結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2019年04月13日(土曜日)

「四月、戸惑う」ときの「人間らしく生き、考えること」

「四月よ、四月はいったい
自分でどうしたらよいのか
分からないでいるのだ」

ドイツの童謡だそうだ。

先週水曜日4月10日の読売新聞、
巻頭コラムは「編集手帳」。

故倉嶋厚さんのエッセイから引用。
倉嶋さんはお天気博士で、
エッセイは「戸惑う四月」。

天候の変動が目まぐるしくて、
「人の心と体も、
どうしたらよいのか分からなくなる」

今日の土曜日は暖かかった。
しかし今週の東京・横浜の天気は、
「寒の戻り」そのものだった。

1日おきに日が射したり雨が降ったり、
雪までちらついたり。

一月、往ぬる、
二月、逃げる、
三月、去る。

そして、
四月、戸惑う。

四月は頭韻を踏んではいないけれど。

人々が戸惑う時こそ、
商売の出番がやってくる。

だから4月は商売の月である。
しかもその4月の終わりから、
5月の上旬にかけて、
初めて体験する10連休。

状況が変わる。
環境が変わる。

それを「転変」と表現してみた。
「転変時代」である。

ピーター・ドラッカーの考え方。
「事業の定義の三つの要素」
このブログでも何度も書いてきた。

第一は、組織を取り巻く環境である。
第二は、組織の使命すなわち目的である
第三は、使命を達成するために必要な
強みについての前提である。
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つまり、
⑴「環境」
⑵「使命」
⑶「強み」

それが企業や事業、そして仕事をつくる。

この⑴の「環境」が変わるとき、
事業の定義も変わらねばならない。

いま、その節目にある。

外山滋比古さんの名著『思考の整理学』
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今月の万代知識商人大学でも紹介した。
イオンの教育ツールの冊子でも、
イオンピープルへのお薦め書籍として、
私は『思考の整理学』をあげた。

もちろんドラッカーの著書や、
私自身の本も推薦させてもらったが。

この外山さんの本では、
一番最後の章「Ⅴ」の、
一番最後の「節」が、
「コンピューター」
初版は1986年4月24日。
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「これまでの知的活動の中心は、
記憶と再生にあった」

「それでは、
グライダー人間が多くなるのも
当然である」

外山さんは学校を、
「グライダー訓練所」と称する。

小売業もチェーンストアも、
「記憶と再生」の教育を施した。
「グライダー訓練所」であった。

しかし、
「記憶と再生の人間的価値が、
ゆらぎ始めた」

「コンピュータという機械が
出現したからである」

再び示すがこの本が書かれたのは、
1986年以前である。

それからもう33年が経過する。

外山さんのこの本は、
「知ること、よりも、
考えることに、重点をおいている」

知る活動の中には、
“機械的”側面が大きい。
それだけ、知る活動は、
“人間的”性格に問題をはらむ。

「人間が、真に、
人間らしくあるためには、
機械の手の出ない、
あるいは出しにくいことが
できるようでなくてはならない」

月刊商人舎の昨2018年1月号。
特集は、
「2018真の人間産業へ」
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私は提案した。
「人間の、
人間のための、
人間による産業」

もちろんエイブラハム・リンカーンから。
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外山滋比古さんの「人間らしくあること」。
「創造性こそ、
その最も大きなものである」

「本当の人間を育てる
教育ということ自体が、
創造的である」

同感だ。

「セールスや商売も
コンピュータでできないところが多い。
その要素が多ければ多いほど、
創造的であるとしてよい」

そう、「四月、戸惑う」の4月。
そして「転変時代」の今こそ、
創造的な人間らしい仕事ができる。

スーパーマーケットも、
総合スーパーも、
コンビニエンスストアも、
ドラッグストアも。

現状は「漸変消費」に苦しめられているが、
創造的な人間らしい仕事がある。
その意味で21世紀産業である。

外山滋比古さん。
「人間らしく生きていくことは、
人間にしかできない、という点で、
優れて創造的、独創的である」

「コンピューターがあらわれて、
これからの人間は、
どう変化していくであろうか。
それを洞察するのは
人間でなくてはできない。
これこそまさに創造的思考である」

創造的に考える。
それが人間らしさそのものである。

みたび繰り返すが、
この本は1986年の初刷である。

すごい洞察力であって、
これこそ創造力の賜物である。

もちろんコンピューターも、
AI(人工頭脳)へと進化して、
ディープラーニングという、
人間のような思考法を獲得した。

だからこそ私たちは、
「人間らしいこと」を考え続けねばならない。
それこそ人間の「創造性」だからである。

その意味でまず、
人間らしくないことは、
厳しく否定されねばならない。
人間として恥ずべきことは、
正しく指弾されねばならない。

最後に2018年1月のMessageを再び。

人の強みを発揮させよ。

人間の、
人間による、
人間のための産業。
それが小売流通サービス業だ。

平成の年号が変わろうと、
東京オリンピックが開かれようと、
それが人間産業であることは、
永遠に変わるものではない。

AIが仕事を変えようと、
IoTが広がろうと、
ビッグデータが活用されようと、
ロボットが現場に導入されようと。

人間の、
人間による、
人間のための産業。
それは変わらない。

しかし、好況が続けば続くほど、
失業率が低下すればするほど、
その人間産業に人間が集まらない。
ハイテク産業やIT産業に取られてしまう。

だから主婦を戦力化する。
高齢者の雇用を延長する。
外国人研修生を雇い入れる。
派遣労働者を確保する。

もちろんそれには深い意義がある。
ダイバーシティ経営へのシフトは、
21世紀人間産業の必然の軌道であるし、
未来を切り開く可能性を意味している。

そしてこのとき、
一人ひとりの人の強みが発揮される、
風土と文化と仕組みが、
用意されねばならない。

人間の、
人間による、
人間のための産業の、
人間一人ひとりの強み。

Human Industry SHIFTこそ、
好況のときに人間が集まる、
真の人間産業の、
望ましい未来図である。

〈結城義晴〉


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