お菓子屋さんの「仲良き事は美しき哉」
2021年ゴールデンウィーク。
とても「ゴールデン」とは思えない。
このところ毎日のように書いている。
新型コロナウイルス新規感染者数。
大阪府が1057人。
東京都が879人。
日曜日の発表にもかかわらず、
これだけ増えている。
大阪府を含む関西の2府4県の合計は、
1931人となった。
日曜日の発表として過去最多。
兵庫539人、京都164人、
奈良98人、和歌山39人、滋賀34人。
全国では5898人の新規感染者。
重症者は1050人。
過去最多を更新。
商人舎では、
ミドルマネジメント研修会を、
6月上旬に再開しようと考えていた。
会場も予約しておさえ、
先生方にも日程を空けていただいて、
準備は終わっている。
受講してくれる企業にもお知らせし、
一般にも公開して告知していた。
しかしこの連休が明けたら、
決めなければならない。
多分、今回も延期ということになる。
残念なことだ。
もちろん感染拡大防止が第一。
人の命が何よりも大切だ。
その命を守り、
命を育む活動を大前提にして、
他の活動をトレード・オンしていく。
だから商人舎は、
紙の媒体と網のメディアで、
研修の代わりをしていく。
今日の日曜日も、
月刊商人舎5月号の最終責了。
1日延びてしまった。
最近はなぜか、
疲れが溜まっている。
さて、糸井重里の「ほぼ日」
今日のダーリンはその巻頭エッセイ。
糸井さんが毎日書く。
4月最後の日のエッセイに、
六花亭の小田豊さんの話が出てくる。
10年ほど前に糸井さんが、
六花亭を取材した。
小田豊さんは、
六花亭の二代目。
初代は小田豊四郎さんで、
商業界のエルダーだった。
つまり故倉本長治の愛弟子で、
商業界全国同友会の重鎮だった。
人格者だった。
その小田豊四郎さんが、
2006年8月に90歳で逝去され、
小田豊さんが亭主となる。
ほぼ日の糸井さんは、
この小田豊さんと交流してきた。
私ももちろん商業界のころ、
小田さんには大いにお世話になった。
糸井さん。
「小田さんと話していると、
いろんなお菓子屋さんの名が、
わりと自然によくでてくるのだ」
「世の中のいろんな業界では、
ぼくの知ってる限りでは
同業他社のことはあんまり
口に出さないように思う」
「だが、お菓子業界では
口に出すとか出さないとか以上に、
互いのお店や工場に
ご子息が修業に出ていたり、
他のお菓子屋さんの
見事な製造技術について、
敬意を込めて語ってくれたりする」
その通りです。
「これは、六花亭さんばかりでなく、
虎屋さんや、一六タルトさんやらと
話しているときも同じなのだった」
一六タルトの一六本舗当主は玉置泰さん。
こちらも商業界で学んだ会社だ。
「一六」の由来は、
明治16年創業だから。
スーパーマーケットも経営している。
愛媛県のセブンスター。
「7つの星」は、
「一六」の1と6を足し算して、
命名された社名、店名。
六花亭は、
「北海道なら雪だ。
雪なら六角だから六花だ」
ということで決まった。
小田さんに質問する糸井さん。
「お菓子屋さんどうしは、
仲がいいんですねぇ」
小田さんの答え。
「それぞれのお菓子が
別だからいいんでしょうかね」
糸井さん。
「どんなに人気のお菓子があったとしても、
日本中の人が一社だけのお菓子を
求めるはずはない」
「あれも、これも、みんなあるから
お菓子はたのしいのだ」
つまり、
「”競合して勝ち負けを繰り返して
独占に至る”…というようなことが
なかったというわけだ」
私の言葉で言えば、
こういったお菓子は、
「ノンコモディティ」だから、
レース型競争はない。
コンテスト型競争だ。
「お菓子で日本一になりたい」
という野心を持っても、
あちこちにいくつもの
“日本一”が存在してしまう」
「お菓子の世界は、
敵を食いつぶすことがなさそうなのだ」
もちろん工場で大量に製造される菓子は、
コモディティ化するから、
そんなことはない。
糸井さん。
「これ、ずっと、
なにかのヒントだ
と思って覚えている」
「もしかしたら、
甘いものばかりじゃなく、
日本酒の世界も?」
これも大量生産の酒はコモディティ、
日本名門酒会などの清酒はノンコモディティ。
しかし日本の商業の世界は、
全体に仲が良かったと思う。
倉本長治先生が、
「和を以て貴しとなす」を貫いた。
商業界ゼミナールがそれだった。
その弟子ともいえる渥美俊一先生は、
ペガサスクラブをつくって、
クラブ会員同士を大いに交流させた。
私も商人舎も、
来る者は拒まず、
去る者は追わず。
仲良き事は美しき哉。
今のようなチェーンストアとなる前は、
商業、小売業はもともとローカルな機能だった。
だから直接的な競合はなかった。
それでも意欲的な商人は、
地域を越えて学ぼうとした。
だから地域を超えて交流した。
アメリカやヨーロッパにも学んだ。
競争が激しくなってくると、
不思議なことに、
コモディティ中心の領域にも、
コンテスト型競争時代が訪れた。
「大和鶴間の陣」では、
イトーヨーカ堂とイオンが、
共同チラシを打つまでになった。
六花亭には社歌がある。
1988年3月 28日に発表された。
作詞・谷川俊太郎、作曲・:林光。
お菓子をつくろう
力をあわせて
よもぎ わらび粉 桜の葉
くず粉 きいちご ふきのとう
大地のいろどりを
うつして 春から夏へ
手はえらび 手はまぜる
手はのばし 手はつつむ
手から手へ伝える安らぎの時
谷川さんの観察が細かい。
いい歌だ。
六花亭の工場では、
ごく一部の工程だけを機械が担当する。
基本的には、人の手でつくられる。
これは農業型ノンコモディティだ。
ゴールデンではない連休。
お菓子やお酒を楽しもうか。
〈結城義晴〉