ウクライナの「人道回廊」と国連の「天国と地獄」
今日は二十四節気の「啓蟄」
「けいちつ」と読む。
啓は開くこと。
蟄は虫などが冬ごもりすること。
だから啓蟄は、
冬ごもりの虫が這い出るころ。
いよいよ春です。
関東地方では春一番が吹いた。
昨年よりも29日遅かった。
私は商人舎オフィスに出て、
最後の原稿書きと入稿。
Messageには、
ウクライナのイラストを使った。
東横線横浜駅の壁画。
日本はいまのところ、
アンバランスなくらい平和です。
日経新聞の巻頭コラム「春秋」
俳人・渡辺白泉の句を紹介。
昭和初期の新興俳句運動の無季派。
つまり季語のない俳句をつくった。
戦争が廊下の奥に立つてゐた
ウクライナにも俳句を詠む人がいるかもしれない。
「重苦しい影が、知らぬ間に
日常へ忍び込むさまを詠んだ」
「ロシアのウクライナへの侵攻は、
原発が攻撃される事態となり、
世界が震えた」
それでもウクライナの2都市で、
一時停戦が合意された。
南東部の港湾都市マリウポリと、
その近郊のボルノバハ。
民間人を退避させるために、
一時的に交戦を停止する、
「人道回廊」が設けられる。
英語でHumanitarian Corridor」
ヒューマニタリアン・コリダー。
白泉の句は戦争と廊下だが、
こちらは戦争と回廊だ。
それも人道の回廊。
ヒューマニティのコリダー。
ロシアとウクライナは、
3回目の停戦対話をするらしい。
しかし両者の主張の隔たりは大きい。
停戦実現への道筋は見えていない。
市民退避の人道回廊も、
現地時間5日午前11時に始めることで、
合意していたものの、
ロシア軍の激しい砲撃は止まなかった。
どうなるかはわからない。
それに人道回廊で、
一般市民を退避させた後で、
一層激しい砲撃や空爆をするらしい。
ロシア国内での言論統制もひどくなった。
イギリスのBBCやアメリカのCNNも、
現地の取材陣を引き上げる。
NHKや朝日新聞も、
同じようにするだろう。
こうしてロシアは、
非人道国家の道を歩み続ける。
世界の国々が、
「民主国家」と「専制国家」に、
色分けされて、
こうした非人道的な行為がまかり通る。
第一次世界大戦後の国際連盟は、
酷く無力だった。
第二次世界大戦後の国際連合も、
こうなっては無力だ。
初代国連事務総長は、
ダグ・ハマーショールド氏であった。
スウェーデンの人。
1953年4月7日開催の国連総会において、
全会一致で国連事務総長に任命された。
1957年9月にはさらに、
2期目の任期が全会一致で再任された。
しかし1953年4月から1961年9月まで、
コンゴでの和平ミッション遂行中、
搭乗機が墜落して事故死してしまった。
国連事務総長任期中のことだった。
本当に惜しい事故だった。
ハマーショルド氏が死ななければ、
国連はもっと機能を果たしたかもしれない。
事務総長在任中、
ハマーショルド氏は戦争回避に尽力し、
国連憲章に定める目的を遂行する中で、
国連に与えられた様々な責務を遂行した。
そのハマーショルド事務総長の言葉。
「国際連合の役割とは、
国際社会を天国にすることではなく、
地獄に陥れないようにすることだ」
人道回廊も、
天国に導く道ではない。
地獄に陥れない回廊である。
言葉がない。
銃後といふ不思議な町を丘で見た
〈渡辺白泉〉
それでもウクライナの避難民を迎える、
ポーランドの人々などを見ていると、
心が温まる。
私も私のできる仕事をするだけである。
それに打ち込むだけである。
私たちの平和産業の健全な存続を祈りつつ。
〈結城義晴〉