横浜・湘南店舗クリニックの「差異と調和」の「ポジショニング戦略」
雨の木曜日。
1日中、
横浜から湘南にかけて、
店舗クリニック。
スーパーマーケットを中心に、
結果的に9店舗を巡った。
途中、ジョナサンでランチして、
食後にディスカッション。
ジョナサンはもちろん、
㈱すかいらーくホールディングスの店だ。
通常とは異なる視点から、
特別の意図をもって、
現在、絶好調の企業も含めて、
名の通った有力な店舗を訪れる。
そして観察し、買物し、考察すると、
実に面白いことに気が付く。
それらの店がどのように進化しているか、
そしてその進化はどこまで続くか。
あるいはブレーキがかかりつつあって、
停滞から衰退へのライフサイクルが、
その店に待っているのか。
そんなことが見えてくる。
私は米国の11日間の旅から帰ったばかり。
サンフランシスコ。
そしてニューヨーク。
向こうでは1日に、
8店から10店を見ていた。
ウォルマートをはじめ、
ターゲットやセーフウェイ、
ホールフーズやトレーダー・ジョー、
ウェグマンズやイータリー、
アルディやリドル、ウィンコフーズ、
ゼイバーズやフェアウェイマーケット、
バークレーボウルやナゲットマーケット、
そしてスチュー・レオナードまで、
目に焼き付いている。
自然な流れのように、
日本でのクリニックを続けた。
だから必然的に、
日本の店と比較することになる。
Amazon Goに匹敵する店はないけれど。
アメリカの店が優れていて、
日本の店が劣っているとは思わない。
むしろ日本の方が優れている点も多い。
今回の横浜・湘南クリニックは、
店の優劣を論じることを、
目的としてはいない。
だからこそかえって、
それぞれの経営戦略に関して、
その「古さ」と「新しさ」が、
浮き出てきた。
もちろん時の流れを知る、
「魚の目」を持たねば、
古いも新しいもわからないが。
そしてここでももちろん、
古いものが悪くて、
新しいものが良いとは言えない。
スチュー・レオナードが悪くて、
イータリーが良いとは、
一概には言えない。
何度も書いているけれど、
両者の「Our Policy」
スチュー・レオナード。
ディズニーランドのような店。
そのポリシーは、
Rule1 The Customer is Always Right!
原則1 顧客はいつも正しい。
Rule2 If the Customer is Ever Wrong, Reread Rule1.
原則2 たとえ、顧客が間違っていると思っても、原則1を読み返せ。
「Customer」は親友のようなお客様。
そう考えると、
「親友はいつも正しい。
たとえ親友が間違っていると思っても、
もう一度、親友を信じよう」
こうしてロイヤルカスタマーが、
少しずつ増えていく。
一方のEATALY。
グロサラントの極致のような店。
そのイータリーのアワー・ポリシー。
1 The customer is not always right
顧客はいつも正しいわけではない。
2 Eataly is not always right
イータリーもいつも正しいわけではない。
3 Through our differences, we create harmony
顧客との差異が調和を創り出す。
お客様とお店は対等である。
私たちは、
紳士淑女にご奉仕する、
紳士淑女である。
(リッツカールトンのモットー)
顧客をあくまで、
「親友の正しさ」と考えるか。
顧客と店を、
対等なゲストとホストと見るか。
正反対の主張。
「レース型競争の時代」には、
「正しい」ことは一つだった。
あるいは二つくらいだった。
「大きいことはいいことだ」だった。
「利益こそ美徳」だった。
そのひとつ、あるいは二つのゴールを、
全員が目指した。
しかし「コンテスト型競争」の時代には、
どちらも正しいし、
その正しさの主張も多様である。
どちらも美しいし、
美しさも様々だ。
それがポジショニング戦略時代である。
店舗戦略に関して、
商品戦略に関して、
経営戦略に関して、
なにが「正しい」などと、
安易に言い切ることは絶対にできない。
むしろ己(おのれ)の戦略を、
どこまで貫徹することが、
できるかどうかが大事だ。
もし「正しい」と言い切ってしまったら、
それはあまりに僭越すぎる。
根拠も示さずに、
「自分が正しい」などと断言する態度自体、
実は何も知らない、
あるいは何もわかっていないことを、
露わにしている。
「真偽」や「是非」を、
論理的、実証的に、
証明することはできるけれど。
「ポジショニング戦略」は、
そういう姿勢によって成り立っていると、
私は考えている。
最後に横浜のノースポートモールで、
経営コンサルタントの鈴木國朗さんと、
延々とディスカッション。
笑いあり。
激論あり。
写真や資料の確認あり。
そこでの考察あり。
また、笑いあり。
大笑いあり。
そして真面目に真剣に話し合った。
互いの差異を確認し合った。
テーマと結論は、
月刊商人舎2月号にて。
差異と調和。
“differences”と”harmony”
この観点から見直すと、
日本の優秀な店々も、
捨てたもんじゃない。
〈結城義晴〉