「おうい価格よ どこまでいくんか」デフレ懸念と体力勝負
真っ白な入道雲と青い空。
それでも荒れ模様の空。
もう秋の気配がある。
おうい雲よ
ゆうゆうと
馬鹿に
のんきさうぢやないか
どこまでいくんか
〈山村暮鳥〉
フィリピンの東で、
新たに熱帯低気圧が発生。
台風になる可能性がある。
日経新聞に7月22日・23日掲載の記事。
保存しておいたが、1カ月経過して、
追加のインタビュー記事が出た。
「コロナが変えた値段」
(上)「少し高くてもよい」
「新型コロナウイルスの影響で
モノやサービスの値段に変化が出ている」
スーツやホテルなど
外出に関連した消費の価格は下落した。
巣ごもりに焦点を当てた新たなサービスは
価格が高くても人気を集める。
記事は人気の商品やサービスを列挙する。
⑴マンガアプリ
Amaziaが提供する「マンガBANG!」
ダウンロード数は前年同期の約2倍。
紙の単行本が値上がりしているから、
このアプリも単価を値上げした。
それでも利用者数や売上高は増えている。
6月の消費者物価指数で、
「ウェブコンテンツ利用料」は
前年同月比2.7%上昇。
⑵宅配代行サービス
ウーバーイーツの1日の平均利用者数は、
4月下旬~5月上旬はほぼ倍増。
宅配サービスの価格には、
手数料や配送料が含まれる。
店内で食べるより高い。
ハンバーガーは店内価格が110円なら、
宅配は130円、
牛丼は350円が570円。
⑶ネット通販
楽天市場の利用者数は10%増、
アマゾンも6%増。
日銀の指摘。
「アマゾン効果により、
消費者物価の総合指数が、
0.1~0.2%程度押し下げられている」
少し高くても、
ウーバーイーツやネットスーパーの、
宅配は売れる。
それでも物価指数は下がっている。
23日の記事は、
(下)「一番売れる時期逃した」
紳士服チェーンは、
緊急事態宣言の4月上旬から1カ月休業。
卒業式や入社式で1年の書き入れ時。
販売は激減し在庫が膨張。
そこで「緊急処分」と銘打って、
スーツの全品半額セールに踏み切った。
カジュアル衣料のライトオンも、
春物を大幅に値下げした。
6月の消費者物価指数。
男子用ズボンが前年同月比3.4%下落。
婦人用スーツも5.1%の大幅下落。
率先して値下げに動く企業に、
㈱イズミ(山西泰明社長)が挙げられている。
6月から1000品目で平均1割の値下げ。
昨年10月の消費増税時に、
350品目の値下げをしたが、それ以上。
「値下げした商品の売れ行きは好調」。
ロイヤルホールディングスの「てんや」。
5月中旬に天丼を値下げ。
540円から500円に。
黒須康宏社長の見方。
「消費マインドが減退し、
低価格商品の売れ行きが伸びる」
コロナウイルス不安は、
消費マインドを減退させ、
価格コンシャスは高まる。
みずほ総合研究所の調査。
今夏の1人あたり賞与額は、
前年比9.2%減。
リーマン危機後の2009年に次ぐ大幅減少。
この時は9.8%減。
日本経済団体連合会の発表。
「2020年夏季賞与・一時金」では、
大手企業の夏ボーナス平均は、
92万5947円で前年比6%減。
この夏、消費は伸びることもなく、
ゆえに価格は下がった。
この「コロナが変えた値段」シリーズ。
1カ月後の8月20日。
野村総合研究所の木内登英氏登場。
エグゼクティブエコノミスト。
日本経済4~6月期の実質国内総生産は、
前期比年率27.8%減。
戦後最悪の落ち込み。
木内さん。
「長期にわたって
強い下押し圧力が
かかり続けるだろう」
「外出を控える動きなどで需要が急減し、
企業収益の悪化は避けられない。
設備投資や雇用の調整も進み、
需要は一段と抑制される」
「需要と供給力の差である需給ギャップは
2025年まで年平均で4.5%悪化し、
物価上昇率は同1.1%下振れる計算だ」
「コロナ以前から物価上昇率は0%台で、
当面はマイナス圏に沈む可能性が高い」
だからイズミの政策は、
競争する小売業として正しい。
「感染再拡大の懸念がくすぶるなか
需要は元に戻らない」
「家計や企業への支援は必要だが、
問題は財源の議論がないことだ」
国債の増発は、
企業や国民の税負担につながる。
企業の成長期待を押し下げる。
「投資や雇用が抑制されると、
物価の下げ要因となる」
ところが「政府・日銀はいまだ
物価目標2%の旗印を降ろしておらず、
コロナ禍が過ぎ去った後に
再び”デフレ脱却”を目指す可能性がある」
安倍晋三首相の進退いかんでは、
それどころではないかもしれない。
政局となると、
「物価は二の次・日銀任せ」となる。
「その際、危機対応の延長で
財政規律が緩んだまま
野放図な財政出動に走れば、
企業の成長期待が押し下げられ
デフレが再燃する懸念がある」
木内エコノミストは、
「デフレ再燃」を懸念する。
つまり価格は下がり続け、
顧客の価格マインドは高まり、
低価格消耗戦は続く。
スーパーマーケットをはじめとした、
コロナ特需は弱まりつつ継続されるものの
ヤオコー川野幸夫会長が指摘した
「体力勝負」だけは続くことになる。
おうい価格よ
ゆうゆうと
馬鹿に
のんきさうぢやないか
どこまでいくんか
〈結城義晴〉