大谷翔平・藤井聡太、京都の店々のポジショニングの闘い
おめでたいことの三重奏。
11月の満月。
アメリカでは「ビーバームーン」、
あるいは「フロストムーン」と呼ぶ。
それが今夜。
さらにこの満月は、
ほぼ皆既月食の深い部分月食。
89年ぶりのこと。
次は65年後。
もう生きてはいない。
地球が太陽と月の間に入ると、
地球の影が月にかかる。
これによって月が欠けて見える。
それが月食。
反対に太陽が月によって覆われて、
太陽が欠けて見えるのが日食。
今回は月の97.8%が欠ける部分日食だった。
しかも約3時間30分に渡る部分月食。
2000年代で過去最長。
昔々は月食を不吉なことと見たが、
現在は天体ショーのごとく位置づけられ、
人々が喜ぶ。
人間は何ごとも、
いいことと捉えるようになった。
それ自体は良いことだ。
そして「ショータイム」。
大リーガー大谷翔平。
二刀流の活躍は価値がある。
ジェイ・バーニーの言う希少性があるうえに、
もう模倣困難性の世界にある。
100年前のベーブルース以来。
その大谷翔平が、
2021年度MVPに選ばれた。
30人の記者全員が投票して満票。
来年も敵は怪我だけ。
文句なし。
喜ばしいことだ。
アメリカ人たちが祝福してくれる。
それこそ本当にいいことだ。
一方、将棋の藤井聡太竜王。
王位、叡王、棋聖を獲得して、
現在、四冠。
三冠でも四冠でも、
竜王と名人だけは、
呼称する際にそれを冠する。
だから呼び方は、
「藤井三冠」から「藤井竜王」となった。
その藤井聡太が王将戦で、
挑戦者となった。
来年1月からの現渡辺明王将と、
七番勝負を闘う。
先に4勝すると、
3月までの今年度中に、
五冠となる。
プロ将棋界には現在、
八つのタイトルがある。
そのうちの五つを獲ることになる。
その勢いと実力はもう、
対局相手の渡辺明名人が認める。
王将挑戦者となるために、
挑戦者決定リーグは7人で闘われている。
2位の近藤誠也七段はこれまで3勝1敗。
その近藤(25歳)に直接対決で91手の勝利。
今期の成績を5勝0敗として、
最終戦を待たずに挑戦権を獲得。
ちなみに藤井は、
昨年度から都合6回、
タイトル戦に出場して、
すべて勝っている。
渡辺名人とのタイトル戦も、
これまで負けたことがない。
多分、互いに僅差の、
感動的な将棋を指してくれるに違いない。
これも楽しみなことだ。
月食の天体ショーと、
翔平のMVPと、
聡太のタイトル戦。
勝負に関しては、
勝つ者がいて、負ける者がいる。
商売はどちらも負けない状況が生まれる。
それを「ポジショニングの闘い」という。
さて昨日の京都。
ロピア京都ヨドバシ店がオープン。
私は一昨日から京都に入って、
朝の開店準備を視察した。
昼すぎに車で市内の近場を巡った。
残念だが観光はなし。
まず、ライフコーポレーションの店。
ライフは京都府に16店を展開するが、
そのなかで唯一の強力なフォーマット。
セントラルスクエア西大路花屋町店。
2015年4月1日のオープン。
立地は西大路通と花屋町通との交差点。
地下1階地上2階建て、
売場面積は2680㎡。
初年度の年商目標は25億円だった。
1階が食品スーパーマーケット。
2階にリカーとグロサリー、
そしてドラッグストアとアパレル。
ライフ独特の中型総合スーパー。
この業態自体が絶滅状態だが、
ライフは立地と物件、商圏を選んで、
マルチ・フォーマット戦略を展開している。
ロピア進出に対して、
ライフの商圏はほとんど影響を受けない。
だから音なしの構えで、
ライフらしいそつのない店づくりだった。
次に2013年 4月20日オープンの、
「京都八百一本館」
京都八百一MI㈱の経営。
都心の小洒落たスーパーマーケット。
1階が生鮮と惣菜。
2階がグロサリーとノンフード。
その2階から1階を見下ろすことができる。
生鮮は意外に安い。
おもしろい。
そして3階になんと畑がある。
畑の前右側と左側はレストラン。
都心部の斬新な店だ。
最後にマツモト五条店。
エレベーターの壁は、
五重の塔と大文字焼き。
マツモトは店ごとに、
地域の特徴をイラストで見せる。
米国トレーダー・ジョーと同じだ。
そしてマツモトは、
ロピア対策を展開して、
顧客がごった返していた。
見事。
ロピアやライフに勝つというのではなく、
ロピア進出を機会に、
社内を引き締め、顧客にアピールする。
これはチャンスを逃さない経営のコツだ。
店を回っていたら、
池田雅則店長が声をかけてくれた。
事前のお断りもせずに勝手に訪れて、
恐縮したが、
快く見せてくれた。
松本隆文会長ともメールで連絡を取って、
ちょっと交流した。
「京都のマツモトを追求する」
これこそポジショニング戦略だ。
会社も店も、
野球選手も棋士も、
模倣困難なポジショニングを獲得する。
それが現代の生き方である。
〈結城義晴〉