大阪店舗クリニックと北野祐次さん・壽崎肇さんのこと
昨日から大阪に来ている。
幸いなことに台風12号が外れて、
こちらはそこそこに残暑。
しかし関東は急に寒くなったようだ。
やっと、秋本番という気分になってきた。
温暖化のせいで季節はズレる。
さぬきうどんの「粂屋」。
やってまっせ!
感染症対策。
安心して来てや!
いいねぇ。
今日は一日、
大阪を店舗クリニック。
商人舎を創業してから12年。
毎年、10回以上は海外に行っていた。
アメリカ、ヨーロッパ、アジア。
今年はそれがない。
そのうえコロナ禍で、
国内でも店舗を巡ることは少ない。
だから体力は落ちている。
それでも店を訪れると、
妙な元気が出て、
ずんずん歩く。
しかしひどく疲れた。
それではいけない。
故北野祐次さんの晩年を思い出す。
壽崎肇さんの80代を思い起こす。
北野さんは関西スーパーマーケットの創業者。
壽埼さんは九州の寿屋の創業者。
北野さんは1924年(大正13年)生まれ。
イトーヨーカ堂創業者の伊藤雅俊さんと同年。
2013年2月12日ご逝去。88歳だった。
関西スーパーマーケット名誉会長、
オール日本スーパーマーケット協会名誉会長。
日本の食品スーパーマーケット産業に、
これほど重大な影響を与えた人はいない。
北野さんが創り出した「システム」が、
日本のスーパーマーケット全体に普及し、
産業は明らかに進化した。
スーパーマーケット業界は、
悪い意味での「職人の世界」にあった。
そこにシステムの概念をもちこんだのが、
北野さんだった。
生鮮食品部門の鮮度管理システムは、
間違いなく世界最高峰である。
アメリカやヨーロッパよりも、
もちろん中国をはじめとするアジアよりも、
はるかに完成度が高い。
世界一厳しい目を持つ日本の消費者を、
十二分に満足させる仕組みは、
北野祐次によって生み出された。
それはまったく、
信じられないほどのイノベーションだった。
その北野さんが2002年に、
代表取締役を引退して、
会長になって、
さらにしばらく経って、
名誉会長に就任したころから、
急に元気がなくなってしまった。
「目が悪いので、見えにくい」と、
しきりに目を気にしていた。
しかしそんな北野さんも、
いったん店に入ると、
背筋がピンと伸びて、
早歩きになって、
元気を取り戻した。
店長や売場の担当者に、
事細かに指示を出した。
「店は北野祐次を元気にする」
私はそう思った。
一方の壽崎肇さん。
1926年(大正15年)生まれ。
ライフコーポレーションの清水信次さんと同年。
故渥美俊一先生とも、
私の大学の恩師・壽里茂先生とも、
そして私の両親とも同じ。
しかし、現在も健在。
1957年に、九州・熊本で寿屋を創業して、
1000億円を超える小売企業集団をつくった。
それは九州第一のチェーンストアとなった。
倉本長治と渥美俊一に学んで、
壽崎さんは九州一の流通王となった。
1992年に社長を退いたが、
残念ながら2001年に寿屋は、
民事再生法を適用申請した。
その壽崎さんは今、94歳。
しかし80代までは毎年のように、
海外視察研修に参加して勉強を続けた。
そして訪れた全店舗の全通路(アイル)を、
相当のスピードで、くまなく歩いた。
「これが健康法です」と言っていたし、
どんなに早歩きしても、
隅々まで歩くだけで、
「その店や売場はわかります」と、
つぶやいた。
私は初渡米の1978年9月に、
壽崎さんとご一緒した。
ロサンゼルスとサンフランシスコ。
最後にフィッシャーマンズワーフで、
マルガリータをごちそうになって、
あの街の夜の坂道をふたりで登った。
懐かしい。
月刊商人舎の今年の5月号。
特集「コロナは時間を早める」
壽崎さんが、
残っていた5月号の在庫を、
全部買い取って、
商業界九州連合会の皆さんに配った。
だから1冊も残っていません。
壽崎さんは現在も、
商業界同友会九州連合会長を務める。
「いい教科書です。
私は二度読みました。
みんなに勉強してもらいたい」
そう言ってくれた。
壽崎さんは雑誌や本を読むときにも、
店回りと同じで、
速読で、くまなく目を通す。
北野さんや壽崎さんを思うと、
68歳の結城義晴、
まだまだ「疲れた」などと言っていられない。
今日は森川泰弘さんが、
ドライバー兼案内係。
㈱JTB大阪第三事業部の商人舎担当。
海外研修が再開したらご一緒して、
いろいろと世話を焼いてくれる。
今日はその大阪版予行演習。
私はリラックスしてジーパンとボーダー。
森川さん、ありがとう。
心から感謝します。
北野祐次さんも壽崎肇さんも、
そして渥美俊一先生も、
みな、私にとって父のような存在だ。
渥美先生が永眠されたときに、
私は五七五の句をつくった。
亡き父よ
店見るたびに
見るたびに
今日はそんな気持ちで、
15店の店舗を巡った。
そして何度も反芻した。
神は現場にあり。
ありがとう、店舗たちよ。
合掌。
〈結城義晴〉