ジョルダーノの「僕は忘れたくない」に自戒
「感染者の数、
発生地からの距離、
マスクの販売枚数、
株価暴落で失う金額、
検査結果が出るまでの日数と、
数えてばかり」
パオロ・ジョルダーノ。
1982年生まれのイタリア人作家。
素粒子物理学を専攻したあと、
イタリア第一の人気小説家となった。
その著作『コロナの時代の僕ら』から。
新型コロナウイルス新規感染。
東京都が1121人、
大阪府が1021人。
愛知県が575人で過去最多。
はじめて1日に500人を数えた。
兵庫県は568人。
福岡県も519人で過去最多。
こちらもはじめて500人を超えた。
北海道も403人で過去最多。
はじめて400人を超えた。
数えたくはないけれど、
検査をして数えなければ、
実態を把握することはできない。
ジョルダーノ。
「コロナは今、
僕らの文明を
レントゲンにかけている」
「恐怖にも浸され、
頭がいっぱいだけど、
それでも
“今までとは違った
思考をしてみるための空間”を
確保しておこう」
ジョルダーノはこのエッセイで、
「僕」を主語にする。
そして「忘れたくない」ことを列挙する。
「僕は忘れたくない。
この自己中心的で愚鈍な自分を」
以て自戒とすべし。
「僕は忘れたくない。
頼りなくて、支離滅裂で、
センセーショナルで、
感情的で、いい加減な情報が、
今回の流行の初期に
やたらと伝播されていたことを」
私はこれにも自戒する。
「僕は忘れたくない。
政治家たちのおしゃべりが突如、
静まり返ったときのことを」
「僕は忘れたくない。
今回の緊急事態があっという間に、
自分たちが、
望みも、
抱えている問題も、
それぞれ異なる
個人の混成集団であることを
僕らに忘れさせたことを」
1年が経過して、
冷静を保つ人もいれば、
どこかいら立つ人たちもいる。
「僕は忘れたくない。
今回のパンデミックのそもそもの原因が
秘密の軍事実験などではなく、
自然と環境に対する
人間の危うい接し方、
森林破壊、
僕らの軽率な消費行動にこそ、
あることを」
作家村上春樹も同感のようだ。
自らDJを務めるラジオ番組
「村上RADIO」
村上はコメントした。
「コロナは突発的な疫病なんですけど、
グローバル化、気候の温暖化、
SNSの普及、ポピュリズムの台頭、
貧富の差の拡大という世界の全体的な潮流の
一部みたいな気がしてならないんです」
『コロナは時間を早める』にも引用した。
ジョルダーノと村上の発言。
作家の感性が語らせている言葉を、
私たちも忘れてはならない。
村上は続ける。
「言葉のない政治家は、
ブルースコードが弾けない
エリック・クラプトンだ」
沖縄タイムズの巻頭コラム「太弦小弦」。
コラムニストの吉田央さん。
「官僚が書いた借り物の言葉では、
市民を勇気づけられない」
昨日の菅義偉首相の言葉。
緊急事態宣言三度目の延長のときの、
国民へのお願い。
残念だが、どうも響かない。
ジョー・バイデン大統領に面会した際に、
自分だけコロナワクチンを打って、
高みの見物の気分なのではないか、
なんてゲスの勘繰りをしてしまう。
そのゲスの勘繰りをしている自分自身が、
なんとも情けない。
ジョルダーノに叱られてしまう。
「僕は忘れたくない。
この自己中心的で愚鈍な自分を」
さて今日、
横浜のヨドバシカメラで、
iPhone12を購入。
買い替えるだけで5時間もかかった。
そのうえセッティングを変えたり、
データを移行させるのに、
クイックスタートという仕組みを使うが、
これまた数時間。
68歳の私にとっては全然、
クイックではなかった。
それでもキャッチコピーは、
「早い話、速いです」
最近は「はやい」という言葉に、
どうも敏感になった。
5Gの速さ。
OLEDディスプレイは、
エッジからエッジまで広がる。
耐落下性能は4倍。
しかもメーカーを乗り換えたら、
毎月の料金は半額。
スマホ業界に操られている気もするが、
それでも「速さ、広さ、強さ」はいい。
ただし、ここでもジョルダーノ。
「僕は忘れたくない。
今回のパンデミックのそもそもの原因が
秘密の軍事実験などではなく、
自然と環境に対する
人間の危うい接し方、
森林破壊、
僕らの軽率な消費行動にこそ、
あることを」
軽率な消費行動かもしれない。
それも忘れてはならない。
自戒すべし。
〈結城義晴〉