クリミア戦争のトルストイとナイチンゲール
みどりの日の祝日。
「自然にしたしむとともにその恩恵に感謝し、
豊かな心をはぐくむ」
ゴールデンウィークも終盤。
ウクライナ戦線に異常あり。
ウォロディミル・ゼレンスキー大統領。
ウォールストリートジャーナル開催の、
イベントにオンラインで登壇。
「領土保全が我々の第一の任務だ。
クリミアを取り戻したいと考えているし、
それは可能だ」
クリミヤ半島は黒海の北岸にある。
1853年から56年まで、
ロシア帝国が、
トルコ・イギリス・フランスなどの連合軍と闘った。
「クリミヤ戦争」と呼ばれる。
レフ・トルストイはこの戦争に従軍した。
26歳の士官候補生だった。
驚くことに陣中で『セヴァストポリ物語』を書いた。
トルストイはその10年後、
36歳のときに『戦争と平和』を書き始めた。
フローレンス・ナイチンゲールは、
このクリミア戦争で、
敵味方の別なく傷病兵の看護に尽くした。
イギリスの看護婦で社会起業家。
「クリミアの天使」と称された。
それが後年、赤十字運動につながった。
連合軍の戦死者は7万人、
ロシア側は13万人にもおよんだ。
国際連盟も国際連合もなかったが、
文豪は小説を公開し、
赤十字の精神が生まれた。
プーチン戦争にそれはない。
事実を隠蔽し、
無差別の殺戮を繰り返す。
人間の歴史は、
果たして進歩しているのだろうか。
クリミヤ戦争から160年後。
ロシア帝国はソビエト連邦に変わり、
さらにロシア連邦に変わって2014年、
クリミヤはウクライナ領になっていたが、
ウラジーミル・プーチンによって、
一方的に武力併合された。
国際連合にも承認されていない。
ゼレンスキーは、
それを取り戻すと宣言した。
ウクライナは「領土問題では妥協しない」。
喜んでいいのかどうか。
いずれにしろ、戦争は続く。
さて、先のナイチンゲール。
『看護覚え書』を著している。
その「ロンドンの子供たち」より。
「子供たちに、
新鮮な空気が入り、
明るく、陽(ひ)当たりよく、
広々とした教室と、涼しい寝室とを与え、
また戸外でたっぷりと運動をさせよう」
マリウポリの製鉄所から、
女性や子どもたちが避難してきて、
解放された喜びと、
地下生活の辛さを語った。
ナイチンゲール。
「たとえ寒くて風邪の強い日でも、
暖かく着込ませて充分に運動させ、
あくまで自由に、
子供自身の考えに任せて、
指図(さしず)はせずに、
たっぷりと楽しませ遊ばせよう」
「もっと子供に解放と自然を与え、
授業や詰めこみ勉強や、強制や訓練は、
もっと減らそう」
「もっと食べ物に気をつかい、
薬に気をつかうのはほどほどにしよう」
あくまで自由に。
子供自身の考えに任せる。
指図はせず、
詰め込み教育、強制や訓練は、
減らそう。
たっぷりと楽しませよう。
遊ばせよう。
明日はこどもの日だ。
〈結城義晴〉