結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2020年01月04日(土曜日)

初売りの「鼠一匹」と松原隆一郎教授の「リスクと世代交代」

ああだこうだと騒いでも、
結局、大したことはない。

大山鳴動して鼠一匹。
そういえば今年は子年。

初売りの話だ。

スーパーマーケットなどが、
1月1日・2日に休業し、
一部コンビニエンスストアも、
実験的、あるいはストライキで、
元日の営業を休止した。

コンビニはほんの一部だから、
全体にはさして影響はないだろうが、
営業していたセブン‐イレブンなど、
2日や3日の夜には品切れが続出した。
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全体に緩んでいる印象だ。

それでも車で横浜の街を流してみると、
イオンのまいばすけっとが目立つ。

もちろんセブンやローソン、
ファミリーマートが明かりをつけている。

一方、百貨店や総合スーパーの初売り。
日経新聞が3日の記事で報じた。

「初売りは比較的順調なスタートとなった」

「高島屋の主要5店、松屋銀座店、
イオンリテールの首都圏店舗などで、
昨年並みだった」

三越伊勢丹ホールディングスは、
昨年、3日からの営業だったが、
三越銀座店など首都圏の5店は、
初売り開始日を2日に前倒しした。

あべのハルカス近鉄本店は、
2日の午前4時から顧客が並び始めた。
開店前には約6000人の列。

イオンモールに出店する専門店などが、
約500万個の福袋を用意した。

埼玉県の越谷イオンレイクタウンでは、
開店前に約1万2000人が待った。

イオンリテールの約400店は、
元日から営業したが前年並み。

逆にイトーヨーカ堂の元日は、
全体で昨年をやや下回った。

スーパーマーケットなどが休業するので、
ちょっと増えるかと思ったが、
意外に変化は起きない。

大山鳴動して鼠一匹。

さて昨年12月30日の日経新聞。
連載「逆境の資本主義」

松原隆一郎教授。
現在、放送大学教授、東京大学名誉教授。
『消費資本主義のゆくえ』は、
サブタイトルが「コンビニから見た日本経済」
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私が㈱商業界で編集責任者をしていた頃、
雑誌にご登場願った。

流通にもプロレスにも詳しい。

この日経の記事タイトルは、
「AI時代、組織で知識生む仕組みを」
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まずAIの労働に及ぼす影響。

「AIを使い始めると
人がやることがなくなってくる」

なくなってくるというより、
減ってくる。

「決められたルールのなかで
問題を解く作業で人はAIに勝てない。
AIを使うルールを決めるのは
人が手掛けるとしても、
それはかなりの知識労働だ」

「その作業に特化しなければ
人が利益を稼ぎ出せないとなると、
現役世代分をまかなうだけの利益が出て、
賃金として配分できるかわからない。
AIの与えるショックは大きい」

ただし、今朝の朝日新聞、
「天声人語」

初釜やいまぞ生きよと富士の土
空青く子供育てし注連(しめ)飾りこれらの句を詠んだのは一茶。
と言ってもあの小林一茶ではない。
俳句を詠む人工知能「AI一茶くん」北海道大学の川村秀憲教授が、
3年前に開発した。「江戸から現代まで古今の名句と、
季語にちなむ写真を覚えこませた。
句題か写真を示すと、
それに即した俳句を詠むことができる」俳句のディープラーニングだ。「何十万もの既存の句を学び続け、
3カ月で味わい深い句を詠むようになった」

しかし1時間に14万もの句をひねり出す。

川村教授。
「残念ながら玉石混交です。
だれか人の手を借りて選ばないと、
多すぎて句会が台無しになります」

14万句から選ぶという知識作業は、
人間の達人がやらねばならない。

AIと人間との関係をよく示している。

松原隆一郎教授は強調する。
「知識労働は今後、一層、
クリエーティブにならなければ
稼げなくなるだろう」

しかしやがてAIが「この一句」を、
自分で選ぶ時代が来るかもしれない。

小売流通の仕事に関しては、
逆に大いに助かる部分が出てくる。
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組織づくりも変わる。
「互いに示唆を与え合い、
新しい発想を生み出すことができる
組織作りが重要になる」

つまり人間とAIが互いに作用しあう。

だからといって、
「必ずしもフラット化した組織が
求められるわけではない」

「中間管理職が
情報の伝達役や
抑圧的な上司にすぎないのなら
必要はない」

ミドルマネジメントの役割は重くなる。

「知識の触媒としての役割を
果たすことができる存在が必要になる」

知識の触媒。

私が唱える「知識商人」は、
知識と知恵を持ったうえで、
松原教授の言うように、
知識と知識の仲介役とならねばいけない。

しかしもともと日本は、
「組織で新しい発見を生み出してきた」

教授はトヨタ自動車を例に挙げる。
「上層部の指示を待たずに
現場で不具合を見つけて
解決する仕組みを生み出した」

「一方、米国のテーラー方式では
ホワイトカラーとブルーカラーが分離し、
上の指示に下が従うだけだった」

「日本にテーラー方式が
本格的に入ってきたのが00年代で、
正社員から非正規に
切り替えた時期と重なる」

ここでいう「00年代」は、
2000年代。

「現場は上に言われたことを
肉体労働としてこなすだけになった。
組織や人間関係のなかで
知識を生み出して利益をあげるという
日本の成功モデルが崩れてしまった」

古典的チェーンストア理論では、
ゼネラリストやスペシャリストと、
ワーカーとを峻別して、
ワーカーに完全作業を求めた。

これは「日本の成功モデルを崩した」

ああ。

最後にこの連載の本題。
日本の資本主義のあり方。
「株主や金融機関から資金を調達して
事業をするべき企業が
貯蓄主体になっている。
これは資本主義ではない」

「もともと日本企業は
株主への配当よりも事業投資を優先し、
借り入れ過剰の状態だった。
バブル崩壊後は逆に
過剰に後ろ向きになり、
負債を返し終えても
投資をしなくなった」

「日本はもっと、
世代交代を進めるべきだ」

賛成だ。
国のトップを含めて。

「将来
何が起こるか分からないところで、
投資してうまくいけば
リターンを得る仕組みが
資本主義だ」

したがって、逆に、
「失敗したら結果責任をとるべきだが、
不確実なことに対して
責任を取る人がトップでなければ
世代交代が進まず、社会が停滞する」

現在の日本の社会や組織の問題を、
リスクを負うことと世代交代だという。

昨年の商人舎標語。
そして[Message of January]
「リスクを冒せ。」
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時代が大きく変わるときに、
仕事にも経営にも
求められるものがある。
それはリスクを恐れないことだ。
リスクを冒すことである。

「経済活動とは、現在の資源を未来に、
すなわち不確実な期待に
賭けることである。
経済活動の本質とは、
リスクを冒すことである」

このピーター・ドラッカーの言葉は、
大きく変貌を遂げる2019年に、
心と頭と体に
自覚させておかねばならない。
――リスクを冒せ。

〈結城義晴〉


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