“no one will be left behind”の「世のため、人のため。」
今日から5月。
令和になって丸1年。
朝日新聞一面「折々のことば」
第1803回。
no one will be left behind.
「誰ひとり取り残さない」
(国連が謳う理念)
「誰も置き去りにしない」とも訳される。
2015年、国連で全会一致で採択されたSDGs。
SDGsは「持続可能な開発目標」
その「2030アジェンダ」の理念が、
この一文。
no one will be left behind.
編著者の鷲田清一さん。
「コロナ禍による医療崩壊や
経済活動の休止による生活危機の中で、
普遍的人権、なかでも、
苦難を強いられている人びとの権利を
断固守るというこの言葉が
厳しい試練に晒(さら)されている」
つまり鷲田さんは、
苦難を強いられた人々を、
守り切ることが難しい局面にあると言う。
no one will be left behind.
これは民主主義の本質を意味する。
だとすれば、
このコロナ禍の今、
民主主義を堅守することこそが、
試練に遭っている。
鷲田さんはそう考えている。
同感だ。
鷲田清一さんは、
1949年、京都市生まれの団塊の世代。
専攻は臨床哲学・倫理学。
専門は現象学・身体論で、
「身体(からだ)」は、
「像(イメージ)」でしかないと説く。
大阪大学総長、名誉教授、
京都市立芸術大学理事長・学長、
同名誉教授。
日本の緊急事態宣言は、
どうやら5月いっぱい、
続けられそうだ。
阪神淡路大震災や東日本大震災とも、
石油ショックやリーマンショックとも、
全く異なる体験がまた1カ月間続く。
それもグローバルレベルで。
日本は周回遅れの最後尾あたり。
人の命とははかないものでもあって、
まったく納得がいかないけれど、
それがこの世から失われる以外のことは、
もしかしたら得難い時間なのかもしれない。
つまり、
“no one will be left behind”
とはいかない。
それでも、
いや、それだからこそ、
現在の自分たちには未知の体験で、
その時間を無駄にしてはならない。
そう考えて1カ月を過ごすことにしよう。
2020年の商人舎標語。
世のため、人のため。
ひとつひろえば、
ひとつだけ街が美しくなる。
1本植えれば、
1本だけ地球がよくなる。
ひとつ売れば、
ひとつだけ喜びが生まれる。
ひとつつくれば、
ひとつだけ価値が生じる。
ひとつ運べば、
ひとつだけ経済が回る。
世のため、
人のため。
客のため、
店のため。
街のため、
国のため。
母のため、
父のため。
子のため、
孫のため。
妻のため、
夫のため。
愛する人のため、
未来の人のため。
2020年代の初頭、
令和2年のはじまりに。
ひとつひろえば、
ひとつだけ街が美しくなる。
1本植えれば、
1本だけ地球がよくなる。
ひとつ売れば、
ひとつだけ喜びが生まれる。
世のため、
人のため。
客のため、
店のため。
己のため。
〈結城義晴〉