダイエーから、
15分ほどのところで育った。
だから私の肉体は、
ダイエーによってつくられている。
店の上階の団地は、
ダイエーの社員住宅で、
金田正裕さんなど、
当時のバイヤーが居住していた。
今年4月から解体工事が行われる。
そして2023年に完成して、
イオンスタイルに変わる。
一方、横浜駅の地階には、
Food & Time Isetan YOKOHAMA。
こちらは昨年3月20日にリニューアル。
高質スーパーマーケットから、
グロサラントへの転換。
ずいぶんよくなった。
新しいトレンドを捉えることも、
こういった大都市の中心部では有効だ。
何しろ横浜駅の乗降客数は、
1位・新宿、2位・池袋、3位・東京に次いで、
日本第4位である。
その中でいつも行列の店。
ご覧のように若い女性が中心。
ゴンチャ横浜西口店。
台湾茶とタピオカ(パール)のセットなど、
大人気のメニューを誇る。
2006年に台湾でスタートして、
現在、世界で約1400店の展開。
絶好調だが、この店も、
永遠に繁盛するわけではない。
その横浜駅からバスに乗って10分。
三ッ沢公園は桜の名所。
満開の桜の下に来ると、
長い歴史の中で、
人々がこれを愛でたのだと実感する。
奈良時代の万葉集では、
一番の歌人が柿本人麻呂。
その人麻呂の桜の歌。
櫻花 開哉散 及見 誰此 所見散行
桜花咲きかも散ると見るまでに
誰れかもここに見えて散り行く
桜の花が咲いて散るのを見るように、
ここに集い、散り行く人々は、
誰なのだろうか。
現代日本人の花見。
若いグループ。
しかし、もう散っている。
江戸時代の俳人、小林一茶。
桜花何が不足でちりいそぐ
同感。
夕暮れが迫ってきたが、
桜の下のそれもいい。
松尾芭蕉。
さまざまの事おもひ出す櫻かな
こちらにも同感。
そして良寛。
散る桜残る桜も散る桜
良寛は論理的だ。
桜だけでなく、店も同じ。
閉める店残るお店も閉める店
〈結城義晴〉