「重要な仕事」と「わからないことに慣れる勉強」
12月6日の日曜日。
穏やかで暖かな師走。
しかしこのところずっと、
心の中でくすぶり続けている、
ざわざわとしたものは消えない。
なんというか、日本も世界も、
あまりいい方向には行っていない。
COVID-19パンデミックは、
人類に対してひどく、
衝撃的な影響を与えた。
しかしそれによって露わになったものが、
人間の、あまりよくない側面である。
コロナは時間を早める。
私自身がそう言い始めた。
だがそれによって、
心の中のざわざわは広がった。
それでも、
そんなざわざわを救ってくれるのは、
「仕事」である。
自分が一生をかけた仕事。
今日も横浜商人舎オフィスにやって来て、
原稿執筆に勤しんだ。
ちなみにブログ書きは私にとって、
「仕事」ではない。
朝日新聞「折々のことば」
尊敬する鷲田清一さんが編著者。
毎日、短いことばを掲載してくれる。
それにしても哲学書はもちろん、
絵本からちょっとした冊子まで、
よくぞ目を通しているものだと、
いつもいつも感心させられる。
一昨日の第2013回。
重要な仕事とは、
人々が直面している状況に
どんな問題を見いだすのか、
そしてそれに
どんな解答を出すのか
ということである。
〈成実弘至(なるみひろし)〉
その著『20世紀ファッションの文化史』から。
成美さんは京都女子大学教授。
大阪大学大学院、ロンドン大学大学院修了。
専門は文化社会学。
ファッションやモードを研究している。
「ファッションデザインは
多くの人を巻き込む」
「素材を作る人、縫う人、
売る人、着る人らの
思いが行き交う中で生まれる」
商売でも、
作る人、運ぶ人、
売る人、買う人の、
思いが行き交う。
「それは性やふるまいの固定観念を
無意識になぞりもすれば
強く撥(は)ねつけもする」
「そうした中でデザイナーの役割は
状況をつくりだすところにある」
人々が直面している状況。
そこから問題を見つけ出し、
解答を導き出す。
それが重要な仕事だ。
ファッションも商売も、
真摯な姿勢を貫きさえすれば、
だからとても「重要な仕事」である。
それがなければ、
単なる金儲けだ。
もう一つ「折々のことば」
一昨昨日の第2012回。
勉強っていうのは、
わからないということに
慣れる練習をしているんだ
〈玄田有史(げんだゆうじ)〉
玄田の著『希望のつくり方』から。
「勉強して将来何か
役に立つことってあるのか」
ある中学生から質問された玄田さん。
こう答えた。
勉強していると、
わからないことばかりだとわかる。
わからないかわかるか
わからない
わからないかわかる
かわかるかい
わからないかわかるか
わからないから
やっぱりなんにも
わからない♫
大学のころつくった戯れ歌。
「作戦や戦略を考えてうまくいくのは
社会の筋道がよく整備されている場合だけ。
実際の社会はもっともつれ、
つかみどころがない」
「スポーツや演奏と同じで、
“まだよくわからない”ともがきつつも、
そのわからなさを面白がる中に
道は開けてくる」
現在の戦略論は実は、
もつれてつかみどころがないところも、
細かに分析して組み立てられている。
しかしそれとても、
「わからなさを面白がる」という中から、
道を開いたものだ。
玄田さんは東京大学社会科学研究所教授。
1964年島根県生まれの労働経済学者。
「ニート」という言葉をつくった。
玄田流ニート論には、
賛否両論がある。
それでも、
「わからないということ」に慣れよ、
というのは正しい。
わからないことに慣れて、
仕事に関する勉強に継ぐ勉強をして、
一生の仕事に巡り合う。
そうすると心のざわざわも、
何とか解消できる。
仕事はありがたい。
〈結城義晴〉