結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2021年11月23日(火曜日)

勤労感謝の日の「新嘗祭」と「働くこと」

勤労感謝の日。

祝日法の趣旨は、
「勤労をたつとび、生産を祝い、
国民がたがいに感謝しあう」

古くは「新嘗祭」(にいなめさい)。

なにしろ「日本書紀」に、
この「にいなめ」という言葉が出てくる。

Wikipediaの「新嘗祭」の項に出ている。
よく調べている。

神武天皇即位前期だから、
神話の時代の話だ。

「冬十月の癸巳の朔、天皇、
其の厳瓮の粮を嘗したまひて、
兵を勒へて出でたまふ。
先づ八十梟帥を国見丘に撃ちて、
破り斬りつ」

これは冬の十月、
食を摂って、
兵を整えて出兵し、
敵を国見丘で撃ち破ったという話。

その食は収穫されたばかりの穀類で、
これが感謝祭となった。
神武天皇

仁徳天皇時代には、
「新嘗」という単語が初めて使われ、
こう表現されている。
「是歳(ことし)、
新嘗の月に當りて、
宴会の日を以て、
酒を內外命婦等に賜ふ」

今年の新しい収穫の月に、
宴会を開いて、
宮中の女官に酒を与えた。

神武天皇の神話では、
戦(いくさ)の前の食事、
仁徳天皇のころには、
宮中の女官に酒を振る舞う」
仁徳天皇

時代は変わっていった。

その後、律令政治となって、
「新嘗祭」は国家祭祀(さいし)となっていく。

国の行事としてのお祭り。

明治以降もそれが「新嘗祭」として続いて、
太平洋戦争の敗戦で、
新たに日本国憲法が制定され、
祝祭日が新たに制定された。

新嘗祭は、
国家神道の色彩を払拭する方針で、
「勤労感謝の日」と変わった。

新しい収穫に感謝する。
それが勤労に感謝するに変化した。
図1

いま、欧米は、
サンクスギビング週間だ。

そして木曜日が、
Thanksgiving Day。

収穫感謝祭。

アメリカでは七面鳥を食べる。
[ジョン・F・ケネディ大統領の七面鳥の儀式]
ケネディのサンクスギビングデー

どちらも同じ趣旨であることは、
誰でもわかるだろう。

日本の新嘗祭が、
勤労感謝と変わった背景には、
戦後のマルクス主義流行の臭いがする。

「聞け 万国の労働者♬」
この歌のタイトルは「メーデー歌」。
大場勇作詞の古い労働歌だ。
旋律は「アムール川の流血や」の替え歌。
「アムール川の流血や」は、
旧制第一高等学校の寮歌だった。

戦後のメーデー歌にあるように、
労働者中心の国を目指す人たちは、
収穫感謝祭を労働感謝祭と捉えた。

それを当時の日本社会の空気が認めた。

そこで「勤労感謝の日」が生まれた。
欧米のThanksgiving Dayとは、
ここでニュアンスが変わった。

それでも、いい。

勤労に、労働に、
そしてその生産物に、
感謝する日だ。

そこで結城義晴「Message」から。
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「働くこと」 

「働くこと」への、
深い理解が求められている。

働くことの中身。
働くことの実態。
働くことの動機。
働くことの目的。

そして働くことの喜び。
どんな環境の中で働くか。
どんな時間帯に働くか。
どんな制度の中で働くか。

どんな会社で働くか。
そこからどんな働き甲斐が
生まれてくるのか。

私たちは誰もが、
このことに対して、
自分なりの回答を
用意しておかねばならない。

それなくしては、
企業活動も、
組織運営も、
日常生活もまっとうできない。

経営者は従業員に、
上司は部下に、
会社はパートタイマーに、
明快な「働くこと」の意味を
示さねばならない。

そして従業員は経営者に、
部下は上司に、
パートタイマーは会社に、
同じように、
明快な「働くこと」の意思を
伝えねばならない。

「働くこと」を通じた意思疎通は、
「労働」への、
深く、謙虚な理解からしか、
生み出されないのである。
〈『食品商業』1990年8月号巻頭言より〉

働くことに対して、
深く、謙虚に向き合う。
それが勤労感謝の日の、
心の在り方だ。

朝に希望、
昼に努力、
夕に感謝。

合掌。

〈結城義晴〉


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