トランプの「彼は天才だ」発言と「命を大事にする商売」
2月最後の日曜日。
ウクライナはまだ土曜日。
春は遠い。
世界中がウクライナを支援している。
米国前大統領のドナルド・トランプ。
2月22日にラジオ番組に出演して発言した。
「私はテレビで見て、
“天才だ”と言ったんだ」
「なんて賢いんだ」
ロシア大統領ウラジーミル・プーチンのこと。
ホワイトハウスのジェン・サキ報道官。
「プーチン大統領と彼の軍事戦略を
たたえるような人物からの助言は
受けないようにしている」
その後、26日には、
「保守政治活動会議」の演説で、
「問題はロシアのプーチン大統領が
賢いことではなく、
我々の指導者が間抜けなことだ」
ジョー・バイデン大統領を貶めるために、
プーチンを持ち出した。
アメリカ自身の分断が、
同国の国際的リーダーシップを失墜させ、
プーチンの暴挙を呼んだ側面は否めない。
分断を広め、深めたトランプの責任が、
消えることはない。
何を言おうが個人の勝手だが、
ウクライナでは戦火の中、
民間人も武器を手にしている。
そして多くの何の罪もない人たちが、
傷つけられ、殺戮されている。
ロシア軍の兵士たちも死んでいる。
ドイツのオーラフ・ショルツ首相は、
国民に向けたテレビで演説した。
「彼ひとりがこの戦争を決断し、
全面的に責任を負う。
これはプーチンの戦争だ」
さらに議会で演説した。
「この戦争は、
ウクライナにとっての惨劇であるが、
それはロシアにとっても惨劇となる」
ドイツ議会の全ての会派の代表者が、
プーチンを「侵略者だ」と一致した。
ほぼ日刊イトイ新聞の巻頭エッセイ。
糸井重里執筆の、
「今日のダーリン」
「戦争関連のニュース、
じぶんだけが知ってる情報はない。
いや、海の外の戦争ばかりでなく
“みんなの知らない、
おれたちだけが知ってる真実”
なんてものは、
なかなかあるものじゃない」
その通りだ。
そこで糸井は思い出す。
「吉本隆明さんが言ってたこと」
糸井が吉本さんに質問した。
「どこから情報を仕入れているんですか」
答えは、
「ふつうの新聞に書いてあることばかりです。
だれでもが手に入れられる情報だけです」
「分析したい問題を”水”だとして、
“酸素と水素”にあたる情報が何なのかを
うまく見つけることができるかどうかだけです」
そこで糸井さん。
「コロナも、ウクライナも、
そういえばなのだが、
“おれたちだけが知っている真実”は、
危うい」
同感だ。
「”反対する”にも、
“何に対して反対するのか”がある。
“戦争”なのか”敵”なのか、
“あの個人”なのか?」
「”応援する”にもいろいろあって
“難民に手を貸す”も、
“資金や物資を提供する”も
“共に銃を持つ”もある」
「ぼくらがいまいる場所で
何かをすることと、
敵軍兵士の銃の前ですることとは、
まったくちがうことだとさえ言えるだろう」
「いまじぶんのいる場所で、
いまの、このじぶんは、
なにができるのか考えると、
できることは多くはない」
同感だ。
「あのときと同じだ、
まず、できることをしよう」
そう、自分でできることから始めよう。
「個性的な”すっごくいい考え”なんかもない」
それを売り物にする者がいたとしたら、
詐欺師か、限りなくそれに近い者だろう。
糸井重里の最後の言葉。
「生きる方向へ!」
すべては「命」から発しなければならない。
商売も仕事も、
自ら命を燃やし、
人々の命を
輝かせるためにある。
だから命を大事にしない者を、
天才だとか、賢いだとか、
絶対に言ってはならない。
〈結城義晴〉