「食育月間」の「弁当の日」と「いいもんをやすく」
Everybody! Good Monday!
[2019vol22]
2019年第23週。
今年22回目の月曜日。
ご挨拶は、
Good Monday!
梅雨入り直前の6月。
さわやかな季節。
今月は「食育月間」だ。
毎日新聞巻頭コラム。
「余禄」
「食べ物の恨みは怖い、とよく言うのは、
人の記憶に強く残るものだからに違いない」
「味だけでなく、見た目も大事」
そこで「弁当の日」
全国に広がっている。
2001年、香川県綾川町立滝宮小学校で、
当時の竹下和男校長が始めた。
子どもたちが手づくりの弁当を持参する。
献立づくりや買物も親に頼らない。
生産者や親への感謝の気持ちが生まれる。
弁当も食育に役立つ。
しかし仕事を持つ親が、
毎朝弁当をつくるのは本当に大変だ。
家計の事情で「弁当格差」も生まれる。
「給食の方がいい」「楽だ」という親は多い。
脚本家の向田邦子さんのエッセイ。
戦前の学校の「弁当の時間」の話。
「”おなかが痛い””忘れた”と言って
教室を出て行く同級生がいた。
砂場で遊んだり、
ボールを蹴ったりしていた。
周りの子も先生も、
自分の弁当を分けてあげようとはしない」
向田さん。
「薄情のようだが、今にして思えば、
やはり正しかったような気がする」
「自分に置き換えれば、
人に同情されて
肩身が狭い気持ちになるよりはいいのだ」
「今も昔も、子供のころの弁当には、
どこか切なさがつきまとう」
同感だ。
私が小学校のころにも、
同じようなことがあって、
貧しい家の友だちが、
弁当を持ってこなかった。
弁当の時間に、
ひとり、校庭の隅で、
水道の蛇口から水を飲んでいた。
この食育月間に、
全国の食品小売業は、
そんなことに貢献できないか。
日経新聞の「社説」。
「流通は事業モデルの転換を」
「個人消費が悪化の兆しを見せている。
人口減、少子高齢化などに加え、
10月の消費増税をにらみ
消費者が早くも節約に動いているからだ」
「国内市場が先細りする中、
流通企業は販売量を競う経営から、
消費者の購買意欲を促す事業モデルに
転換することが急務だ」
私がよく使う表現では、
「レース型競争から、
コンテスト型競争へ」
もともとは、
コンサルタントの宮崎文明さんの言葉。
嶋口充輝慶応義塾大学名誉教授は、
「戦争型競争」と「恋愛型競争」という。
レース型・コンテスト型のほうがいい。
社説には経営者のコメントが二つ。
ライフコーポレーション岩崎高治社長。
「2018年末から、
消費者の購買意欲は冷え込んでいる」
私との対談でも、
このことを言っていた。
しまむらの北島常好社長。
「節約志向どころか、
安くても買わない消費者が増えている」
社説。
「目先の増税や景気動向に
一喜一憂するようでは成長は難しい」
「流通企業は
店舗とデジタル技術を組み合わせた経営を
磨くことで活路が見いだせる」
例として、ウォルマート。
「米アマゾン・ドット・コムに対抗し、
車から降りなくても
ネットで注文した生鮮品を
持ち帰れるサービスを導入、
再び成長力を高めている」
ドライブスルー方式のPick Up Here。
しかし、まだまだ活用頻度は少ない。
もちろん、ウォルマート・コムは、
前年比で4割伸びているが。
国内ではニトリホールディングス。
「店で実物を見たうえで、
自宅に帰った後に
スマートフォンで買えるサービスを導入。
好業績につなげている」
これはアメリカではほとんど全企業が、
当たり前のサービスとして展開中。
社説。
「買いやすさの追求とともに
消費者の悩みを解決する工夫も欠かせない」
「日常生活を支えてきたスーパーも
いつでもどこでもモノが買える今、
主力の食品を安く売るだけでは限界だ」
しかしコモディティグッズは、
安く売らねばならない。
どんなに貧しい家のこどもでも、
普通に弁当を持ってこられるように、
スーパーマーケットは貢献すべきだ。
アメリカのウォルマートやアルディ、
ウィンコやコストコは、
それを可能にしている。
岩崎さんが言うように、
「購買意欲は冷え込んでいる」
10月の消費増税を控えて、
価格意識は高まるばかりだ。
それでも食品や消耗雑貨の必需品は、
買わねば生活できない。
だから安くなければいけない。
「値段下げずに売る商売」と、
月刊商人舎4月号。
コモディティは初めから安く売って、
値段を下げない。
しかし北島さんが言うように、
「節約どころか、安くても買わない」
これも正しい。
アパレルのような嗜好品や、
ノンコモディティグッズは、
気に入らなければ安くても買わない。
これは深刻だ。
だから総合スーパーの衣料品は売れない。
しまむらまでアパレルが伸びない。
ノンコモディティは、
開発努力をするしかない。
そしてそれらは、
必ずしも安く売る必要はない。
社説。
「例えば北関東を地盤とするカスミ。
18年3月から、ヘルスサポートという
無料サービスを展開。
来店客数の増加を促し、
売り上げ拡大につなげるためだ」
ヘルスサポートによって結果として、
来店客数が増加するかもしれない。
しかしカスミはそれを、
売上げ拡大のために行っているのでは、
断じて、ない。
自分の店のカスタマーの、
健康をサポートする。
真にそのためにやっているのだ。
「店内の空いた場所を利用し、月に1~2回、
買い物客の健康アドバイスを手がけている」
「血圧や脳年齢を調べ、
食べ方や健康状態に応じた食品を
紹介している」
社説の結論。
「少子高齢化が進むと
全体的に購買力は低下する一方、
健康ニーズは高まる。
サービス業としての小売業に転身し、
高齢化をチャンスにする戦略が重要だ」
これは業態からフォーマットへの転換。
しかし、ん~。
社説としては、
物足りない。
せっかくの日経新聞の社説。
「流通業」と呼ぶ小売業経営者たちが、
「よし、やるぞ!」と燃えるような、
店長やバイヤーが、
「頑張ろう!!」と奮い立つような、
そんな提言を期待したい。
それにしても、
どんな子どもも、
当たり前に、
安くておいしい弁当をもって、
学校に来られる。
そんな社会にしたいものだ。
そのことに小売業が貢献したいものだ。
では、みなさん、
いいもんを、やすく。
Good Monday!
〈結城義晴〉