ワールドカップラグビー決勝/南アの「多様性の勝利」に思う
今日は1日、横浜商人舎オフィス。
月刊商人舎11月号の原稿執筆と入稿。
しかし、とうとう終わってしまった。
ラグビーワールドカップ2019。
日本で初めての開催。
最後の最後の決勝は、
今日の18時から。
イングランド対南アフリカ。
戦前の予想は、
「イングランド有利」だったが、
南アが完璧な防御。
スコアは12対32だが、
イングランドをノートライに抑えて、
快勝と評していいだろう。
試合前には両軍揃った後で、
台風19号の犠牲者の人々に、
スタジアム全員で黙とう。
南アフリカのプロップも黙とう。
テンダイ・ムタワリラ。
オーウェン・ファレルは、
眼を開けて祈った。
イングランド主将の大スター。
18時03分、キックオフのあとは、
互いに相手の反則を取って、
ペナルティキックで加点しようとする。
キックオフ後、15分。
南アがスクラムを押す。
そして反則を奪う。
ハンドレ・ポラードが見事に決めて、
南アが3点を先取。
その後、18時33分、
イングランドのファレル主将が、
長いペナルティゴールを決めて3対3へ。
すると18時36分、
南アが25メートルキックを決めて3対6へ。
さらに18時49分、6対6、
18時51分、6対9。
18時54分、ポラードが、
4本目のペナルティゴールを決めて、
6対12のダブルスコアで、
ハーフタイムに入る。
イングランドの敵陣での反則の多さが、
ここまでの点差を生んでしまった。
それだけ南アのフォワードが、
イングランドを圧倒していたことになる。
特に、前半30分時点。
南アゴール前でイングランドの猛攻。
それを凌いで凌いで、
ゴールを割らせない南ア。
この攻防が結局、
試合を分けたと思う。
後半に入ると19時16分、
南アのポラードが5本目を決めて、
6対15。
トライ&ゴールの7点でも、
追いつけない点差となる。
しかしイングランドも食らいついて、
すぐにペナルティを奪い、
19時22分、ファレルが決めて9対15。
トライ&ゴールで追いつける射程圏内に。
それから19時28分、9対18、
19時30分、12対18。
このあたりまで、
トライは出ないものの、
重厚な攻撃と果敢な防御で、
素晴らしい試合となった。
特に南アは9割以上のタックル成功率。
そして後半の19時35分、
南ア主将のシヤ・コシリが交代。
チーム史上初の黒人キャプテンである。
すると南アの選手たちは、
逆に発奮して、19時40分、
ウィングのマカゾレ・マピンピが、
ハーフライン付近で相手の背後にキック。
味方がキャッチし、そのあと、
スローフォワードぎりぎりのパスを受け、
マピンピ自らトライ。
ゴールも決まって、12対25。
決定的なトライだった。
こうなると流れは止まらない。
20時01分には、
小柄なチェスリン・コルビが、
大柄なイングランド選手を翻弄し、
見事に走り切ってトライ。
身長171センチ/74キロの代表ラガーだ。
フランソワ・デクラークも、
174センチ/80キロと小柄だ。
金髪をひらめかせ、
縦横無尽に走り回って、
スクラムハーフの激務をこなす。
ノーサイドの後は両軍が讃えあい、
表彰式。
南アフリカ「スプリングボクス」
三度目の優勝。
主将のシア・コリシが、
優勝トロフィーを高々と掲げて、
歓喜を表した。
「ウェブ・エリス・カップ」という。
南アフリカには公用語が11言語もある。
白人社会のアパルトヘイトが、
長らくこの国の秩序だった。
キャプテンのコリシは黒人だ。
人種構成は黒人が8割ほど、
白人が9%、混血のカラードが9%。
この多言語、多人種の国のチームが、
スプリングボクスだが、
今大会で日本と並んで南アは、
最もその多様性の強みを、
発揮していたと思う。
イングランドなどは、
ゲームの中でちらっと、
白人優位が顔を出す。
それを見ていて、
ハッとさせられることがある。
黒人選手があえて、
相手を痛める反則をしたりするからだ。
しかしスプリングボクスには、
それがなかった。
それがペナルティゴールの差となった。
映画「インビクタス」は、
クリント・イーストウッドが監督し、
この問題を真正面からとらえた。
1995年のラグビーワールドカップは、
南アフリカで開催された。
第3回大会だった。
人種隔離政策をとっていた南アは、
第1回、第2回には、
参加が許されなかった。
しかし1994年4月に、
ネルソン・マンデラが大統領に選ばれ、
アパルトヘイトは完全に廃止された。
そこで第3回から参加が許されたが、
そのワールドカップが自国開催となった。
この大会でスプリングボクスは、
予想を覆す快進撃を見せて決勝に進出。
そしてニュージーランドを破る。
いつも最強のオールブラックス。
この映画ではマット・デイモンが、
白人の主将フランソワ役で、
素晴らしい演技をした。
それから24年。
今回の第9回大会では、
黒人のコリシがキャプテンとなった。
その発言は重い。
「様々な背景や人種が、
一つになって優勝できた。
一つになれば目標を達成できると、
示すことができた」
様々な背景があるからこそ、
様々な人種がいるからこそ、
21世紀という新しい時代は、
強い国になるし、良い国になれる。
それをスプリングボクスは、
証明してくれた。
日本代表も同じように、
外国人選手の多様性に支えられ、
そのダイバーシティの重要さを示しつつ、
ベスト8になった。
新しい時代はやって来ている。
ありがとう。
〈結城義晴〉