「キャンドゥ×イオン」のスピード感と優先順位
新型コロナウイルス感染第六波。
過剰に騒ぎたくはないが、
それでも感染は急激に増えている。
全国に新規陽性判明者は、
2万2045人。
東京都が4051人、大阪府が2826人。
沖縄県が1596人、愛知県が1317人、
神奈川県が1155人。
4ケタの増加は5都府県となった。
900人台は広島県997、埼玉県955人、
兵庫県929人、916人。
東京周辺、大阪周辺の件に広がっている。
「冷静に恐れよ」
個人的性向を自己判断すると、
私は怖いもの知らずで、
無鉄砲な一面がある。
その半面、ひどく臆病でもある。
人間は複雑だ。
しかし年を経るにしたがって、
臆病な側面が強くなった気がする。
だから「冷静に恐れよ」は、
納得がいくのだろう。
「オクシモロン」と言う。
冷静は静かなこと。
恐れるは動揺して動くこと。
それを同時に行う。
たとえば仏教は「慈悲」の宗教である。
「慈」はヒンズー語で「マイトリー」、
「励まし」を意味する。
「悲」は同じく「カルナ」と言い、
「慰め」を表わす。
「慈&悲」は中国人の造語だが、
反対の意味を重ねた言葉である。
この反対の意味を並べる語法が、
ギリシャ語の造語「オクシモロン」だ。
oxys(鋭い)とmōros(愚かな)を組み合わせた言葉。
そしてオクシモロンに、
問題を解くカギがあることが多い。
仏教の慈悲もそうだし、
シュンペーターの創造的破壊も、
江崎玲於奈博士の「組織化された混沌」も、
オクシモロンだ。
だから今、「冷静に恐れる」。
今日は東京・日本橋で記者会見。
東京日本橋タワー。
会社が何かを決定して、
それを社会に公にする。
その際に使われるのが記者会見。
商人舎流通スーパーニュース。
イオンnews|
キャンドウ子会社化/5年間で820店増の2000店舗体制へ
㈱キャンドゥ社長の城戸一哉さんと、
イオン㈱社長の吉田昭夫さん。
イオンがキャンドゥを、
株式公開買い付けで子会社化した。
キャンドゥは100円ショップ業態で、
ダイソー、セリアに続いて第3位に入る。
2011年2月20日に、
創業者の城戸博司社長が61歳で急逝。
城戸一弥さんが25歳で代表取締役に就任。
現在、代表取締役社長。
吉田イオン社長は、
今回のM&Aの目的と革新を、
丁寧に語った。
それから城戸社長は、
イオンの子会社になることによって、
キャンドゥをさらに成長させるビジョンを、
これも誠実に語った。
私はこの案件が発表された時から、
両者にとって「いい判断」だと指摘した。
キャンドゥ×イオン。
この「×」はシナジー効果を意味する。
そしてその相乗効果は、
間違いなく出るだろう。
あとはそのスピード感と、
その迅速性を出すための優先順位だ。
それぞれの表明が終わると、
質疑応答。
悪いけれど、
たいした質問は出なかった。
記者会見での一問にかぎられた質疑では、
深い内容、本質的な問題解決には至らない。
ある証券アナリストが質問した。
「イオンがキャンドゥを相手に選んだ理由は?」
そんなことは明確だ。
ダイソーやセリアをM&Aできないからだ。
キャンドゥnews|
年商731億円0.1%増・経常利益37.1%減の増収減益
キャンドゥだから公開買い付けで、
スピーディに子会社化できる。
そしてイオンはそれをした。
だから今、スピードが一番大事だ。
そして優先順位がことさら重要になる。
記者会見が終わると、
写真撮影。
記者が集まって、シャッターを押す。
私はその光景を撮影した。
吉田さんと城戸さんはスマイル。
城戸さんにとっては試練が待っている。
しかし100円ショップ業態は、
世間が考えるほど軽いものではない。
1879年、フランク・ウールワースが、
バラエティストアを創業した。
店名は「The Great Five Cent Store」
100円ショップではない。
ワンコインストア、
またはツーコインストア。
1879年段階、
アメリカでは5セントストアだった。
1945年にサム・ウォルトンが始めた時は、
5セントと10セントの2コインストアだった。
今は、ダラーストア。
それ以上のコインストア。
この業態は、
百貨店、グロサリーストアに次いで、
史上三番目に古いビジネスモデルである。
バラエティストアから、
Kマートが生まれたし、
ウォルマートが登場した。
この業態には潜在的なパワーがある。
そのパワーの源泉はシンプルさにある。
それを吉田さんと城戸さんが背負う。
私はキャンドゥ取締役の新宮孝仁さんと写真。
記者会見が終わって、
エレベーターホールにいたら、
偶然、吉田さんが現れた。
そこでちょっと立ち話した。
吉田さんにはよくわかっている。
「インタビューを申し込みますから」と、
言っておいた。
広報のみなさん、よろしく。
イオンにとってキャンドゥは、
強い武器になるだろう。
目先のメリットだけでなく、
小売業のコングロマーチャントとして、
必須の業態を手中に収めたという、
長期的な視野に立つ必要がある。
しかしそれもスピード感と、
そのスピードを加速させる優先順位だ。
イオンにかぎらない。
あらゆる企業がいま、
スピードを求められている。
〈結城義晴〉