加藤徹の「食品産業功労賞」受賞と高原豪久の「OODAループ」
日本食糧新聞社が制定し、
農林水産省が後援する。
食品産業功労賞。
日本食糧新聞創刊25周年を記念して、
昭和42年(1967)年に始まった。
現在は特別賞と生産部門、技術部門、
流通・情報部門、外食部門から、
それぞれわが国食品産業界に貢献し、
偉大な功績を残した功労者が顕彰される。
今年度の第54回までに、
流通部門では185人の経営者が、
この賞を受賞している。
昭和63年の第21回では、
故中内功㈱ダイエー会長兼社長(当時、以下同じ)
平成4年の第25回では、
伊藤雅俊㈱イトーヨーカ堂社長。
この年の外食部門には、
故藤田田日本マクドナルド㈱社長。
そして平成5年の第26回は、
岡田卓也ジャスコ㈱会長。
平成6年の第27回は、
故西川俊男ユニー㈱会長。
平成7年の第28回は、
故高丘季昭㈱西友会長と、
故夏原平次郎 日本流通産業㈱社長。
さらに平成8年の第29回は、
故北野祐次㈱関西スーパーマーケット社長。
最近で言えば、
平成26年の第47回には、
掛川興太郎㈱ツルヤ会長と、
千野和利㈱阪食会長。
平成27年度の第48回は、
川野幸夫㈱ヤオコー会長。
昨令和2年度の第53回は、
上田真㈱マルエツ会長、
三浦紘一㈱ユニバースCEO、
宗兼邦生㈱フレスタ社長。
そして、
今年度の第54回の流通部門は、
加藤徹さんが受賞した。
㈱万代リテールホールディングス社長で、
㈱万代前社長。
㈱万代油脂工業社長。
72歳。
会長制を採用していない万代では、
まあ、会長のような役割である。
選考委員がすごいメンバーだ。
浅野茂太郎明治ホールディングス元社長、
池田弘一アサヒグループホールディングス社友、
歌田勝弘味の素社元社長、
垣添直也日本水産元社長、
國分勘兵衛国分グループ本社会長兼CEO、
正田修日清製粉グループ本社名誉会長相談役、
田中茂治日本アクセス元社長、
中野勘治三菱食品前会長、
茂木友三郎キッコーマン取締役名誉会長、
そして今野正義日本食糧新聞社会長CEO。
加藤徹さんは、
このブログにはよく登場するが、
晴れがましいところにはほとんど出ない。
ごくごく控え目な経営者だ。
それが加藤徹の主義でもある。
それでも万代を、
関西トップのスーパーマーケットに育て、
その近代化・現代化に大いに貢献した。
「日本一買物に行きたい店舗、
日本一働きたい企業」
このビジョンをつくり、
本気でそれを目指す会社となった。
日本のスーパーマーケットで多分、
一番最初に企業内大学をつくった。
「万代知識商人大学」
遅いくらいの受賞だと思う。
加藤さん、おめでとうございます。
来週木曜日の11月4日に、
贈呈式が行われる。
さて、日経新聞電子版「経営者ブログ」
高原豪久さん。
ユニ・チャーム社長。
60歳。
サウジアラビアの現地法人の話を通して、
経営に重要な印象的なことを考察する。
第1は、
「見えない課題を見える課題にすると、
閾値(いきち)を超える」
閾値は「しきいち」とも読むが、
ある作用によって生体に反応がおこる場合、
反応を起こすのに必要な最小の強度をいう。
「限界値」とも言われるが、
私が使う「臨界量」や「爆発点」とも、
同じような意味だ。
本田宗一郎ホンダ創業者は言う。
「人間の知恵というものは、
見たり聞いたり試したりして、
この3つで我われは大体
こうやるべきだという判断をしているんだね。
しかし、この3つの要素のうち、
大切なのは見たり聞いたりではないんだね。
試したりということが、
いちばん判断の資料になるんだね」
ユニ・チャームでは、
「為さざる失敗」という言葉を戒めにする。
「失敗と成功は裏腹です」
高原さんは述懐する。
「自身の過去を振り返ってみても、
失敗の回数に比例して成功している」
そう、
失敗の回数に比例して、
成功する。
閾値を超えるために、
失敗を繰り返す。
第2は、PDCAサイクルの発展形。
「Plan計画・Do実行・Check評価・Action改善」から、
OODAループに舵(かじ)を切った。
戦闘機のパイロットは、
一瞬で敵機か友軍機かを見極めて、
攻撃の是非を決める。
その一連の思考と動作が、
理論化されたものがOODAだ。
Observe(監視)
Orient(情勢判断)
Decide(意思決定)
Act(行動)
年次・月次・週次・日次と、
PDCAを回すレベルから、
瞬時に状況判断して、
対応を迫られるレベルへ。
それは経営環境が変化したからだ。
時間軸が早まったからだ。
「最前線で休むことなく、
縦横無尽にOODAループを実践している
現場の人の意見を、
素直に、謙虚に、
そして真剣に聞くことが大事です」
PDCAサイクルから、
OODAループへ。
COVID-19の渦中にも、
高原豪久とユニ・チャームは、
一段と進化している。
恐るべし。
〈結城義晴〉