10月税収の「消費増税効果」とソフトバンクGの「租税回避」
朝から横浜の上空に、
ヘリコプター。
拡声器のようなもので何かをアピールしながら、
南の空から北の空へ飛び去って行った。
その真っ青な空の下は、
12月3日だというのに暖かい日だ。
まさに「小春日和」。
光が満ち溢れた坂道を、
保育園の子どもたちが、
保母さんに連れられて歩いてきた。
自衛隊や県警のヘリコプターと、
保育園の園児。
この対比がおかしかった。
ヘリコプターの拡声器は、
無視することにした。
さて、財務省が昨日、発表した、
10月の一般会計税収。
前年同月比で1.5%増の3兆8826億円。
このなかで一番多いのが、
問題の消費税で、
全体の39.5%を占める1兆5318億円。
前年同月比で3.1%増だった。
ただし10%に税率が上がった2%分は、
10月分の税収には反映されていない。
軽減税率導入の差額分の税収は増えないし、
ポイント還元投資にも金は使われる。
今月、消費税収が3%以上も増えた理由は、
今年に入って輸出が急減して、
輸出取引に絡む企業への還付金が減ったから。
ああ、消費増税。
税収のうちの二番目は、
源泉徴収分の所得税だ。
あなたや私が毎月払っている税金。
1兆279億円で全体の26.5%だが、
これが前年より7.6%増。
税収に占める構成比では、
所得税は消費税より13.0ポイント少ない。
三番目は法人税収で、
4274億円の11.0%。
これが前年比2.9%増。
法人税は企業国家の日本としては、
ちょっと少ない気がする。
この消費税・所得税・法人税の関係性の中で
消費増税するのでは消費は喚起されない。
ちなみに四番目は揮発油税。
これはガソリン税のことで1974億円、
前年比6.5%減。
五番目が相続税。
1947億円で8.4%減。
そして六番目が酒税。
1107億円で0.9%減。
七番目がたばこ税。
893億円で17.0%の激減。
この国は個人とその消費から、
税金を取りまくっている。
消費税、所得税、相続税、
ガソリン、酒、たばこ。
ああ。
日経新聞の「大機小機」
硬骨漢のミスト氏が書く。
「いつまでイタチごっこを続けるのか」
「ソフトバンクグループの
租税回避が問題になっている」
「海外子会社の株式を
グループ内で移転させて
人為的な損失を作りだし、
本業の利益と相殺することにより
法人税の負担を減少させた」
ソフトバンクグループ(SBG)は、
2018年度日本企業売上高ランキングで第8位だ。
1 トヨタ自動車 29兆3795億円
2 本田技研工業 15兆3611億円
3 日本郵政 12兆9204億円
4 日産自動車 11兆9512億円
5 日本電信電話 11兆7821億円
6 JXTGホールディングス 10兆3011億円
7 日立製作所 9兆3686億円
8 ソフトバンクグループ 9兆1588億円
9 ソニー 8兆5440億円
10 イオン 8兆3900億円
今日時点の時価総額ランキング。
1 トヨタ自動車 25兆1838億円
2 NTT 10兆8364億円
3 NTTドコモ 10兆0390億円
4 キーエンス 9兆2516億円
5 ソニー 9兆0359億円
6 ソフトバンクグループ8兆7459億円
7 三菱UFJ 7兆9410億円
8 KDDI 7兆4712億円
9 ファーストリテイリング 7兆1281億円
10 ソフトバンク 7兆0850億円
ソフトバンクグループとソフトバンク。
時価総額順位で6位と10位。
合計すると15兆8309億円となる。
もちろんNTTとNTTドコモも合わせれば、
こちらも20兆8754億円となるから、
ソフトバンクは日本第3位だが。
この会社が「租税回避」をしている。
「租税回避」とは、
合法な租税負担の軽減・排除のこと。
「一連の取引にはどこにも違法性はない。
しかし複雑に組み合わせて税負担を逃れる」
SBGは一部だけ修正申告に応じたらしい。
だが「やったもん勝ち」の状態は、
放置されたままだ。
こうした事例は急増している。
そして「税制当局とのイタチごっこ」。
ここから脱却するために必要なのは、
「一般的否認規定(GAAR)」
この規定の導入が有効である。
「General Anti-Avoidance Rule」
日本以外のG7諸国が導入している。
これらの国でも、
「租税回避」は頻発している。
しかし日本はこれまで、
「租税回避」行為が少なかった。
だからそれへの対応が遅れた。
GAARとは、
「税法の本来の趣旨・目的に反した
使い方をした場合や、
もっぱら税負担の軽減のみを
目的とした取引について、
税効果を否認する」規定だ。
ここでいう「税効果」とは、
「企業会計」と「税務会計」のズレを調整し、
税金費用を期間配分する手続きのこと。
だが「租税回避」のための「税効果」もある。
その場合、この配分を否認する。
つまり認めない。
それが「税効果の否認」だ。
つまりGAARの規定導入は、
「租税回避」をけん制する効果を持つ。
GAARの規則がない我が国では、
裁判で個別事例ごとに判断されている。
しかし裁判所によって、
解釈や判断が異なる。
一方、学会はこれらを、
論理的に立証する立場にあるが、
この「租税回避」の問題に対して、
正面から向き合っていない。
コラムニストによれば、
「当局が企業の知恵に
追いつけない現状を見ず、
机上の空論を繰り返している」
このような状況のなか、
経済協力開発機構(OECD)は、
租税回避スキームの「義務的開示制度」を、
導入するよう日本に勧告している。
義務的開示制度は「MDR」という。
「Mandatory Disclosure Rule」
MDRは、
租税回避スキーム利用者(納税者)や、
それを提供する会計士・税理士などに、
国税当局への報告を義務付ける制度だ。
アメリカやイギリスでは、
租税回避のけん制に役立っている。
我が国でも、
平成29年度の与党税制改正大綱に
「今後の検討」と書かれている。
しかし遅々として進まない。
消費増税や軽減税率導入で、
国民から吸い上げたり、
その違和感を緩和したりする前に、
「租税回避」スキームのいたちごっこを、
一刻も早く脱する必要がある。
「法令で否認要件を明確」にし、
GAARやMDRを導入すべきだろう。
ちょっと表現が、
専門的過ぎてわかりにくいが、
良いコラムだった。
もちろん租税回避といっても、
中小零細企業のささやかな回避と、
リーディングカンパニーの回避とは、
わけが違う。
このときにも重要なのは、倉本長治。
「損得より先に善悪を考えよ」
自衛隊のヘリコプターも、
税金で賄われているし、
幼児教育・保育の無償化も、
税金によって進められている。
そして首相主催の「桜を見る会」も、
税金のうちから支出されている。
税金は集め方と使い方。
どちらにも関心を持ち、
注意を払っておかねばならない。
〈結城義晴〉