盆商戦の「アクセル&ブレーキ」とCOVID-19を「冷静に恐れる」
盆の入り。
もともとは、
旧暦7月15日が盆の中日だった。
旧暦7月13日が盆の入り。
明治政府は新暦をつくって、
西欧の基準に合わせようとした。
それが現在の暦になったが、
その新暦の盆に移行したのは、
多摩地区の一部を除く東京や、
函館、金沢の旧市街など。
あとは全国的に、旧暦の7月15日、
つまり新暦の8月15日を、
そのまま盆の中日とした。
こちらが「旧盆」と言われるもので、
現在も日本中が旧盆をして、
先祖の霊を迎える。
だから8月15日前後が、
会社の夏季休暇となっているし、
帰省ラッシュとなる。
意図もあっただろうけれど偶然にも、
この旧盆の中日が敗戦の日となった。
そのお盆商戦も本番。
しかし今年は、
大都市圏に住む人々は自宅に残り、
従来のような帰省組は少ない。
だから地方の小売業は、
例年よりも売上げは少ない。
逆に主要都市圏の小売業は、
客数も売上高も例年に比べて多いだろう。
コロナ禍中は「前年並み」はない。
コロナ禍後も「前年の踏襲」は、
否定されねばならない。
お盆を迎えて、
連日、熱暑。
横浜も昨日の最高気温は35.4度と、
35度を超えて、この夏、
一番の暑さだった。
今日も35度を超える「猛暑日」だ。
昨日の段階でCOVID-19感染者数は、
日本全国で累計5万2139人、
前日比979人増、これが新規感染者数。
そして退院者数3万5547人。
感染者数はPCR検査で陽性となった人数。
重症者数は177人、
累計死亡者数は1079人。
3月16日のブログ。
最善の経済対策は
「感染致死率抑制」と
新型コロナとの「共生」
山本太郎長崎大熱帯医学研究所教授。
その著作は『感染症と文明』
コロナ禍のテキストの一つ。
山本教授は言う。
新型コロナウィルスの「封じ込めは不可能」。
だから、
「感染拡大のスピードと
致死率を下げる努力をしながら
共存するしかない」
すぐに体内で増えてしまう病原体、
つまり毒性の強い感染症は、
潜伏期が短い。
かわりに周囲に急激に広がる。
そして毒性が強いために、
宿主である人間を殺してしまう。
その結果として、
拡大は途中で止まる。
ペストやコレラ、サーズ(SARS)。
これに対して、
体内で増殖しにくい病原体は、
急激に広がるわけではない。
安定して人間の間で増え続けていく。
そして毒性が弱くなっていって、
最後には潜伏期が、
人間の寿命に等しくなってしまう。
ここに至ると、
ある種の共生の状態となる。
「共存」である。
こうなると「ただの新しい風邪」と呼べる。
COVID-19も変異しているらしいから、
そうなる日が来るのを待つしかない。
そこで原山優子東北大学名誉教授。
「冷静に恐れる」
3月26日(木曜日)のこのブログ。
「冷静に恐れる」と
「ブレーキを踏みながら前進」する
この態度は今も変えてはならない。
「それには信頼できる情報が欠かせない」
これが重要だ。
「既知の未知」に対して、
情報収集と意思決定のメカニズムを
決めておくこと。
それは可能であるし、
それを実行しているのが
英国の緊急時科学助言グループ「SAGE」。
国家の非常事態に、
政府に科学的な助言を提示する組織だ。
日本の専門家会議は、
これをモデルに創られた。
しかし運営が恣意的で、
分科会となって、またおかしくなった。
SAGEは福島原発事故のときにも、
当時のキャメロン首相に助言した。
「東京にいる英国人を避難させる必要はない」
他の欧州諸国はすぐに、
日本国外への避難を勧告したが、
それとは一線を画する見識を示した。
SAGEも冷静に恐れる姿勢を堅持する。
そして政治判断で、
ブレーキを踏みながら前進する。
ここでブレーキとアクセルを、
踏むタイミングを失ったり、
逆に踏んだりしてはいけない。
朝日新聞「折々のことば」
昨日の第1903回。
編著者の鷲田清一さんが、
ときどき〈ことわざ〉を持ち出す。
三人寄れば文殊の知恵
鷲田さんのコメント。
「遠隔会議はなかなかに効率的である。
対面の会議よりも速やかに進行する。
余談や脱線がしにくいし、
隣の人とここだけの話もできないから」
「けれども、
話がずれてゆく中にこそ発見がある。
思いがけない連想や
補助線の引き方に驚かされる」
セレンディピティもこれだ。
「何よりも足の揺すりや、
ふとした深呼吸から、
ああ納得していないなとわかる」
これが大事だ。
「針路を変える決断も、
一所(ひとところ)に集まらないと
怖くてできない」
会社の経営や店舗の運営でも、
ブレーキを踏むのか、
アクセルを吹かすのか、
その判断が成果を決定づける。
もちろんCOVID-19対策も。
ここで実践されるべきが、
「三人寄れば文殊の知恵」だ。
「忖度(そんたく)」や「集団思考」には、
このことわざの真理が欠けている。
(注)集団思考は英語で”Groupthink”。
「集団が合議によって意思決定を行うとき、
集団の強い結束がマイナス方向に作用して、
メンバーが個人で決定を下す場合よりも
しばしば愚かで不合理な決定を
行ってしまう傾向のこと」
盆商戦に対して今は、
ブレーキから足を離すときである。
高校野球交流戦の「一戦主義」だ。
〈結城義晴〉