宮内義彦「コロナ敗戦」と日本の「凡事徹底・有事活躍」
2021年7月最後の日。
土曜日だが商人舎オフィスに出社。
裏の遊歩道。
緑がまぶしいし、
蝉の声がうるさいくらいだ。
あっという間に夕方がやってくる。
それでも仕事をした充実感がある。
これがあるから生きられる。
仕事があるから明日が拓かれる。
でも、新型コロナウイルス感染。
新規感染者は激増し続ける。
今日1日、全国で1万2341人から、
陽性反応が確認された。
過去最多。
東京都は4058人。
初めて4000人を超えた。
神奈川県は1580人、
大阪府は1040人、
埼玉県は1036人。
千葉県は792人。
福岡県は504人、
沖縄県は439人。
大阪府を除いて、
過去最多ばかリ。
なぜだろう。
菅義偉首相は言っている。
「人流は減っている」
この根拠のない発言に対しては、
これら数字が真っ向から反論している。
人が動いて、
人と人が接触して、
感染が起こる。
それが増えているから、
過去最多が増える。
このままお盆に突入したら、
今度は地方にこの過去最多が、
伝染していく。
それをどう食い止めたらいいのか。
東京オリンピックは、
開会式の7月23日から数えて、
閉会式まで今日がちょうど中間点。
日本は17個の金メダル、
5個の銀メダル、8個の銅メダル。
素晴らしい。
柔道混合団体戦は、
惜しくもフランスに負けて銀メダル。
しかしサッカー日本代表の準々決勝。
ニュージーランド戦。
最後はペナルティキック戦。
ゴールキーパー谷晃生の活躍で勝利。
準決勝の相手はスペイン、
その次の決勝は多分、ブラジル。
すごいところまできた。
信じられない。
野球の侍ジャパンも、
山田哲人、坂本勇人のホームランで、
強敵メキシコに快勝。
オープニングラウンド2連勝で、
次はアメリカと事実上の決勝戦。
こちらもいい状態で来た。
メダルを取れなかった競技でも、
その真摯で必死のプレーは、
新型コロナの気分を吹き飛ばす。
日本中が沸き返った。
しかしそれでも、
感染拡大は留まるところを知らない。
日経新聞電子版「経営者ブログ」
オリックスのチェアマン、
宮内義彦さん。
「新型コロナを体験して
特に衝撃を受けたのは
行政の能力不足とデジタルの遅れでした」
「日本の政治や行政に、
非常時への対応能力がないということ」
これは国民が痛感した。
宮内さんが驚いたのは、
「各地の知事が
東京から来ないでくださいなどと
都道府県が鮮明になったこと」
「幕藩体制ではあるまいし、
県境などどんな意味があるのでしょう」
その通り。
これは縄張り意識だ。
チェーンストアの展開においても、
県の境はほとんど意味がない。
それよりも物流や顧客の流動性が優先される。
「パンデミック対策としては
首都圏、京阪神、中京といった
過密地域を特定して
対策にあたるべきは明確です」
求められるのは、
「行政区画の機動的な選定、
責任体制が組める非常時体制の確立」
次がワクチン接種。
「高齢者にこんな無理を強いる
行政とは何なのか、
大きな怒りを感じました」
さらにその接種も、
「その開始は欧米に比べ、
半年くらい遅れています。
一体どんな経緯で
こんなことになったのでしょう」
「当初から民間企業の協力を得ながら
オール日本で取り組んでいれば、
こういう事態にはならなかったはずです」
これも同感だ。
「政治や行政が規則やルールに縛られ
自縄自縛になり、非常時にも
平常時対応しかできないのです」
つまりリスク・マネジメントの欠落。
「自助・共助・公助」と言いながら、
その「公助」に危機管理能力がない。
アメリカの2005年。
ハリケーン「カトリーナ」来襲のとき、
連邦緊急事態管理局よりも、
ウォルマートの方がはるかに機敏に動いた。
宮内さんは指摘する。
「保健所のキャパシティーが、
国全体のキャパシティーと、
なってしまった」
ボトルネックである。
「日本の政治や行政は、
予算をいくら付けるかに
重点を置いてきました」
「しかしきちんと執行できない政策は
意味がありません」
「社会の格差が広がるなか、
行政の効率と執行力が
より問われるようになっています」
会社も同じ。
効率と執行力。
「極めつけは酒や飲食店が
大いに悪者に仕立て上げられた上、
生活維持に必死な業者を
行政圧力で従わせようとした発想です」
「反発しない方がどうかしています。
政治センスも駄目でした」
宮内さんも怒っている。
「もっとも、新型コロナ対策が
これほど後手に回っていながら、
欧米に比べ感染者数も死者数も
少ないのも事実です」
「強制されなくても
マスクを着けているのは、
日本人ならではの良さかもしれません」
日本人の誠実さ、勤勉さが、
コロナ感染を防いでいる。
感染者が少ないのは、
政治や行政の力ではない。
「ワクチン接種がこのまま進めば、
秋ごろには新型コロナ感染は
落ち着くとの見通しがあります」
そうなるといいのだが。
政府規制改革会議議長などを、
歴任した宮内さんの最後のMessage。
「気をつけたいのは、
これまでの新型コロナ対策が
しっかりと検証されず、
曖昧なまま終わってしまうことです」
「今回は政治や行政が十分に機能せず、
まさに”コロナ敗戦”とも
呼ぶべきものでした」
そう、コロナ敗戦。
私は「人災」だと言い続けている。
著書にも、書いた。
「これを機にウイルスに限らず、
戦争、領土問題、経済安保、
サーバー攻撃、災害対策など、
有事での日本の危機対応力を真
剣に見直さなければ、
日本は同じような過ちを
繰り返すことになるでしょう」
国も産業も企業も、
凡事徹底・有事活躍が必須だ。
もちろん、スポーツも。
凡事は練習、有事は試合。
〈結城義晴〉