渋沢栄一「凡庸と才覚」とドラッカー「組織の手段と目的」
日本経済新聞最終面の「交遊抄」
今日は牛窪恵(うしくぼめぐみ)さん。
マーケティングライター。
交遊のお相手は、
亀川雅人教授。
立教大学大学院ビジネスデザイン研究科を、
開設した立教大学名誉教授。
私も亀川先生からお呼びいただいて、
2009年に同研究科の特任教授に就任した。
その前に、㈱商人舎発足の際には、
発起人になっていただいた。
牛窪さんは2017年に同研究科に入って、
亀川先生に師事。
MBAのマスターをとって、
優秀論文賞を獲得。
昨2020年から同研究科客員教授。
もちろん、
マーケティングライターとして、
トレンド研究の成果を発表し続ける。
「人生で最も面白い授業」をしてくれたのが、
亀川雅人先生だと牛窪さんは言う。
「人はロビンソン・クルーソーのように
一人で生きられないからこそ
互いに何かを持ち寄ることに価値があり、
それが経済の根本だという授業に
感銘を受けた」
「牛窪さんなら大丈夫です、
全く心配していません」
初めて相談に行った時の、
亀川先生の言葉。
「常に”横から目線”で指導してくれた」
わかる、わかる。
亀川さんはそんな人。
修士論文のテーマを決める際も、
「研究者は自分のやりたいことを
突き詰めるべきだ」
と背中を押してくれたそうだ。
そのテーマは、
「働く既婚女性の調理外部化」
否定的な先生も多かったらしい。
まあ、ずいぶん狭い範囲の研究だが、
私も了解しただろう。
立教ビジネスデザイン研究科での、
うれしい交遊抄だ。
さて今日は9月下旬にしては暑い。
それでも見あげると秋の空。
午前中から横浜商人舎オフィス。
撮影隊がやって来て、
セッティング。
㈱万代の取引先会のためのビデオ講演。
「万代ドライデイリー会」という。
狭いながらも楽しい我が家♬
そこに撮影機器を持ち込んで、
急遽、スタジオのようにしてくれた。
私は講演の準備。
セッティングが終わると、
ピンマイクをつけてもらう。
準備が整ったら、
みんなでモニターを覗く。
そして「サン、ニ、イチ」、
声を出さずに「ハイッ」。
一気に42分、語った。
みなさん、ありがとう。
ほんとうに気持ちよく語ることができた。
撮影クルーが引き揚げたら、
前田仁さんと陶女史が合流。
前田さんは万代ドライデイリー会事務局長、
陶さんは㈱MDサポート社長、
そして撮影隊長の曽根修さん(左)は、
㈱万代総務部付業務サポートチームシニアリーダー。
陶さんが持ってきてくれたのが、
「Lovely Curry」
陶さんが自分の好みで、
自分の会社でつくった、
超高級レトルトカレー。
食べた段階でその評価をしよう。
ご期待ください。
毎日新聞巻頭コラム、
昨日の「余禄」
「はばかりながらいわせてもらえば、
官吏は凡庸の者でも勤まりますが、
商工業者は相当に才覚ある者でなければ
勤まりません」
渋沢栄一が大蔵省を辞し、
日本初の銀行を創業した当時の言葉。
「銀行」という言葉も渋沢が選んだ。
「金行」や「銀舗」などの候補があった。
「日本資本主義の父」
渋沢が創業したのが、
「第一国立銀行」
それがみずほ銀行の最も古い起源である。
そのみずほ銀行はこのところ、
システム障害が多発。
そこで金融庁が、
異例の行政処分を発動した。
みずほ銀行は、
第一勧業銀行と富士銀行、
日本興業銀行が合併してできた。
しかしその合併前の旧行意識の壁が、
問題視されている。
いま、小売業でも、
合併や企業統合が多発している。
イオンとフジとマックスバリュ西日本。
H20リテイリングと関西スーパー、
そしてオーケー。
しかし旧会社の組織の壁を外して、
どのように融合するか。
それが最大の問題だ。
コラム。
「一昨年導入した新基幹システムも
各旧行の取引先企業複数が
その構築に関与した」
そこでコラムの皮肉な結語。
「”相当な才覚”もばらばらでは
“凡庸”の管理下に置かれる」
まあ、今や、
メガバンクも金融庁も、
そこでは官僚化が跋扈している。
私は戦後GHQが施したマネジメント教育に、
大きな問題があったと講義している。
MTPとJST。
Management Training Programと、
Jinjiin Supervisory Training。
どちらもアンリ・ファヨールの理論を、
その体系のベースにしていた。
そしてドラッカーはファヨールを、
徹底的に否定している。
ドラッカーの指摘にある。
「組織は手段である」
それにもかかわらず、
官僚化は、
「組織を目的化する」
渋沢栄一のころに、
もちろんドラッカーはいなかった。
だから渋沢が限りなく、
ドラッカーに近いと仮定すると、
その言葉を言い換えることができる。
「凡庸の者」は
組織を目的化し、
「才覚ある者」は、
組織を手段とする。
大企業化し官僚化した商工業者は、
凡庸な官吏と同質化してしまう。
すべての官僚やすべての銀行マン、
すべての大企業の人間が、
ドラッカーに批判される考え方を、
もっているとは言わない。
しかし組織は手段である。
組織を目的化してはならない。
これは自民党総裁選挙にも、
ちょっと当てはまる。
〈結城義晴〉