令和元年初日に思う「二つ目の大事な日」
令和の新天皇の即位は、
2019年5月1日午前零時。
もちろん令和元年である。
今上天皇となった浩宮さまは、
実はもう59歳。
1960年の昭和35年生まれ。
一つ年上に、山口百恵さん。
一つ年下に、バラク・オバマ前米国大統領。
いずれも引退している。
今上天皇は、いわば高齢でのご就任。
奈良時代の光仁天皇が60歳で即位して、
それに次いで2番目の高齢。
皇后に即位した雅子さまは、
1963年生まれの55歳。
お二人とも健康に留意して、
平成天皇ご夫妻と同様に30年間は、
新しい象徴天皇をつくり上げることに、
力を合わせて精進してほしい。
つまり89歳、あるいは、
切りのいいところで90歳まで現役。
僭越ながら、「頑張れ!」
「ほぼ日刊イトイ新聞」の糸井重里。
「平成は一気に遠くなりにけり」
同感だ。
4月1日に新元号発表の山場があった。
平成の出来事を振り返ったり、
天皇皇后両陛下の歩みをたどったり、
「いよいよその時が来るという
準備にそわそわしていた」
「ぼくらもだんだんと、
大晦日からの年越しみたいな
心持ちになりはじめた」
除夜の鐘が鳴るわけでもないし、
紅白歌合戦があるわけでもないのに。
そしてあちこちで、
“カウントダウン”があった。
「で、12時を過ぎたら、
なんだか普通の時間になっていた」
「お祝いの夜中を
たのしみにしていたのだけれど、
あらま、
そういうものではなかったのね」
そう、一気に普通の生活に戻った。
それでも糸井重里。
「ぼくは”王様”を好きでいられることを
幸せに思う」
これにも同感。
スーパーマーケットの店頭でも、
「おめでとう 令和」
コンビニの棚には「令和」商品が並んだ。
酒売場にも「慶祝 令和」
大吟醸の「令和」ブランド。
小売業や消費産業は大いにやるべし。
しかしこれも普通の生活に戻る。
マーケットはクールだ。
拝察するに、その一方で、
新天皇皇后両陛下の重い日々は続く。
安倍晋三首相は今年2月23日に、
通算在職日数が2617日となって、
吉田茂元首相を抜いた。
吉田は麻生太郎副総理の祖父だ。
そして戦後単独2位の長さとなった。
歴代では現在4番めの長期政権。
さらに今年6月7日には、
伊藤博文を超えて歴代3位、
8月24日には佐藤栄作を抜いて歴代2位。
佐藤元首相は安倍晋三の大叔父にあたる。
そのうえ今年11月20日には、
桂太郎を上回って、
史上最長の内閣総理大臣の任期となる。
順調ならば2021年9月まで、
記録を更新し続ける。
それでも10年に満たない。
平成天皇はその3倍、
今上天皇もそれを目指す。
吉田茂は、
戦後日本の実質的な独立を勝ち取った。
日本初代首相の伊藤博文は、
大日本帝国をつくり上げた。
佐藤栄作は沖縄返還に力を注ぎ、
ノーベル平和賞を受賞した。
そして桂太郎は、
日露戦争を勝利に導いた。
安倍晋三は何をやれるのか。
何を残すのか。
それこそが問われる。
長いだけではいけない。
昭和天皇は64年、
平成天皇は30年、
それを目指す今上天皇。
天皇礼賛をするつもりはないが、
「頑張れ!」と応援したくなる。
ヨーロッパをリードするのが、
イギリスとフランス。
しかしイギリス人とフランス人。
ひどく仲が悪い。
1337年から1453年にわたって、
隣国同士で「百年戦争」を戦ったほどだ。
イギリスの「ユーモア」、
フランスの「エスプリ」。
対照的だ。
そのフランス人が、
ひとつだけイギリス人に対して、
うらやましいと思うことがある。
それは「王」の存在だ。
イギリスは1688年の名誉革命で、
王室を残した。
だからいまでもエリザベス女王が健在だ。
現エリザベス2世は、
なんと1952年に即位して、
67年間も在位する。
一方、フランスはフランス革命で、
1793年にルイ16世をギロチン台に送り、
王室制度を廃止した。
そのことをフランス人は悔やむ。
いま私も、
イギリス人や糸井重里と同じ心境。
フランス人やアメリカ人は、
そして中国人や韓国人も、
心の底でイギリス人や日本人を、
うらやましがっている。
「王様を好きでいられることを
幸せに思う」
最後にマーク・トウェインの言葉。
「人生で一番大事な日が
二日ある。
生まれた日と、
なぜ生まれたかが
わかった日である」
今上天皇は今日、
二つ目の大事な日を、
深く自覚された違いない。
〈結城義晴〉