結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2021年12月30日(木曜日)

小晦日の「史上二番目の株価」と「物価上昇の足音」

2021年12月30日。
小晦日(こつごもり)。

明日の31日が大晦日。
こちらは「おおみそか」が一般的だが、
「おおつごもり」とも読む。

その小晦日。

私は横浜商人舎オフィスに出て、
今年最後の原稿執筆と雑誌の責了。

27日に終わらなかった。

「特集のあとがき」など2本書き切って、
それを丁寧に校正。
責了した。

デザインの七海真理さん、
校正の磯村ゆきさん、
そして実質編集長の亀谷しづえさん、
ありがとうございました。

島田陽介先生、片山隆さん、常盤勝美さん、
感謝いたします。

2022年新春1月号。
実に良い雑誌になりました。IMG_E98751

巻頭の[Message of January]をもって、
来年もよろしくお願いします。IMG_E98791

そのあと横浜駅西口。
IMG_98811

クリスマスは終わっても、
ニューイヤーに向けて、
ライトアップは終わらない。
IMG_98821

今年最後の株式取引「大納会」は、
東京株式市場の日経平均株価終値は、
2万8791円71銭。

前日比115円17銭安にもかかわらず、
大納会の株価としては、
32年ぶりの高値だった。

史上最高値だったのは1989年。
令和元年のバブルの最後の年で、
終値は3万8915円87銭。

今年はこのバブル景気の年に次いで、
史上二番目だった。

しかし1年間、
新型コロナウイルス感染拡大は続いた。
変異種のデルタ株から、
オミクロン株へ。

それにもかかわらず、
株価は9月中旬には、
2021年最高値の3万0670円まで急伸。
1年を通してみると不安定な相場だった。

それでも大納会には、
史上二番目の高値で、
コロナバブルとでもいう状況。

私は株の専門家ではないが、
異常な株価の推移だったのだろう。

実体経済と金融経済は、
連動すると考えないほうがいい。

日経新聞「大機小機」
昨日の記事は、
「物価上昇の足音が聞こえる」

コラムニストは墨田川さん。

インフレターゲット論によって、
消費者物価上昇率2%の目標が掲げられている。
コロナショックで、
その目標実現は遠のいたかと見られた。

しかしこのところ、
物価上昇要因が目白押しの状況だ。
コラムはその理由を5つ挙げる。

第1に、世界の物価上昇。
11月の消費者物価上昇率(前年比)は、
米国6.8%、ユーロ圏4.9%、英国5.1%。

第2に日本でも既に、
物価上昇が始まっている。
企業物価指数は11月に9.0%の上昇。

段階別に見ると、
素原材料74.6%、中間財15.7%、
最終財4.6%。

川上の輸入物価から、
物価上昇が波及してきている。

販売価格よりも仕入れ価格の上昇の方が、
相当大きい。

企業が仕入れ段階のコスト上昇を
販売価格に転嫁できていない。
しかしだからこそ今、
食品など値上げが相次いでいる。

第3に携帯電話料金引き下げの影響。
今春の引き下げが消費者物価を、
1.5%程度引き下げた。
だから来春からは、何もしなくても、
前年比上昇率が1.5%上昇する。

第4に金融の異次元緩和の継続。
日本銀行は相変わらず公言している。
「消費者物価の上昇率が
安定的に2%を超えるまで、
マネタリーベースの拡大方針を継続する」

第5に賃上げ圧力。
政府をはじめとして各方面から、
企業はもっと賃上げすべきだという
圧力が強まっている。

賃金の引き上げは、
サービス価格を引き上げる。

これらの要因によって、
物価上昇が見込まれる。

だたし物価上昇の実現を阻む要因もある。
それは唯一、物価上昇期待が弱いこと。

しかし人々が物価上昇を予想するようになると、
この唯一の物価抑制要因は消える。

コラムニストの耳には、
「物価上昇の足音が聞こえ始めている」

株価に関しては、
商売とはあまり関係がないと、
割り切ることができる。

しかし物価の上下は悩ましい。

もちろん物価が上がり、
景気がよくなれば、
賃金も上がって、
顧客の財布のひもは緩くなる。
全体に売上げも上げやすくなる。

ただし物価が上がると、
個別の購買局面では、
顧客の財布のひもが固くなる。
売価が高いからだ。
賃金が上がらなければ、
さらに消費は減退する。

だから売上げは上げにくくなる。
ディスカウント合戦も激しくなる。

その結果、勝者と敗者の格差が出る。
勝者はいいだろうが、敗者には辛い。

逆に物価が下がると、
数量は売れても売上げは上がらない。
必需品しか売れなくなる。

これも商売全体にとってはよろしくない。

結局、緩やかな物価上昇が続くのがいい。

スーパーマーケットも、
ドラッグストアも、
コンビニエンスストアも、
物価の上昇と下降に強い業態である。

百貨店やその双子の総合スーパー、
専門店などは物価が下がると弱含みになる。

イオンの前身・岡田屋の家訓。
「下げに儲けよ、上げに儲けるな」
岡田屋ヒストリー

1920年の戦後恐慌の時の話。
岡田屋は在庫の価格を、
大幅に下げて売出し、
さらに売上げと利益から、
値下がりした品を仕入れて、
破格値で販売した。

称して「暴落大売出し」。

これが大成功を生み、
ここから家訓が生まれた。

イオンの価格政策の基本は、
この家訓に基づいている。

ときにそれがデフレ要因になるなどと、
批判されたりする。

しかしデフレが続いたこの間、
緩やかな物価上昇を国と日銀が求めて、
インフレターゲットを2%に定めた。

それは商売にとって、
悪くはなかったと考えていいだろう。
その物価上昇は思惑通りにはいかなかった。

それが今、物価上昇の足音が聞こえる。

来年は少しだけ、期待が持てる。

王道の商売は、
物価が上がる時も下がる時も、
顧客から変わらない支持を受けることだ。

変わり目にはいつも、
そのことを強く意識しなければならない。

「売れないことを
不況のせいにするのは、
よく売れる時代を
自分の成果にする権利を
放棄したことになる」

倉本長治の言葉だ。
倉本長治モノクロ2
「不況期にこそ、
消費者に得をさせ、
この店こそ自分たちの店と
信じられるようにする
いちばんの好機なのである」

物価上昇の足音が聞こえ始めた時も、
この店こそ自分たちの店と
信じられるようにする好機である。

〈結城義晴〉


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