結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2022年03月12日(土曜日)

戦争に関する「マクドナルド理論」とイセ食品経営破綻

「マクドナルド理論」
あちこちで取り上げられている。
「黄金のM型アーチ理論」ともいう。
『レクサスとオリーブの木』で論じられた。
トーマス・フリードマンの2000年の著書。
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「マクドナルドのある国同士は
戦争を行わない」

ある国の経済が発展していって、
マクドナルドが出店し、
チェーン展開を始める。

すると大抵、大人気を博する。

これはその国に中流階級が形成されて、
そこまで発展すると、
その国の国民は戦争を望まなくなる。
「むしろ、ハンバーガーを求めて
列に並ぶ方を選ぶ」

おもしろい観察だったが、
マクドナルドのほうが巧みだったのか、
この理論そのものが、
一時の現象をとらえただけのものだったのか。

1998年のコソボ紛争や、
2008年の南オセチア紛争によって、
マクドナルドの店があっても、
戦争が起こった。

そしてこの理論は批判を浴びた。

ロシアには850店を展開しているが、
すでに営業を中止している。

ウクライナにも20都市以上に、
100店くらいは出店しているが、
こちらも営業どころではないだろう。
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いずれにしても、
「マクドナルド理論」は破綻した。

トーマス・フリードマンの評価は別にして、
この理論は破綻してほしくはなかった。
マクドナルドには世界中に出店して、
戦争が起こらないことを実証してほしかった。

フリードマンは、
グローバリゼーションを語った。
それはアメリカ中心の理屈だった。

アメリカの理屈と、
マクドナルドを好む人間の特性は、
一致はしなかった。

つまり「専制主義」と言われる国でも、
変貌した「共産主義」の国でも、
健全な中産階級が形成されていなくとも、
マクドナルドは人気を博する。

ではセブン-イレブンは?
イオンは?
ユニクロは?

戦争との関係で、
セブン-イレブン理論や、
イオン理論、ユニクロ理論が成り立つとしたら、
商業の発展と平和理論がリンクすることになる。

それはそれで、
私としてはうれしいことだ。

ただし「マクドナルド理論」は、
ウクライナ危機で反証されてしまった。

キエフ総攻撃を、
世界中が固唾を飲んで見守っている。

土曜日にもかかわらず、
商人舎オフィスに出て、
いろいろな打ち合わせ。

コロナ禍によって、
商人舎の事業も停滞した。

その間に単行本は書けたけれど。

この春から夏にかけて、
事業の再構築をし、再浮上を期す。

みなさん、よろしくお願いします。

さて商人舎流通スーパーニュース。
イセ食品news|
「森の卵」の鶏卵トップ企業会社更生手続き

鶏卵のイセ食品㈱が、
会社更生法手続きに入った。
負債は453億円だという。

一般新聞が次々に報じた。

イセ食品のホームページでは、
保全管理人となった髙井章光弁護士が、
コメントを発表して、
会社再建を目指すとしている。

イセ食品は鶏卵のトップ企業の一つだ。
全国に14の生産拠点をもち、
アメリカ、中国、インド、アセアンに進出している。
イセ食品

「森のたまご」などのブランド名で、
全国の食品小売業に卸していた。

鶏卵業界の企業としては、
日本農産工業㈱がトップだが、
同社は畜産飼料や肉なども販売するため、
鶏卵に関しては、
イセ食品が一番手だ。

ヨード卵光の日本農産は、
三菱商事の傘下にある。

一方のイセ食品は独自路線を歩んで、
伊勢彦信前会長の強気の経営で、
年商500億円程度に成長していた。

卵は「物価の優等生」などと言われて、
価格が安定している商品の代表だ。
96%が国産である。
特売頻度も高い。

その卵の価格は、
「エッグサイクル」と呼ばれた。
2、3年、あるいは5、6年の周期で、
価格の変動が訪れた。

しかし年次変動の幅が狭くなり、
最近は低価格水準で推移している。

生産は安定し、供給過剰。
しかし飼料や燃料など生産コストは上昇した。
シェアが高止まりすれば、
売上げは伸びず、経費だけ高騰する。
それがイセ食品倒産の根本的な理由だ。

私も40年くらい前に、
鶏卵のGPセンターを取材したことがある。
GPは「グレーディング・アンド・パッキング」。
GPセンターは格付・選別・包装施設のことだ。

当時は全農が支配する世界だった。
そこにイセ食品などが台頭して、
やや強引な拡大政策をとって成長した。

その挙句の倒産である。

2018年、イセ食品は、
関西圏の「スーパー玉出」を、
約50億円で買収した。
売上高約450億円で45店舗。

玉出の現在の経営は、
㈱フライフィッシュ。

伊勢彦信前会長の個人出資会社が、
フライフィッシュの親会社だ。

イセ食品の会社更生法とは、
資本関係はないはずで、
だから玉出はこれまで通り経営される。

伊勢彦信氏には会ったことがないが、
日本を代表するアートコレクターだという。
日本画、洋画、陶磁器などを幅広く所有し、
とくに中国陶磁のコレクションは、
2017年にパリの国立ギメ東洋美術館で、
企画展が開催された。

2007年にはフランス政府から、
シュバリエ勲章を受章している。

『卵でピカソを買った男』
978-4-408-10630-4
生産過剰で価格安定。
そんなマーケットで成長を続けた。
しかし根本的な経営経費構造によって、
大きな破綻を招いた。

私には鶏卵業界のほうが心配だ。

〈結城義晴〉


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