山本耀司「Y’s」の盛衰と「あってあたりまえの店」
Everybody! Good Monday!
[2021vol㊳]
2021年第38週。
9月第4週。
今日は敬老の日の祝日。
三連休の最後の日。
そして秋の彼岸の入り。
今週木曜日が秋分の日の祝日で、
彼岸の中日。
そして次の日曜日の26日が彼岸明け。
今週は彼岸週間。
そして月曜日が敬老の日、
木曜日が秋分の日。
ゴールデンウィークとは比べようもないが、
シルバーウィークと呼ばれる。
今週の私は結構、忙しい。
今日は商人舎オフィスで、
ビデオの撮影。
2つのテーマで、2本撮影した。
45分と30分。
私は基本的にテイク1で終わる。
つまり1回撮り。
実際に聴衆がいるつもりで、
真剣勝負で、熱意を込めて話す。
だからテイク1。
テイク2にする場合がないわけではない。
最初の数秒、あるいは10秒くらいで、
噛んだり、言い間違いをしたりする場合は、
テイク2にする。
今日の最初の45分は、
完璧なテイク1だった。
2本目の30分ものでは、
二言目で噛んで、
テイク2にした。
それでも真剣勝負で集中する。
だから、ひどく疲れる。
1日分の仕事は十分にやった、
あるいは90分や120分の講演を終えた、
といった満足感がある。
お疲れ様。
ありがとう。
日経新聞最終面「私の履歴書」
今月は山本耀司さん。
㈱ワイズの創業者で、
ファッションデザイナー。
もう77歳。
慶応義塾大学を出て、
母の衣料店で働きながら、
文化服装学院へ通う。
新人登竜門の装苑賞など受賞して、
ぐんぐんと頭角を現す。
山本の頭文字をとって「Y’s」を創業。
パリにも進出して、時代の寵児となる。
山本耀司のワイズ。
川久保玲のコム・デ・ギャルソン。
同じ「前衛」としてくくられ、
「コインの表と裏」の関係となった。
しかし山本は男であり、
川久保は女である。
そこが違ったし、
互いに切磋琢磨しつつ、
ある意味で補完関係を保った。
山本は女を「格好良く」するために
男の目線から服を作るが、
川久保は女の目線から服を作る。
ワイズとコム・デ・ギャルソンは、
世界のモード界を一変させたといわれた。
そのうねりが日本にも逆輸入された。
「DCブランドブーム」である。
デザイナーズ&キャラクターズ・ブランド。
「1980年代、全国あちこちの街角に
黒ずくめの服装で髪を短く刈り上げた
“カラス族”が出現した現象」
「え、うそだろ。
きっとこれ、何かの冗談だよね?」
山本の驚き。
81年11月13日夜。
東京の田園コロシアムで開いた、
Y’sの野外ショー。
パリのショーをそのまま、
東京に持ってきたイベント。
観客は約8000人、
田園調布駅から会場まで、
長蛇の列ができた。
「おい、すごいなぁ。
ファッションで人がこんなに呼べるなんて
信じられないよ」
演出家の蜷川幸雄さんが、
真顔で感心した。
そのころ私は㈱商業界で、
食品商業の編集記者だった。
それまでの商業界では、
販売革新がトップ雑誌だった。
その販売革新を、
食品商業は急追していた。
しかしファッション販売が、
猛烈に追い上げてきた。
このDCブランドブームに乗っていた。
山本耀司さんや蜷川さんの驚きは、
専門雑誌にも同じような衝撃を与えた。
その後、商業界では、
食品とファッションが中核雑誌となった。
専門の時代である。
DCブームが去ると、
ファッション販売は、
ハウスマヌカンのための雑誌から、
ファッションアドバイザーの雑誌、
さらにショップスタッフの雑誌へと変貌した。
同時にどんどん衰退していった。
その後は、食品商業が、
圧倒的なトップ雑誌となった。
食品商業は「使う雑誌」と称して、
徹底して現場に役立つ雑誌をつくった。
もちろん、
経営理念や経営戦略を解析した上での、
「使う雑誌」である。
自慢話になって恐縮だが、
編集長は結城義晴だった。
山本耀司さんや川久保玲さんは、
あの1980年代のことを、
私に思い出させてくれる。
時代が変わるのは、
バブル崩壊の1991年からである。
その後は、ユニクロの独壇場となる。
さて朝日新聞「折々のことば」
第2150回。
遠くにある好きな店が、
変わらず続いてると、
本当に嬉しい。
そんなこの頃だ。
(井之頭五郎)
ドラマ「孤独のグルメ」
シーズン9・第1話から。
原作は久住昌之、脚本は田口佳宏。
「輸入雑貨商の井之頭は
久しぶりに訪れた学生街で
洋食店が昔のまま営業していて、
なんか嬉しくなった」
「感染症の流行が長引く中、
私たちはこれまで
あって当然だったものが、
愛(いと)おしいほどに
有り難いものだと知った」
「それらが
人びとの寡黙な営みに支えられて
あたりまえであったことを」
スーパーマーケットも、
ドラッグストアも、
ホームセンターも、
コンビニエンスストアも、
そしてファッションストアも、
あってあたりまえの存在だ。
ファッションに流され過ぎて、
去っていく店もあるが。
山本耀司の㈱ヨウジヤマモトは、
2009年10月8日、民事再生法適用申請。
もちろん山本さんは、
個人的にはデザイナーとして、
大活躍しているし、
Y’sもマルチブランド化して、
残ってはいる。
が、「DCブランド」は今や、
死語となってしまった。
では、みなさん、今週も、
流行に流され過ぎずに、
あってあたりまえの店を、
堅持しよう。
ありがたいことだと感謝しつつ。
Good Monday!
〈結城義晴〉