コロナ時代を先導するドイツ「社会的市場経済」の「協調と競争」
7月1日だ。
2020年は今日から後半戦に突入する。
COVID-19禍がなければいまごろは、
東京五輪一色だったに違いない。
今月第4週の金曜日24日が、
オリンピック開会式の日で、
スポーツの日として祝日になった。
その前日の23日は、
もともとの祝日「海の日」で、
この週末は4連休である。
オリンピックは一応、
来年に延期されたが、
それもどうなるかわからない。
世界のCOVID-19拡大は、
現時点で最大風速を示す。
WHOの見解では、
コロナはこれから加速し、
最悪の事態はこの後、起こる。
世界中では約1000万人が感染し、
約50万人が死亡している。
東京都は今日、新規感染者67名。
緊急事態宣言解除後、最多。
まだまだ「Afterコロナ」などと、
呑気なことを言っているときではない。
COVID-19から、
いかに世界を救うか。
そんな中で、
今日の日経新聞「大機小機」
「メルケル氏が導くコロナ後」
コラムニストは無垢(むく)氏。
「コロナ危機ほど
世界の指導者の優劣を
はっきりさせた例はないだろう」
「強権政治家やポピュリストが
相次いで馬脚を現すなかで、
光彩を放つのはメルケル独首相である」
コラムニストは、
主要国のリーダーを評価する。
中国の習近平国家主席。
「危機の発生源である習主席は、
初動の遅れで大流行を招いた。
責任は重大だ」
米国ドナルド・トランプ。
「最大の感染国になった大統領は、
楽観論から初期対応が遅れた
自らの責任を棚上げし、
大統領選目当てで米中対立をあおる」
英国ボリス・ジョンソン首相。
「過信から欧州最悪の危機を招いた首相には、
混乱のなかで
合意なきEU離脱の危険がつきまとう」
日本の安倍晋三首相。
「先進国最悪の財政危機にありながら
巨額の債務を積み増すしかない」
さらに、「大幅遅れのデジタル化を、
“1丁目1番地”と位置付けるしかない」
しかし、
アンゲラ・メルケル首相。
その対応は、水際立っている。
「医療支援を先行させ、
医療体制を整えるとともに、
消費減税など
大胆な経済対策を打ち出した」
「財政健全主義を貫いてきたからこそ、
思い切った転換ができる」
「メルケル政権の真髄は、
その文化政策にある。
首相は”ドイツは文化の国だ”とし
芸術支援を優先順位リストの
最上位に置いている」
素晴らしい。
自国のポジショニングを鮮明にして、
その政策を断固、進める。
マクロン仏大統領とは、
大規模なEU復興基金を推進する。
最大の経済危機を前に、
「かけるべき橋は大きくなる」と大転換。
財源に国際炭素税やデジタル税を当てれば、
経済の仕組みは変わる。
コロナ危機は大恐慌以来の、
資本主義そのものの危機である。
そこで新たな世界標準に浮上するのは、
ドイツ流の「社会的市場経済」だろう、
と、コラムニストは絶賛する。
賛成だ。
「メルケル首相の復活は
コロナ危機下の救いである」
「自国本位主義を排し
国際協調を先導する
“敗れざるメルケル”は、
コロナ後の世界に
道しるべを示している」
「社会的市場経済」とは、
1950年代の西ドイツの時代から、
東西ドイツの統一を経ても継続されている、
ドイツ特有の社会福祉政策と経済政策の思想だ。
私も詳しいわけではないが、
ドイツを旅するとそれが実感できる。
経済思想・経済秩序として、
流動性があるにもかかわらず、
3つの一貫した特徴がある。
第1は、市場と国家の共生を目指している。
競争を機能化しているし、
その競争が社会に役立っている。
アルディ、リドル、メトロ、エデカなど、
流通においても、競争は機能化されている。
第2は、生産的な秩序政策の戦略を、
強く支持している。
だからインフラ政策、地域振興、
そして職業教育や専門教育も、
国家の責務として充実させている。
第3は、生産のために、
社会システムが必要とするものだけに、
限定している。
ドイツは間違いなく、
いつになるかわからないポスト・コロナ時代の、
国際的リーダー国家である。
自国本位主義を排し、
国際協調を先導する。
これは、
企業の戦略にも当てはまる。
自社本位主義を排し、
産業内外の協調を先導する。
しかし競争も機能化させる。
つまり「利他と無私」である。
そして「協調と競争」でもある。
私たちはこれから、
難しいことをやり遂げねばならない。
わかりやすくて、
すぐにできそうなことだけでは、
コロナ時代を切り抜けられない。
「すぐ役立つことは、
すぐに役立たなくなる」
(橋本武)
そのことを強く心にとめて、
7月を生きていきたい。
〈結城義晴〉