6月1日衣替えと「きつく まとまり そなえる」
今日から6月。
6月1日は夏物への衣替え。
10月1日は冬物への衣替え。
風まとひゆける身軽さ更衣
〈稲畑汀子〉
稲畑汀子は高濱虚子の孫娘。
風をまとってゆくのが気持ちいい。
更衣年輪人をつくりけり
〈鈴木真砂女〉
樹木が年輪を刻むように、
衣替えをするたびに人がつくられていく。
今日から9都道府県で、
緊急事態宣言の延長。
5月23日適用開始の沖縄県と合わせて、
10都道府県が20日まで緊急事態となる。
これに伴って、
対象地域の東京や大阪では、
営業制限が緩和される。
東京と大阪は、
1000㎡超の百貨店やSCに対して、
平日午後8時まで全館営業が認められた。
休日は引き続いて、
生活必需品売場を除いて休業が求められる。
日経新聞が報じた。
三越伊勢丹は伊勢丹新宿本店をはじめ、
都内の4店舗で平日全館通常営業に戻す。
4月24日以来、38日ぶり。
ただし、土日曜は、
「生活必需品」売場だけ営業し、
宝飾やアクセサリー、美術などは休業。
高島屋、J・フロントリテイリング、
そごう・西武、近鉄百貨店なども、
平日の全館営業を再開。
これらも土日曜の密になりやすい日は、
各社ごとに生活必需品売場だけ営業する。
企業ごとに高級ブランド品は、
対応が分かれた。
三越伊勢丹は事前予約制で、
土日用の高級ブランド売場を再開。
そごう・西武や松屋は、
土日の高級ブランド売場は休業。
よくわからないが、
なぜ足並みを揃えないのだろうか。
イオンも緊急事態宣言の対象地域で、
営業体制を見直す。
大阪府のイオンモールなどでは、
平日は専門店も含めて全面的に営業再開。
土日休日は一部テナントを除いて休業。
それでもほっと一息だろう。
ソーシャルディスタンシングをはじめ、
マスク、手洗い、消毒、非接触に関しては、
もう十分に習慣化されている。
日本の小売業・サービス業、
見事なほどだ。
しかし慣れと緩みは怖い。
それを避けたい。
徹底とは、
詳細に、厳密に、
継続すること。
こまかく・きびしく・しつこく。
さて昨日の日経新聞「核心」
論説フェローの 芹川洋一さん。
BSテレ東「NIKKEI日曜サロン」キャスター。
「なぜコロナに敗れたのか」
〈NIKKEI 日曜サロンホームページより〉
政治学者の丸山真男を引用。
「歴史意識の『古層』」という論考から、
「つぎつぎに なりゆく いきほひ」――。
これに倣って、
COVID-19への日本の対応をまとめる。
「ゆるく ばらばら のんき」――。
「日本という国家の劣化」を表している。
1945年の敗戦、
90年代の経済敗戦、
そして3度目のコロナ敗戦。
第一の「緩い」は、
制度。
まず法体系が緩い。
「欧州型は厳しい人権の制約がある。
同時に厳しい統制もある。
日本は個人への規制も行政への統制も
緩やかだ」
「憲法には
私権を制限する緊急事態条項がない。
改正後のコロナ対策の特別措置法も
強い罰則はない」
「個人をしばるのは
空気という無言の同調圧力である。
法律しばりではなく世間しばりだ」
この指摘は的確だ。
次に行政の対応も緩い。
「ワクチン接種予約の受け付けでも
差をつければよいものを、
それはしない」
「平等にやろうとして
電話回線がパンクして、
混乱を助長する」
第二の「ばらばら」は、
運用の問題。
90年代からの政治改革と
省庁再編・内閣機能の強化をつうじて、
政府と自民党による二元体制をあらため、
首相官邸に権力を集中するかたちを整えた。
しかしコロナの対応では、
やはりうまく回らない。
「一義的には
厚労省の対応のまずさによるものだが、
官邸が全体と流れをつかんで
チームとしてまとまって
手を打つことができないでいる」
国と地方の関係もギクシャクしどおしだ。
第三の「呑気(のんき)」は、
人の問題。
「政治家の危機意識の欠如」
「特措法の改正などにしても
国会がなかなか動かなかった。
安倍内閣で安保法制をまとめ
防衛上の危機への備えは一応進めたものの、
感染症にはまったく備えがなかった」
「準備がないから対応は
どうしても場当たり的になる。
最悪の状態を想定し
そこから危機をいかに最小化し
管理していくかに失敗する」
これはリスクマネジメントの欠如である。
芹川さんは前向きにとらえる。
そこで「ゆるく ばらばら のんき」に対して、
対義語を考える。
「きつく まとまり そなえる」――。
結城義晴の「徹底」にちょっと似ている。
私権の制限をある程度認める、
法体系に改めるのが第一。
リーダーシップとチームワークで、
一元的な権力の運用を徹底するのが第二。
第三は危機意識をもった
リスクコミュニケーション能力の高い
政治指導者を養成していく。
いずれもすぐには無理だ。
しかし、
「われわれには
国家の危機を乗りこえた歴史がある。
明治維新だ」
「コロナは時間を早める」にも、
第四章・第五章で、
同じ趣旨のことを書いた。
「重要な判断基準は……
日本にとってもっとも重要な問題に、
もっとも優れた人材が、
意思と能力のある人の衆知を集めて、
手続き論や世論の支持は二の次にして、
取り組んでいるかどうか、
ということである」
現状はそうではない。
「とすれば明治維新のように、
力量は未知数であっても
一気に世代交代をして、
しがらみのない若いひとたちに
国の将来をゆだねる」
同感だ。
国も産業も企業も、
今年の商人舎標語。
「若返れ!」
「時代と時代の節目のとき。
“断絶”を乗り切る武器は若い力である。
若さによってしか、
“時代の溝”は凌げない。
だから組織は若返るべきだ」
これしかない。
河野太郎だって、
もうギリギリの若さだ。
時間はない。
「風まとひゆける身軽さ」
これは衣替えのように若返ることである。
〈結城義晴〉