ダイバーシティとマネジメントの「基本は愛情である」
昨日のブログのテーマは、
「ダイバーシティ」だった。
プロテニスの大坂なおみさんは、
全豪女子オープンで優勝したが、
ハイチ共和国出身のアメリカ人の父と、
北海道根室市出身の日本人の母。
アメリカは多様性の国家である。
ドイツのビオンテック社のウグル・サヒンCEO。
妻のオズレム・トゥレシCMOとともに、
COVID-19ワクチンを開発した。
夫妻はトルコ系ドイツ人。
そのパートナーとなったのがファイザー社。
そのアルバート・ブーラCEOは、
ギリシャ出身のアメリカ人。
ゲルマンのドイツ人でもなく、
アングロサクソンのアメリカ人でもない。
そんな人たちが新型コロナワクチンを開発した。
世界は多様性によって、
イノベーションを起こしている。
その意味で日本人は、
弱みを持っているのかもしれない。
多様な民族の人々が、
活躍できる場を用意しなければならない。
私は「商人の本籍地と現住所」と表現する。
これも多様性のひとつである。
商売をする会社の組織も、
純粋培養のプロパー社員だけでは、
ゴーイングコンサーンの成長は保証されまい。
月刊商人舎でも「ダイバーシティ」を、
特集テーマにしたことがある。
2018年1月号。
特集は「2018真の人間産業へ」
この号の[Message of January]
人の強みを発揮させよ。
人間の、
人間による、
人間のための産業。
それが小売流通サービス業だ。
平成の年号が変わろうと、
東京オリンピックが開かれようと、
それが人間産業であることは、
永遠に変わるものではない。
AIが仕事を変えようと、
IoTが広がろうと、
ビッグデータが活用されようと、
ロボットが現場に導入されようと。
人間の、
人間による、
人間のための産業。
それは変わらない。
しかし、好況が続けば続くほど、
失業率が低下すればするほど、
その人間産業に人間が集まらない。
ハイテク産業やIT産業に取られてしまう。
だから主婦を戦力化する。
高齢者の雇用を延長する。
外国人研修生を雇い入れる。
派遣労働者を確保する。
もちろんそれには深い意義がある。
ダイバーシティ経営へのシフトは、
21世紀人間産業の必然の軌道であるし、
未来を切り開く可能性を意味している。
そしてこのとき、
一人ひとりの人の強みが発揮される、
風土と文化と仕組みが、
用意されねばならない。
人間の、
人間による、
人間のための産業の、
人間一人ひとりの強み。
Human Industry SHIFTこそ、
好況のときに人間が集まる、
真の人間産業の、
望ましい未来図である。
この号の巻頭で私は、
「真の人間産業構築を決意する」と題して、
いつものように、
特集の「まえがき」を書いている。
その最後の文章は、
『あしあと』という本からの引用。
イオン名誉顧問の小嶋千鶴子さんの著書。
非売品ながら名著の誉れ高い書物だ。
小嶋さんはイオンの人事責任者として、
この巨大企業の人事教育の基礎を築いた人だ。
この本にはダイバーシティに関しても、
根本となる考え方が記されている。
その一節。
「人事は人間を知ることから始まる。
人間を知ることは
人間を愛することから始まる。
愛することは理解することである。
よりよく知ることである」
「個々人は個々に違う。
違うことを知ることである。
一人一人について、
過去どのように生きてきたかを知り、
今後どのように生きていきたいか
という希望を知り、
今どうしているかを知り、
目標をもたせることである」
これこそ多様性を組織内に定着させる、
考え方のエッセンスだ。
そして小嶋さんは言い切る。
「人事担当者は知ることから始める。
そのためには、聞くことから始める。
注意深く見ることから始める。
基本は、愛情である」
ん~、素晴らしい。
私は感動して書いている。
「人間の、人間による、
人間のための産業は、
ここから始まる。
すなわち一人ひとりを注意深く
見、聞き、知ることから始まる」
「真の人間産業の基本は、
愛情である」
大坂なおみさんは、
愛情をもって育てられたことがわかる。
ウグル・サヒンさんも、
オズレム・トゥレシさんも、
そしてアルバート・ブーラさんも、
きっと愛に満たされて成長したのだと思う。
ダイバーシティ世界。
基本は愛情である。
〈結城義晴〉