厚労省官僚23人宴会のJSTとドラッカーのマネジメント
12月期決算企業の定時株主総会。
今日の3月30日にピークを迎えた。
株主総会の日が集中する理由。
決算期末から3カ月以内に、
総会を開催する会社が多い。
上場企業の株主総会では、
議決権を行使することができる株主を、
特定しなければならない。
そのために、
一定の日を「基準日」として定める。
その基準日の時点の株主を、
議決権行使ができる株主とする。
会社法第124条では、
この基準日の効力が及ぶ範囲を、
3カ月以内に開催した株主総会に限っている。
多くの会社はこの基準日を、
事業年度末日としている。
そして定款で、総会の開催日を、
3カ月以内と定めている。
法人税の確定申告書の提出期限もある。
さらに招集通知の発送などの事務手続きもある。
なかなか大変だ。
そこで多くの会社で、
可能な期限を最大限利用したいと考えて、
3カ月ギリギリの日に集中する。
もちろん、一斉に株主総会が開催されると、
総会屋が出席しにくいという理由もある。
三菱UFJ信託銀行の調査では、
今年3月開催の総会510社のうち、
会場とオンラインとを併用する企業は74社。
全体の15%を占める。
コロナ禍の影響だ。
今日は朝から東京・小平。
第一屋製パン㈱本社。
小平工場が併設されているが、
敷地内は桜が満開だ。
毎年、この桜の下で、
社員・従業員は花見をする。
素晴らしい桜。
しかし昨年も今年も、
新型コロナウィルス感染拡大で、
その花見会は中止。
しかし下から見ているだけで、
桜は満喫できる。
今日は定時株主総会。
旧商法では233条で、
株主総会の開催場所を、
定款に定めがある場所を除いて、
本店所在地、またはこれに隣接する場所で、
招集するよう決められていた。
しかし現行の会社法では、
株主総会招集地の制限規定は撤廃された。
オンラインを採用しても、
会場は設けなければならない。
第一屋製パンは旧商法のままで、
本社に会場を設けて総会を開く。
ウイルス感染防止を徹底しつつ、
オンラインも併用する。
私はこの本社での開催は、
第一パンらしくて、
とてもいいと思っている。
それが会社のポジショニングでもある。
株主もよく理解していて、
発言したい人はわざわざやって来てくれる。
そして温かい励ましや提案をしてくれる。
いい株主。
その期待に応えねばならない。
甘えてはいけない。
それが上場企業の責任である。
さて、厚生労働省にまた事件。
東洋経済オンラインには、
詳しく書かれている。
厚労省官僚
「銀座で0時頃まで23人宴会」のあぜん
老人保健課の職員23人が3月24日夜、
東京・銀座の飲食店で送別会を開いた。
夜11時まで営業している店を探して予約。
マスクもせず、大声で宴会を続けた。
十数人が深夜0時前まで残った。
老健局の老人保健課長は、
大臣官房付に異動させられ、
事実上の更迭。
参加した課長補佐ら14人に訓告、
主査ら5人は注意・指導の処分。
事務次官は厳重注意、
老健局長は訓告。
田村憲久厚労相は、
大臣給与2カ月分を自主返納。
国家公務員法82条。
公務員の懲戒処分は4種類。
免職、停職、減給、戒告。
さらに法律の定めがない2種類。
訓告と厳重注意。
免職は、
公務員の職を失わせる処分で、
いわゆるクビ。
停職は、
一定期間その職務に従事させない処分、
期間中は無給。
減給は、
文字通り俸給の支給額を減ずる処分。
戒告は、
本人の将来を戒める旨の申し渡しをする処分。
訓告は戒告より軽い申し渡し、
厳重注意はさらに軽い申し渡しの処分。
注意・指導はさらにさらに軽い処分。
政府はお詫びをしているけれど、
それで終わるものではない。
しかし私はマネジメントの基本に、
問題があるのではないかと見ている。
行政には「人事院式監督者研修」がある。
「Jinjiin Supervisory Training」。
JSTと略される。
三つのコースがある。
基本コース、専科コース、
そして応用実践コース。
基本コースは「初任監督者に、
仕事の進め方や部下の管理・監督の
基本を修得させる研修」。
基本コースには三つの柱がある。
マネジメントの基本、
リーダーシップ、
コミュニケーション。
この三つの内容のタイトルだけ見ると、
問題はないように見える。
しかしこの「マネジメントの基本」に、
大問題がある。
会社の教育も同じだ。
項目やタイトルだけで判断してはいけない。
JSTは戦後のGHQが準備した、
カリキュラムをベースにしている。
そしてそのGHQのマネジメントは、
アンリ・ファヨールの理論をもとにしていた。
1950年当時の欧米の主流理論だったからだ。
しかしピーター・ドラッカーや、
ヘンリー・ミンツバーグは、
そしてハーバート・サイモンは、
ファヨールをはっきりと否定している。
この内容は、
商人舎ミドルマネジメント研修会で、
じっくりと講義する。
厚生労働省の公務員たちも、
例外なくこのJST研修を受けてきた。
すごい数の公務員たちが全員、
この基礎コースの教育を受けてきた。
中には自分で考える公僕もいただろう。
ドラッカーやミンツバーグを、
自ら学んだ役人も多いに違いない。
それが日本の希望だ。
しかし厚労省の23人は、
この宴会のときには、
ドラッカーやミンツバーグを忘れていた。
X理論の懲戒処分に、
あまり効力がないことは、
この事件が証明した。
ドラッカーはY理論も賛成はしていない。
そのあたりも、
ミドルマネジメント研修会で明らかにする。
23人宴会の事件は、
マネジメント教育の基本の重要性を、
あらためて考えさせてくれた。
〈結城義晴〉