結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2019年05月10日(金曜日)

ラスベガス3日目の講義と視察店舗のポジショニング格差

月刊商人舎5月号、本日発刊!!201905_coverpage
特集は、
「ラストワンマイル」の優勝劣敗
「ネットスーパー」と「宅配ビジネス」の勝者総取り!?

[CoverMessage]
令和元年に突入した。「店は客のためにある」。この商売のテーゼは「永久に不滅です」。それどころか、顧客に商品やサービスを届ける最後のプロセスこそが、令和時代にはますます決定的な差異になる。

それが早いこと。
それが安いこと。
それが心地よいこと。

英語で言えば「ラストワンマイル」の攻防がさらに激しくなり、「ラストワンマイル」の優劣こそが問われることになる。スーパーマーケットやチェーンストアのリアル店舗の世界では、スマートフォンによって注文を受けて顧客に届ける「ネットスーパー」機能や宅配サービスが当たり前のこととなる。
日本にとって「すでに起こった未来」であるアメリカ流通産業はいま、「ラストワンマイル」競争に明け暮れる。
しかし平成が終わった今、日本のネットスーパーのほとんどが相変わらず利益を出していない。ニーズはある。けれど利益は出ない。これまで何度も、私たちの前に立ちはだかった現象。それはイノベーションの苗床である。「ラストワンマイル」の先進事例を取り上げ、その優勝劣敗を見極め、ネットスーパーと宅配ビジネスの近未来を透視しよう――。
恐ろしいことにこの世界は、勝者総取りとなるのである。201905_contents
ご愛読願いたい。

さてラスベガスに来て3日目。

今日も朝から会議室でセミナー。
司会は亀谷しづえ。
商人舎ゼネラルマネジャー。
DSCN84349

初めに事務局から、
今夜の調理大会・大試食会の説明。
DSCN8438-1

4つのチームに分かれて、
メニューづくりを競い合う。

アメリカの一消費者になった気持ちで、
買物体験をしつつ、
購入した食材を調理する。

調理のために購買しつつ、
店を見ると全く違って見える。
それが何よりも大事だ。

研修の合間の楽しいイベント。
団員たちも意欲満々だ。

その後、成田空港での講義から数えると、
3回目となる結城義晴のセミナー。
DSCN8454-1

昨日訪問した企業と店舗を、
それぞれの資料を見ながら解説する。DSCN8441-1

それから384ページのテキストをもとに、
店舗戦略、商品戦略を一気に語る。DSCN8468-1

フォーマット戦略やコモディティ戦略。
ベーシック編なのでできるだけ丁寧に。

難しいことを易しく、
易しいことを面白く、
面白いことをより深く。

それが結城義晴の講義だ。DSCN84809
明日の朝、理解度テストを行う。
その範囲を網羅しなければならないので、
今日の講義は広範囲にわたる。

しかしそれがまた、
アメリカの小売業の全体像を、
描き出すことになる。

講義のあとはすぐに視察。

3日目の最初の訪問店は、
ターゲット。

全米第2位のディスカウントストア企業で、
ウォルマートと同じ商売を展開する。

年商744億3300万ドル。
いつものように100換算ならば、
7兆4433億円。
日本のランキングに入れたら第2位に入る。
アメリカでは第8位のチェーンストア。IMG_6593-1

天井を張って、全体に明るい照明の売場。
入口はマザーズ・デーのプロモーション。IMG_6588-1

ターゲットは、アパレルが強い。
マネキン使いもうまい。

ウォルマートはフードラインと、
ハードラインが強い。
対極にある。

この店舗入口のマネキンは、
ふっくらした体形で、
妙にリアル感がある。IMG_6585-1

非食品ディスカウントストアなので、
「マーケット」と呼ぶ食品売場は、
限定的な品揃えだ。DSCN8487-1

今日も早速、商品調査に入る団員たち。IMG_6579-1

ターゲットもネット販売を強化する。
入口を入ったところに
ピックアップサービスのカウンター。
IMG_6587-1

ウォルマートは、
ブルーを基調としている。
対してターゲットは赤。
誰が見ても、その違いがわかる。

一方、ウォルマートの、
ネイバーフッド・マーケット。
ブランドカラーは薄い緑。IMG_6618-1

ウォルマートの総合スーパー、
「スーパーセンター」は、
米国内で飽和を迎えている。
したがって、
この食品スーパーマーケットが、
戦略業態になっている。

2019年1月段階でサムズの店数を超えて、
698店舗まで拡がった。IMG_6606-1

生鮮食品の鮮度はより高くなり、
プレゼンテーションもよくなっている。
店内も格段に明るくなった。IMG_6607-1

奥主通路ではデアリー商品を、
リーチインで展開する。
IMG_6608-1

広いリーチインの冷凍食品売場。
ここでも商品調査。IMG_6595-1

ノンフード担当チームも、
売場で討論しながら調査する。DSCN8504-1

ネット注文品のピックアップコーナー。
ブルーのコンテナがずらりと並ぶ。
IMG_6616-1

次いで、
トレーダー・ジョー。
昨日、商品調査が済んでいるので、
ここでは主に調理大会用食材を購入。IMG_6642-1

生鮮食品もアウトパックされて、
店頭では陳列するだけ。IMG_6649-1

よく管理された売場。
「フィアレスフライヤー」は、
月一回発行のチラシ的小冊子。
その掲載商品をエンドで訴求する。IMG_6644-1

ワインは創業当時から、
中核カテゴリーとして強化されている。IMG_6645-1

トレーダー・ジョーと、
同じショッピングセンターにあるのが、
シーフード・シティ。IMG_6623-1

オーナーは中国人で、
フィリピン人向けのスーパーマーケット。
アジアンフードを中心に展開する。IMG_6624-1

対面形式のミート売場。IMG_6630-1

同じく対面販売のシーフード。
従業員はほとんどがフィリピン人。IMG_6636-1

イートインスペースも広めだ。IMG_6638-1

さらに食材購入のために
ホールフーズを訪問。DSCN8558-1

「ザ・ディストリクト」SCのこの店は、
何度も改装が施されている。IMG_6652-1

ホールボディの非食品売場は
什器が低く抑えられ、
回遊性も増した。
IMG_6653-1

調理大会のためのシーフードは、
ほとんどのチームがここで購買した。
IMG_6655-1
初めてアメリカに来た団員たちにも、
ホールフーズの商品への関心が高い。

コンパクトになったデリ売場。IMG_6668-1

買物中は皆、実にうれしそうだ。
DSCN8542-1

一消費者の立場になって商品を見ると、
視察だけではわからないことが、
はっきりと見えてくる。
それが調理大会の目的でもある。DSCN8524.-1JPG

どんな料理をつくるのか。
食材を見ながらメニューを考える。DSCN8528-1

「サラダは基本でしょ」と、
オーガニックのサラダ野菜を選ぶ。DSCN8538-1

そして会計。
DSCN8545-1

1人30ドルで5人で150ドル。
結構なディナーメニューができそうだ。DSCN8553-1

今日の最後は、
スーパーマーケットの2強対決。
道路を挟んで、
アルバートソン傘下のボンズと、
クローガー系のスミス。

そのボンズ。
もともとは、
南カリフォルニアのローカルチェーン。
それがセーフウェイに買収され、
現在はアルバートソンに合併されて、
アルバートソン傘下。
IMG_6682-1

セーフウェイは花売場が強い。
この店もバルーンを使って、
華やかに展開する。
IMG_6680-1

シックな床面とスポット照明の青果部門。
PBの「Oオーガニック」を主力で展開する。IMG_6671-1

ミート売場のマザーズ・デーの仕掛け。
ヨガをする母親の風船が浮かんでいる。IMG_6669-1

対面のシーフード売場。
残念ながらコンベンショナル型の店舗で、
お客は少ない。
IMG_6672-1

アルバートソン&セーフウェイは、
合併で規模を拡大したが、
そのメリットはほとんどない。

最後に、スミス。

「グレイザーズ」という単独店が廃業し、
その後に居抜き出店した店舗だ。
DSCN8589-1
グレイザーズは、
ラスベガスの1店舗だけの企業だった。
オーナーのグレイザーさんは、
東海岸でチェーン経営をしていた。
引退してラスベガスにやってきて、
趣味的に経営し始めたのがこの店だ。

しかし高齢となって引退し、
その店にスミスが入った。

入口にスキャン・バッグ・ゴーの端末。
お客自身がこの端末で、
バーコードをスキャンしながら買物して、
最後に、レジで一括カード決済する。IMG_6712-1

入口を入ると花売場。
この見事なプレゼンテーション。
迫力がある。
IMG_6714-1

「ホーム・シェフ」とネーミングされた、
独自のキットメニュー。
ホールフーズも最近強化しているが、
スミスも一丁目一番地で展開している。IMG_67309

青果部門も広くて豊富だ。
ウェグマンズの市場スタイルに似てきた。IMG_6710-1

青果部門の向かいに、
ショップ形式でバルク売場が作られた。
IMG_67279

壁で隔てられた左翼のデリゾーン。
広さを有効に活用した、
気持ちのいい売場だ。
基本構造はグレイザーズそのもの。IMG_6729-1

「ボアーズ・ヘッド」の大きな看板。
この大きさのものは初めて見た。IMG_6688-1

チーズショップのマレーズ。
クローガーが買収した、
ニューヨークのブランド。IMG_6689-1

店舗奥壁面の長大な売場。
クローガーの定番だが、
精肉、乳製品などが多段ケースで連なる。IMG_66919

ゴンドラアイルには、
グロサリーが圧倒的な商品構成で並ぶ。

ビューティー用品も、
グレイザーズ時代より魅力的だ。IMG_67009

この広大な売場に、
これでもかと商品展開される。
クローガーの実力が発揮されている。IMG_67029

牛乳は1ガロン2.69ドル。
ウォルマートに対抗する価格だ。IMG_67019

エンドでは代表的なPBが紹介されている。
エコノミーブランドのクローガー。
ライフスタイルブランドは、
シンプル・トゥルース、
クォリティブランドは、
Private Selection。IMG_67089

そして最後はファーマシー。
クローガー系の会社は、
必ずフード&ドラッグである。DSCN8587-1

ここまで差がつくかと思わせるような、
食品小売業2強の戦いだ。
ボンズはガラガラ、スミスは大繁盛。

かつての「業態」のまま進化のない店。
新しいフォーマットへと展開した店。

圧倒的な格差を、
米国食品小売業の2強が演じてくれた。

これもマーケットリーダーと、
マーケットフォロワーの、
格差によるものだ。

そしてこれは同時に、
ポジショニング戦略の有無による、
決定的な格差をも示している。
(つづきます)

〈結城義晴〉


コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>

post date*

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)

「月刊商人舎」購読者専用サイト
月刊商人舎 今月号
商人舎 流通スーパーニュース
月刊商人舎magazine Facebook

ウレコン

今月の標語
商人舎インフォメーション
商人舎スペシャルメンバー
商人舎発起人

東北関東大震災へのメッセージ

ミドルマネジメント研修会
商人舎ミドルマネジメント研修会
海外視察研修会
商人舎の新刊
チェーンストア産業ビジョン

結城義晴・著


コロナは時間を早める

結城義晴・著


流通RE戦略―EC時代の店舗と売場を科学する

鈴木哲男・著

結城義晴の著書の紹介

新装版 出来‼︎

新装版 店長のためのやさしい《ドラッカー講座》

新装版 店長のためのやさしい《ドラッカー講座》
(イーストプレス刊)

新着ブログ
毎日更新宣言カレンダー
指定月の記事を読む
毎日更新宣言カテゴリー
毎日更新宣言最新記事
毎日更新宣言最新コメント
知識商人のためのリンク集

掲載の記事・写真・動画等の無断転載を禁じます。商人舎サイトについて
Copyright © 2008- Shoninsha Co., Ltd. All rights reserved.