Eddie Jones「長時間労働とハードワークは似て非なるものだ」
令和元年の今年。
新しい象徴天皇が誕生し、
元号が令和に変わったこと以外に、
国民を沸かせたのは、
やはりラグビーワールドカップだった。
日本代表の躍進は、
これ以上ない勇気を与えてくれた。
しかしその陰で、
イングランドの闘いぶりは、
特筆に値するものだった。
そのチームを率いたのが、
エディー・ジョーンズ監督だ。
しかもジョーンズ監督は、
前日本代表監督でもあって、
4年前のワールドカップでは、
南アフリカから金星を獲得させてくれた。
そのジョーンズ監督に、
日経新聞がインタビューした。
エディー・ジョーンズはまず、
「素晴らしい大会になった」と、
日本開催を褒めてくれた。
自分の仕事に関しては悔恨の念が深い。
「決勝で南アフリカに敗れたのは痛恨だ。
イングランドは常に優勝を期待され、
優勝のみを目指していた」
一方、日本代表への評価は高い。
「日本の躍進は素晴らしかった。
日本はさらに強くなっていた」
「私が日本代表監督に就いた2012年、
“ローリスク・ハイリターン”の
プロジェクトだと感じた」
「勝利という明確な目標を設定し
ハードワークを徹底する。
そのうえで、
創造的な戦略や戦術を落とし込めば、
成功の道は開けると確信していた」
明確な目標とハードワーク、
そして創造的な戦略・戦術。
そうすれば成功は間違いない。
素晴らしい。
「ラグビーで主将の重要性は
圧倒的に大きい」
リーチ・マイケルがそれだった。
これはまったくもって、
店長の役割と同じだ。
「試合が始まったら監督は指示が出せない。
現場責任者のキャプテンが戦術を判断し、
チームをけん引する」
「監督業25年だが、
人材配置が最も難しく、
いつも苦悩する」
これはチームの人事であり、
たとえば店長の配置である。
不思議なことに、
米国のトレーダー・ジョーでは、
店長を「キャプテン」と呼ぶ。
日本代表は、
国籍の異なる混成チームだった。
ジョーンズの見解。
「ダイバーシティー(多様性)の大切さを
端的に示していると思う」
「異なる意見や経験を尊重し、
受け入れること。
そのことがチームや組織、
そして社会を、
確実に強くし、良くする」
同感だ。
「ラグビーは1チームに15人いる
複雑なスポーツだ。
様々なポジションと
それぞれに果たすべき役割がある。
その力をどう結集し最大化するか。
経営につながる面があるかもしれない」
そして日本の経営者にエールを贈る。
「日本の経営者には明確なビジョンを掲げ、
その実現へ旧態依然にとどまらない
大胆な戦略を打ち出してほしい」
「かつてほど元気がないように見える。
社長や部長の目を気にしたような、
日本の会社員の長時間労働には
違和感があった」
「ラグビーの練習も同じだが、
問われるのは時間の長さでなく
中身と成果」
最後がいい。
「長時間労働と
ハードワークは
似て非なるものだ」
あのラグビー日本代表も、
全員が例外なく口にした。
「ハードワークはきつかった」
しかしそれは決して、
長時間の練習ではなかった。
決められた時間内のハードワークは、
労基法違反ではない。
ただしそのハードワークで、
一定時間以内に大きな成果をあげたら、
それを正しく評価して、
それに報いる給与体系を用意する。
米国のウェグマンズ。
Fortune誌の「働きがいのある企業100」で、
いつもベスト3に入る会社である。
インディペンデントのファミリービジネス。
全米をリードするスーパーマーケット。
ミールソリューションを生み出した組織。
ダニエル・ウェグマンを中心に、
左がコリーン・ウェグマン、
右がニコール・ウェグマン。
ダニエルが会長、コリーンが社長。
現在、101店舗で年商92億ドル。
1ドル100円換算で9200億円、
現在の為替レートならば1兆83億円。
4万9000人の従業員を雇用する。
このウェグマンズは、
仕事が楽で、給料が高いから、
「働きがいのある企業」なのではない。
ウェグマンズのピープルは、
例外なくハードワークする。
社内の競争も激しい。
しかしそこに、
やり甲斐や働き甲斐が生まれる。
もちろんサービス残業などはない。
エディー・ジョーンズの、
「長時間労働とハードワークは
似て非なるものだ」
経営者もミドルマネジメントも、
そしてユニオンも、
ここを勘違いしてはならない。
しかしそれにしても、
今夜のサッカーE1の日本代表。
日本対韓国戦は決勝戦。
1対0でいいところなく惨敗。
若い選手ばかりとは言え、
ひどくふがいなかった。
ラグビー日本代表と比べると、
かわいそうなくらいに、幼かった。
ハードワークの本質を知るには、
いい意味で「大人になる」ということだ。
いや、ハードワークの中から、
人間は少しずつ、一歩ずつ、
大人になっていくのだろう。
このときハードワークは、
はじめから、
ロングワークとは、
次元が異なるものなのだ。
〈結城義晴〉