島田陽介対談の「速射砲島田節」と「人事部教育・教育部教育」
冬至の翌朝の柚子湯。
実にいい。
柚子の香りが強くなって、
ある種の恍惚感が湯船に漂う。
横浜の朝の最低気温は6℃。
体も芯から温まる。
ありがたい。
今日はお昼頃、
商人舎オフィスに出社。
午後2時から、
ZOOM対談。
お相手は、
島田陽介先生。
1936年生まれの85歳。
こんなご時世でもあるので、
ZOOMミーティングにした。
私が㈱商業界に入ったころ、
倉本長治商業界主幹を筆頭に、
成長する産業に綺羅星のごとく、
偉大な指導者の先生方がおられた。
川崎進一先生、
渥美俊一先生、
奥住正道先生、
城功先生、
藪下雅治先生。
皆さん、故人となられた。
一方で商人道や商業界精神が啓蒙され、
他方でチェーンストア理論が構築された。
この一廻り下の世代が、
故高山邦輔先生、
島田陽介先生、
石原靖曠先生、
山本浩史先生。
私にとって恩人ばかりだ。
これらの先生方を、
販売革新の緒方知行編集長が、
仕切る形で座談会を開催し、
執筆原稿を満載して、
流通革命を推進する雑誌をつくった。
そしてセミナーでは、
パネルディスカッションを展開した。
私は駆け出しの編集記者だった。
その島田先生に、
10数年ぶりにお会いした。
商業界の社長時代以来のことだ。
そして2時間以上も語り合った。
現在も現役コンサルタントとして、
執筆やオンラインセミナー出講、
そして経営指導に活躍中だ。
速射砲のような島田節は、
85歳になった今も、
まったく変わらなかった。
「緒方さんが亡くなって、
誰も話す人がいない。
わかる人がいない」
私も商業界を離れて、疎遠だった。
島田先生も実に楽しそうだった。
1時間半を過ぎ、2時間を過ぎても、
それは止まらなかった。
私もうれしかったし、楽しかった。
この長編対談は、
月刊商人舎新年1月号に、
たっぷりと誌面を取って掲載する。
対談というよりも、
今回は島田陽介の激白か。
そこに結城義晴の述懐を書こうか。
オフレコのコメントも、
次々に出てきて、
ハラハラさせられる内容もあったが、
実に刺激的で面白かった。
ありがとうございました。
2016年と2019年には二度、
石原靖曠先生と対談した。
リアルミーティングだった。
石原先生は1935年生まれで、
現在は86歳。
このときも、
私は楽しかったし、
うれしかった。
私もお二人を見習って、
生涯現役で行きたい。
さて日経新聞電子版「経営者ブログ」
㈱IIJ会長の鈴木幸一さん。
日本のインターネットの草分け。
毎週火曜日に欠かさず執筆する。
「最近はAIという言葉を使えば、
利用されたAI がどのようなものなのかは
一切説明されず、その信ぴょう性を疑わず
報道されてしまうこともあるようだ」
そうだ、そうだ。
「どんなパラメーターを設定し、
推測統計の手法を使おうと、
AIという言葉をかぶせることで、
一も二もなく信用されてしまう」
「DX」もまったく同じだ。
それ以外にもこういったことは、
たくさんある。
「出雲大社の
縁結びのお札の効能とは違うのだから、
どのようなAIを利用した結果、
このような推測値が出た
という説明を付与すべきだと思う」
同感だ。
「ところが、
AIという言葉をつけるだけで
信用され、説得されてしまうとすれば、
それはそれで危険である」
「クラウドに始まって、
あらゆるモノがネットにつながる
“IoT”に至るまで、
IT(情報技術)の利用について、
あらゆる可能性が報じられている」
何でもできるという錯覚すらある。
「ITの将来に関して
これらのキーワードが示す内容が、
いまだ未成熟な過程にあるにもかかわらず、
政府から民間に至るまで、
あたかも明確で共通な概念であり、
同じ認識をしているものとして
捉えられているとしたら、
ある意味で将来に禍根を残しかねない」
国や産業や企業が、
“クラウド化を徹底する”という方針を出す。
異を唱える者はいない。
しかし肝心のクラウドに対する認識が、
それぞれのレベルで異なっている。
「現にクラウドについて、
単なるサーバーのこととしか
認識できない要人がいることを見るにつけ、
私の心配は大きくなるばかりである」
だからITリテラシーが必須になる。
しかしITやAIやIoTにかぎらない。
「マネジメント」も「組織」も、
「教育」や「人材」の概念ですら、
その中身は千差万別、
天と地ほども異なる。
同じマネジメントでも、
アンリ・ファヨールと、
ピーター・ドラッカーでは、
正反対と言えるほど違う。
古典的チェーンストア理論では、
その「管理」や「マネジメント」は、
ファヨールの考え方をもとにしている。
しかしドラッカーは、
それを激しく批判した。
ヘンリー・ミンツバーグも、
ハーバート・サイモンも、
ファヨールを否定している。
それでも「マネジメント教育」は、
ファヨール理論を基本にして、
今でも平気で行われている。
たとえば「教育」や「研修」に関しても、
人事部や教育部は、
新入社員教育や店長研修を考える。
しかし、
その人事部教育や教育部教育こそが、
その前に必要である。
最も必要なのは、
トップマネジメントの教育や研修だ。
そしてなにを、どう教育するかが、
一番大事だ。
もちろん、
「チェーンストア」に対する考え方も、
渥美俊一と島田陽介とでは、
まったく異なる。
いったいどんな会社にしたいのか。
どんな使命をもつのか。
すべてはそこから始まる。
島田陽介先生との対談。
楽しかったなぁ。
〈結城義晴〉