ミラノの自然農法農園訪問と大聖堂ドォーモ見学
今号の目玉の一つは[放談鼎談]
日本流通業のDNAとRNA
チェーンストア産業の過去・現在・未来を激論する
日本のチェーンストアの歴史を振り返りながらそのDNAを探り、日本小売業をけん引してきた総合スーパーの課題と今後について、そのRNAを語り合った。ユニー㈱出身でコンサルタントの高木和成氏と㈱長崎屋出身でジャーナリストとして活躍している和田光誉氏、そして㈱商人舎社長の結城義晴が鼎談した。長崎屋は2008年9月に、ユニーは2019年1月に、ドン・キホーテ(現社名は㈱パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス)の完全子会社になった。このお二人の話はときに辛辣で、ときにユーモラスで、最後にはドン・キホーテの本質に迫って、3時間近くに及んだ。もちろん掲載できない話も多々あった――。
読んでみてください。
ただし会員以外の人は読めません。
悪しからず。
さて、ミラノ視察は3日目。
朝から高速道路を130キロで走る。
25キロほどで料金所に到着。
北イタリアの農村地帯を行くと、
目的の建物が見えてきた。
イタリアらしい建物。
農業の繁忙期には、
多くの人を雇う。
その宿泊施設だった。
ここが農家の母屋。
昨日から長い夏休みに入って、
子どもたちが遊んでいる。
そしていわばオフィス棟。
「カッシーナ・サンタブレラ」
農場の看板がかかっている。
まずオーナーが自ら、
考え方を丁寧に説明してくれた。
20年前にこの農場を始めた動機は、
日本人の本を読んで、
感銘を受けたことにある。
福岡正信さん、故人。
福岡さんは1913年2月2日生まれ、
2008年8月16日没。
愛媛県伊予市の自然農法の提唱者。
それをオーストラリア人の、
ビル・モリソンが展開し、
「パーマカルチャー」と称する。
この農場はそれを実践する。
動物を植物を一緒に育てる農法。
オーガニック農法でもあるが、
むしろ純粋な自然農法だ。
その自然の中に入ってみる。
果物も自然農法。
農道を歩きながら説明してくれる。
北イタリアの空。
すぐに畑が見えてくる。
麦畑にはシナモンが植えられている。
家畜も自然の循環環境の中で放牧する。
遠くに見えるのは牛。
この地方にしかいない畜種の牛だ。
ボルゼーエゼッシュ種。
さらに豚も飼育する。
泥んこの豚は自由に農場の中で生きる。
馬もロバもいる。
馬ももちろん放牧。
そしてニワトリ。
この8棟の小屋の中で、
鶏たちが生活している。
約1000羽が自然飼育されている。
鶏は家族を形成するそうだ。
その家族の単位が120羽。
120を超えるとうまくいかない。
その120羽の家族が1棟に住む。
そして健康で滋養豊かな卵を産む。
農場も福岡さんの考え方をもとに、
運営されている。
それは「引き算の農法」
従来の農業は、
何かをつけ加えることばかりやってきた。
もちろん農薬はなぜ使うのか、
剪定はなぜ行うのか。
さまざまな施設がある。
森の木を燃やして、
エネルギーを得る。
自然に、自律的に、
施設がつくられている。
説明を受けながら、
農場を歩く。
農場には青々と野菜が育つ。
そこで働く若者。
集約的な有機農法とも異なる。
さまざまなことを考えながら、歩く。
農場をひと回りしてから、
ランチをいただく。
ワインにパンと生ハム。
この農場を経営していくため、
私たちのような見学と食事、
あるいは宿泊サービスが提供される。
考えてみるとこの自然農法は、
新しいサービス業なのかもしれない。
最後にオーナーと写真。
自然農業を見学した後で、
高速道路を飛ばして、
ミラノ市内へ。
中央部のドゥオーモへ。
ミラノの大聖堂。
世界最高峰のゴシック建築。
柱は52週にちなんで52本ある。
お祈りの椅子に腰かけて、
講義を聴く。
とてもいい勉強になった。
講師は私たちのガイドの新津リエさん。
ミラノでは断然トップのガイドで、
広い知識と深い見識をもつ。
祭壇の横を回る。
壁面の祭壇にもゴシック彫刻。
そして12使徒のひとり、
バルトロマイの像。
ステンドグラスは世界一高い。
その新約聖書のステンドグラス。
ドゥオーモ見学が終わると、
ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世のガッレリア。
床にはローマを創った兄弟。
ロムルスとレムス。
そして牡牛を描いた「トリノの紋章」。
この牡牛の急所を踏んで、
くるりと回ると幸せがやってくる。
一通りの観光をすると、
そのあとは自由研修。
私は珍しく、
ミラノのブランド街を散策。
サンタンドレア通りは、
パリでいえばサントノレ通りか。
スコールのような雨が降ってきたが、
暑い農場歩きのあとは、それも心地よい。
4泊6日の短いミラノ滞在。
3泊した後の最後の1日は、
自然農場訪問と観光。
ミラノという都市にとって、
自然と歴史とブランドは、
立派な観光資源である。
歴史にはもちろん哲学があるが、
自然農法にも哲学があり、
ブランドにも哲学がある。
ペックやイータリーが加わって、
食も観光資源となってきたが、
そこには「スローフード」の哲学がある。
哲学が資源となる。
そんなことを考えさせられた、
有意義な一日だった。
(つづきます)
〈結城義晴〉