「ケなのにハレ」のヤオコーと「ケ」に徹するフーコット
8月3日。
暑いを通り越して、熱い。
この暑さのピークは明後日ごろ。
今年はお盆も暑い。
積乱雲が盛り上がる。
そして東京五輪が開催されているが、
今週金曜日の8月6日は、
広島への原爆投下の日。
五輪閉会式が終わって、
山の日の振り替え休日の8月9日は、
長崎への原爆投下の日。
そしてお盆の真ん中の8月15日は、
終戦の日。
夏が暑ければ暑いほど、
76年前のその夏を忘れてはならない、
という思いは強くなる。
私だって生まれてはいなかったけれど。
世界からアスリートが集うオリンピック。
その最中(さなか)の広島原爆投下の日。
世界中に正しく認識してもらいたい。
その機会にしたい。
今日の朝日新聞「天声人語」
テーマは「ハレとケ」
柳田國男が見出した概念。
民俗学や文化人類学で言う、
日本の伝統的な両極の暮らし方。
「ケ」は日常的な空間で、
労働を中心とするもの。
「ハレ」は非日常の空間で、
正月や盆、祭りなど特別なもの。
チェーンストアやスーパーマーケットは、
「ケ」の産業だとされた。
一方、百貨店や高級専門店は、
「ハレ」の小売業だという。
コラムは今の暮らしに当てはめる。
「コロナで
行動を抑制せざるをえない日常が
“ケ”であろう」
「東京五輪による気持ちの高ぶりは
“ハレ”そのものだ」
そして指摘する。
「第5波ともいえる感染拡大のなか、
“ケなのにハレ”という
ややこしい事態に陥っている」
ケなのにハレ。
「五輪関連イベントなどの盛り上がりが
感染対策と矛盾するメッセージになり、
人びとの警戒心が緩んでしまうのではないか」
「政府は、感染拡大と五輪は
関係ないと言い続けている」
そして朝日の主張。
「今なすべきは
五輪による緩みがあるのを
前提に対策を立て、
強いメッセージを発すること」
しかし「ケなのにハレ」はもう、
コロナ禍前から始まっていた。
チェーンストアが、
ロングテールの商品を扱う。
高質スーパーマーケットが登場する。
これは「ケなのにハレ」だ。
一方、デパ地下はどんどん「ケ」に近づく。
こちらは「ハレなのにケ」である。
ハレとケを上手に使い分けて、
あるいはハレとケを融合させて、
豊かな生活を営む。
それが現代人の生き方。
そしてその生活を支える小売業の在り方。
今日、㈱ヤオコーが、
新フォーマットをお披露目した。
子会社の㈱フーコット。
第1号店を埼玉県の飯能市にオープンさせた。
ヤオコーと言えば、
ライフスタイルアソートメント。
これはケの商売に、
上手にハレを盛り込んだ考え方だ。
そのヤオコーがあえて、
ディスカウントスーパーマーケットに、
「挑戦」する。
これは「ケ」に徹する商売だ。
このフーコットのことは、
私の本にも書いた。
『コロナは時間を早める』
第六章は「ポスト・コロナ時代への決断」
その最後の節は、
ヤオコーの「フーコット」始動の時代観。
私はヤオコーのフーコットを、
日本の小売業界にとって、
極めて重要な現象であると考えた。
ぜひ読んでほしい。
商人舎に直接お申込みいただくか、
アマゾンで注文するか。
「Foocot」の意味するところは、
“Food cost performance market”
「商品の圧倒的な安さと
鮮度、品揃えで満足できる店」
今日は訪れることができなかった。
しかしチラシやレイアウトなどの、
資料は手に入った。
非食品は扱わず、
現金決済のみ。
これは㈱ロピアの方針に似ている。
レイアウトは私の予想とは違っていた。
もっともっとシンプルにしたほうが、
いいのではないかとも思う。
もちろん店を見ずに判断してはいけないが。
チラシでは、
エブリデーロープライスを謳いながら、
日替わり特売をする。
だがこのフォーマットの場合、
何よりも重要なのはオペレーションである。
どうなっているか、興味がわく。
それは店を見て分析しよう。
「ケなのにハレ」のヤオコーと、
「ケ」に徹するフーコット。
ダイエーも失敗した。
イトーヨーカ堂もとん挫した。
しかしヤオコーは、
ポスト・コロナ時代への決断として、
果敢に挑戦する。
期待しつつ、動向に注目しよう。
〈結城義晴〉